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第四話 はじまったスプラッタイム

ユッコ:生存

マツリ:生存

タッキー:死亡?

オカ氏:生存

to-ko:生存



 私はスカートのポケットの中から、膝の震えの原因を取り出した。


「…あ、タッキーからだわ! 用事ができたから少し遅れるだって…」


 それはスマホへのメール通知の振動だった。受信ボックスを確認し、私はほっと胸をなでおろし、まだ涙に潤んでいた目でマツリを睨みつける。


 マツリは何も言わずに冷たい瞳のまま、私の視線を真っ向から受け止めていたが、しばらくして、ふっと表情が緩んだ。


「ふふ、ユッコがあんまり動揺するもんだから、ちょっと意地悪したくなっちゃったよ」


「まったく…タチが悪いわね。でも、少し詰めが甘いわ。ここでタッキーが『どっきりでした』って書かれた看板を掲げて現れたら、完璧だったわね」


 私が親友の前で涙を見せてしまった恥ずかしさをごまかすように強気で言うと、「さすがはユッコだよ」と、彼女は返した。


「それにしても、どうなってんのコレ? 本物の残虐映像スプラッターに見えるんだけど、どんなトリック使ってるの?」


「オカ氏君が映像クリエイター志望なのはユッコも知ってるよね? 彼の自宅には最新の映像加工技術が使える設備があるって自慢してたから、頼んで加工してもらったんだよ」


「へー、最新技術ってのは凄いんだわ。確かに超古いホラー映画とか観ると、CGとかVFXの技術とかが現代のものに比べると低すぎて、滑稽に見えちゃうことがあるからなあ」


「ね、ユッコ、続きを見ようよ」


「ああ、そうね。ちょっとリアル過ぎて怖いけど、映像加工してるってわかれば平気かも」


 私はビデオカメラの画面を改めて見た。タッキーの受けた惨状にばかり目を奪われてたけど、その奥で壁にもたれかかったオカ氏もいい表情してるわ。迫真の演技って感じね。



> 0:21



オカ氏 「こ、これは…? ひいっ…こ、こっちに来ないでください! うわあああああー!」


カメラマン 「え!? なにこれ!? どういうこと? え? え? どうなってるの!! ちょ、ちょっと! 二人ともこんなとこに私を置いていかないでよ!! 待ってよ!! 待ってー!!」


カメラマン 「…はあ、はあ、二人ともどこまで走ってっちゃったんだよー! もう嫌だよ! こんなとこ! 早く帰りたいよ! …あっ、オカ氏!」


カメラマン 「なによこれ? …なによこれっ!? どうしてこんなことになってるの!? もう意味わかんないよ! …あ! …お前! お前、どういうつもりだよ!! 私たちをこんな目に合わせて! お前、イカレてるよ! なんとか言えよ! マツリ!!」



■ 0:28



 動画はそこで停止した。


 動画の流れはこうだった。タッキーが倒れたのを見て恐れおののいたオカ氏は、転げるように廃屋の奥へと走って逃げだし、姿が見えなくなった。ウラギマスクはオカ氏を追いかけるように走り出し、カメラもそれを追っていく。そして、いくつかの部屋の区画らしき壁を抜けた後にオカ氏の後姿を発見。カメラが回り込んで、オカ氏の顔を映すと、そこにはCG加工されたであろうオカ氏のグロく破壊された顔面があった。それにしてもよくやるわ。自分の顔をあそこまでグロく加工できるとはたいしたもんだ。


「マツリ、アンタの演出、なかなか良かったわ。薄暗くて最初はわからなかったけど、廃屋に入る前にto-koとカメラマンを入れ替わってたってことね」


 私はマツリを振り返らずに賞賛の声をかける。ウラギマスクを被った怪人役はマツリがやっていたのだ。


 動画では、to-koがオカ氏を見つけた直後、ウラギマスクを被ったマツリが現れた。あの手斧には刃から血が滴っているという悪趣味な演出付きで。そして、カメラを撮影し続けたままマツリを罵るto-koに近づくと、手斧を振り上げそれを振り下ろしたところで動画は終了していた。


「いやあ、みんながあんなに演技派だったとはね。びっくりだわ。最後のところのto-koなんて、あんな怖い声で啖呵切れるなんて思わなかったし。…ねえ、マツリ?」


 動画を見終わった後から全く反応のないマツリが気になり、私は後ろを振り返る。


 するとそこには、ウラギマスクを被った怪人が静かに佇んでいた。


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当作品に登場する裏野ドリームランドのマスコットキャラ、『ウラギ君』の名前は、
石衣くもんさんの作品から同じ名前を使わせていただきました。
石衣くもん作 カレイドスコープを覗くのは

石衣くもん作 ナイトパレードに加わる夜


自分のコメディー連載作品も読んでいただけると嬉しいです。
らうんどろびん作 このパーティーの中に魔王がいます

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