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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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課題

 あまりの猛暑にエアコンを入れっぱなしで連日寝ていたら、電気代を八千円も請求されてしまい気が遠くなった。

 おまけにクーラー病を発症し、体から倦怠感が抜けない。

 それでも、就労移行支援施設は、当たり前だが許してはくれない。

 クーラー病で休める会社などないのだから。

 

 さて、自分は施設で「課題」をスタッフから頂き、それを締切日までに完了させるスタイルを取らせてもらっている。

 EXCELで提示されたお題を制作したり、カリキュラムで使う課題原本を作ったり、内容は様々だ。

 締切という言葉はいい、今までの経験が呼び起され、身が引き締まる。

 他の利用者とは違う内容をやっているというのは、少しだが優越感ももたらされる。

 はたから見ればしょうもない事だが、これだけでモチベーションが上がるのだ。

 

 だが、これは性分のところもあるのだが、スタッフからよく注意を受けるようになった。

 作業に没頭しすぎて、休憩を一切取らなくなってしまったのだ。

 昼休憩の時間ですら、昼食を取り終えたら作業に没頭する。

 そして毎日言われるのだ、そこまで熱を挙げなくても良い、と。

 締切前提で生きてきた身の上に、作業完了至上主義がよろしくない、と。

 染みついた考えの否定は、正直、堪える。

 歳も歳だから今更考えを改めろと言われても、はいそうですかと体がついて行かない。

 そうすると、殺し文句が飛んでくる。

 就職後に、職場のルールに従えない人物のレッテルを張られていいんですか、と。

 言われれば、その通りである。

 その通りであるから、ぐうの音も出ない。


 締切に追われるのは、嫌いではない。

 確かに心の安息が無いのだが、それ故の達成感は、たまらなく心地よいのだ。

 二十年近くそういう世界で生きてきたのだから、なおのことだ。

 しかも「課題」には、施設でのカリキュラムに多い、積んでは壊し、積んでは壊し、の賽の河原のような徒労感が無い。

 成果物は闇に葬られることなく、きちんと利用してもらえる。

 カリキュラムの中で、コンペ形式で作った掲示物が実際に印刷され施設の掲示板に張り出された時のやりきった感。

 こういうものを求めているのだ。

 やりがいが無い事には、燃えない性格なのだ。

 ただ、惰性で施設に通っているわけではないということがわかる、それだけでも嬉しいものなのだ。

 何かしらの爪痕が残る、それは至福なのだ。


 自分は、はやく社会復帰したい。

 この言葉に偽りはない。

 生活保護を享受しているほうが、苦労せず生きるだけなら、楽にやっていけるだろう。

 しかしそれだけでは、人生はつまらない。

 何より、爪痕が一切残らない。


 うまくやりくりすれば、インターネットが使え、ケーブルテレビにも契約ができ、医療費は無料で、飯の心配をそこまでしなくて良い暮らしが享受できる。

 文字面だけ見れば優雅に見えるだろう。

 社会で疲れ切った方々からすれば、うらやましいの一言に尽きるだろう。

 だが、自分はそれが嫌なのだ。

 自分の稼いだ金でやるからこそ、そういったものへの満足感は高まるのだ。


 優雅に見えるだろう、だが、現実その場所に身を置いてしまえば、そうではない。

 何の目的もなく時間を浪費する、定年退職した老人のようでありたくはない。

 話す相手もなく、一日中横になり、ケーブルテレビを垂れ流しながら時間を無駄にしていく。

 そして、インターネットで、SNSで、思ったことを脊髄反射の様に垂れ流す。

 これは、娯楽漬けに見える苦行だ。

 苦行と思うのは、堕落が許せないだけなのかもしれない。

 精神障碍者手帳を交付されているような奴は、社会のすみっこで、大人しくしていろと言われるのは、許せない。


 自分は、働きたいのだ。

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