第一話 殺人劇場の幕開け
□□ 登場人物紹介 □□
ユッコ:高橋真由子 本作の主人公。やや強気。
マツリ:神代茉莉 ユッコの親友。大人しめ。
タッキー:滝川つばさ ユッコの彼氏。イケメン。
オカ氏:岡田孝志 オカルトマニアな少年。メガネ。
to-ko:東堂塔子 ムードメーカー的存在。
□□ はじめにお読みください □□
本作には特殊な表現が用いられていますので、以下にそれを記します。
記号『 > 』 動画再生の意味。
記号『 II 』 動画一時停止の意味。
記号『 ■ 』 動画停止・終了の意味。
とても小説とはいえない代物ですが、それでも楽しんでいただげれば幸いです。
では、どうぞ。
「げ、本当に行って来たの? あのテーマパークの跡地に?」
私、ユッコこと高橋真由子は、驚いてそう尋ねた。あのテーマパークというのは、その名を裏野ドリームランドという。バブル期には賑やかなテーマパークだったと大人たちが話すのをたまに耳にするけど、私のような現役女子高生にとっては、そんな時代のことなど知るはずもない。
「うん、結構楽しかったよ。撮影もうまくいったし」
そう答えるのは、親友のマツリ。彼女との付き合いは小学生低学年のころからだから、もう10年くらいになるかな。今ここは、夏休み中の学校の教室の中に彼女と二人、他には生徒はいない。
「楽しいってアンタ、あそこって色々奇妙な噂があるじゃない? アンタたちの計画は聞いてたけど、まさかほんとにあそこに撮影に行くとは思わなかったわ」
計画とはこうだ。彼女と私を含む同じ高校の文芸部の仲間たちで、何か面白い動画作品を作ってみようと。それを言い出したのは、この大人しめなマツリだったので、私はそのことにも少し驚いたんだけど、その動画撮影場所があの廃墟に決まったことで更に驚く羽目になった。たぶん、オカルト大好き少年のオカ氏のやつの提案なんではないかと私は睨んでいる。
だが、私は正直、その計画に乗り気ではなかったので、誘いを受けても曖昧な返事で誤魔化していたんだ。だけど、とうとう我慢しきれずに、私を除いたメンバーで行ってきたということか。
「でもユッコ、結構面白い動画取れたんだよ。ユッコに一番に見せたいと思って、これ持ってきたんだよ」
そう言って、マツリは鞄の中からハンディタイプのビデオカメラを取り出した。
「いや、そう言われると悪い気はしないんだけどさ、他の3人はどうしたのよ。今日は部室にも顔出さなかったし、タッキーからも昨日からメール来ないんだわ」
タッキーとは、恥ずかしながら彼氏彼女の関係になったばかり。交際を始めてそろそろ一か月経つんだけど、全く連絡よこさない日なんて初めてね。え? 心配なら私から連絡しないのかって? そんなの私のプライドが許さないわ。
「あ、タッキー君ならさっきたまたま図書室で会ったよ。その時、後でこの教室に来てって声かけたから、もうすぐ来ると思うよ。オカ氏君にもto-koさんにも今日ここに集まるように言ってあるから、そのうちに皆そろうんじゃないかな」
「そうなの? まあ、ならいいんだけど…」
マツリ、タッキー、オカ氏、to-ko、それに加えてこの私ユッコ。これが今回の事件の当事者たち。
「じゃあ、お楽しみの始まりだね」
マツリはそう言うと、ビデオカメラの再生ボタンを押してから、モニター部分を私に向けて差し出した。私はそれを受け取ると、手近な机の席に腰かけ動画を見始める。すると、マツリは私の背後に移動した。どうやら私の後ろから立ったまま一緒に動画を見るつもりみたいだ。
> 0:00
タッキー 「やっほー! ユッコ見てるかー!」
to-ko 「ユッコ、ごめんね。彼氏借りてまーす! デートしてまーす!」
タッキー 「ちょ、ちょっと待て! 誤解されるようなこと言うなよ! ユッコ、浮気じゃないからな!」
オカ氏 「あ、あの、私もいるのですが…」
II 0:01
「…………」
「ユッコ、どうして再生止めちゃったの?」
「マツリさん、これのどこが面白い動画なんでしょうか?」
私はついイラついて一時停止ボタンを押していた。たった一日だが音沙汰のない彼氏。そいつが他の女子と楽しそうに過ごしている。それを見るのが、まさかここまでイラつくとは予想外だった。
「ま、まあまあ、最初の方は演者の挨拶だとか、舞台の紹介とかを入れてあるから、面白いのはこの先だから、ね」
マツリは私の心中を察したのか、なだめるような口調でそう言って続きの再生を促してきた。
「はいはい、続きを見ればいいんでしょ」
お読みくださり、ありがとうございます。
夏のホラー2017の提出期限の8月3日までに、全6話の予定で投稿していきたいと思います。