最終話 長い悪夢のはじまり
マツリ:生存
タッキー:生存
オカ氏:生存
to-ko:生存
ユッコ:???
「いかがだったでしょうか? 私が脚本、演出、監督を務めた動画作品『ウラギプロジェクト』。楽しんでいただけましたか?
最後の場面は、演者全員にマスクを被ってもらいました。ふふ、驚いた? インパクトのある画が欲しかったのと、最後は全員を画面に収めようという思いつきからだったのですが、お話的には支離滅裂になっちゃいましたね。
んー…、ホラー作品を撮っておいてなんですが、実は私、心霊現象の類は一切信じていないんです。だから、こんな滅茶苦茶な脚本になってしまったのかもしれないです。
撮り終わった後で映像を確認したときに、割れた窓ガラスに幽霊が映り込んでるなんて、みんな騒いでたけど、バッカみたい! あんなの演者の誰かの顔が映ってただけじゃない。薄暗いから誰だか見分けがつかなかっただけよ。
あ、私、どうやらあの現場に忘れ物をしちゃったみたいなので、今から一人で取りに行ってきます。え? 一人で大丈夫かって? へーきへーき、幽霊や悪魔なんて、この世にいるわけないんだから。
じゃ、行ってきまーす!」
■ 0:51
高橋真由子と名乗ったその少女は、話し終わると画面の奥から手前に近づいてきて、恐らくカメラの録画停止スイッチを押したのでしょう。動画はそこまででした。
私はビデオディスクプレーヤーのイジェクトボタンを押し、プレーヤーから排出されたビデオディスクをつまみ上げます。ディスクの表面には『自主制作映画ウラギプロジェクト』とプリントされてありました。
私はそのディスクを裏返し、机に押さえつけると、愛用のナイフでギリギリとその鏡面を切りつけてから、ダストボックスにガコッと叩きつけるように投げ入れました。すると、その音に反応するような気配があったので、私はそちらの方に顔を向けます。
そこには部屋の隅の床に横たわる者がいました。その者は、手足をロープで縛られ、口はガムテープで塞がれています。私はこの者の名を今しがた知ったばかりです。
――高橋真由子。
その少女は私の視線に気が付くと、涙に濡れた瞳により一層の恐怖を浮かべ、すぐに目を逸らし、私から遠ざかろうと身をよじりますが、体がいうことをきかないようです。彼女はずっと体の震えが止まらないらしく、まるで全身が痙攣を起こしているのかと思われるほど、ガクガクと、ただひたすらにガクガクと揺らし続けています。くくく、なんとも可愛らしいではないですか。
「上が騒がしいと思ったので様子を見に行ってみれば、まさか高校生が映画を撮影しているとは思いませんでしたね。ここは私の所有する土地なのです。勝手に入られては困ります。それに、設置してあった消防斧まで持ち出すなんて、不法侵入に窃盗、困った子供たちです」
私はそう少女に語りかけましたが、果たして彼女の頭に私の話す内容が届いているかは疑問です。彼女は相変わらず脅えてガクガクと体を震わすばかりですから。
「そうですね。私も貴女と同じく幽霊の類は信じません。そんなものが存在するならば、ここには無数の浮かばれない少年少女のそれが漂っているはずですが、私は一度も目にしたことはありませんからね。しかし…、悪魔が存在するという事実は、これから貴女が身をもって知ることになるでしょう」
さあ、この少女は私の狂気という名の食欲を何日満たしてくれるでしょうか。今から楽しみです。しかし、あまり時間をかけてもいられませんか、私の顔がカメラに映り込んでいたようですからね。撮影に関わった全員を探し出して始末しなければなりません。
…だが、おかしいですね。この地下室から生きて地上へ出られた者など一人もいないのですが、何故ここに拷問部屋があるなどという噂が広まったのでしょうか。…幽霊の仕業? くくく、まさか。
■ 0:00
「ねえユッコ、キャスト全員がカメラに収まってた時って、誰が撮影してたんだろうね?」
「ふっふっふ、マツリ、投稿する段階になってはじめてその点に気づいた瞬間が、作者にとっての一番のホラーだったそうよ」
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
一応ですが、最後に登場した人物が何者なのかは、目次で各話タイトルを重力に逆らわずに視線を動かし読んでもらえるとわかるかもしれません。