彼氏の切り株
世の中誰だって得意な事がある。
私は植木屋さんをしていた父の影響で接ぎ木が得意だった。先日戦死した彼が足首だけになって帰って来た時も彼氏の足首に新しい人を接ぎ木して難を逃れた。
新しい彼の上半身にも慣れてきた頃、今度は私がロードローラーに潰されてスルメになってしまった。残ったのは私の足首だけだった。
幸い、側に父が居たので、私の足首には信号待ちしていた大学生が移植され難を逃れた。それ以来大学生の上半身をもって生活している。
これに味をしめた私達は上半身を若い男女に変えながら長い年月を生きた。
しかし、ある時私達は死んでしまったのだ。水虫と言う不治の病によって苦しみ抜いて死んだ。
しかし、私達は接ぎ木が得意であったために難を逃れた。死んだ私達の霊魂に丸のまま人間を移植したのだ。私達はまた永遠とも言える世界を生きる事となった。
しかし、私達は死んでしまったのだ。生きる人間は皆死んでしまって乗り移る事も出来ない。
しかし、私達は接ぎ木が得意であったために難を逃れた。亡びた人類の魂をこの星に植え付けたのだ。私達はまた永遠とも言える世界を生きる事となった。
しかし、何度かの人類隆盛の後、私達の星は死んでしまったのだ。文明のバランスを崩した人類は精神のパラダイムシフトに失敗したのだ。
核がぽン。
しかし、私達は接ぎ木が得意であったために難を逃れた。