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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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盆を過ぎて

 就労移行支援施設には、基本的に休みは無い。

 日曜と、年末年始くらいのもの、だそうだ。

 スタッフの姿勢には、頭が下がる思いだ。

 スタッフのデスクを見ていても、誰が休暇を取っているかが全く分からないローテーションになっている。

 ちなみに自分は、お盆期間は施設を休んだ。

 実家に帰ってこいと言う命令を受けたからだ。

 はっきり言って、自分と父親の関係は、悪い。

 刃物が飛び出したことも有れば、自分がありったけの薬を飲んで一週間昏睡したことも有る。

 世間体だけの男だから、表沙汰にはならない。

 恥の前に、自分の所業を反省して、と言ってもダメだろう。

 歳が行き過ぎている。

 今更相手が変わることなどあるわけがない。


 お盆前に、電話口で父親と口論になった。

 最初は母親と話していたのに、どうしてこうなったのだろう。

 自分は追い出された身の上だ、おいそれと帰るわけにはいかないだろう。

 だが、父親の中では、事実を歪曲し、自分本位のわがままなストーリーが描かれており、それに付き合えという一本槍だった。

 さすがにこれは許容できない。


 なので、約束はしたが、結局実家には戻らなかった。

 実家暮らしが長かったので洗脳されていたのだろう。

 自分がいなくても、世界はまわる。

 いや、まわせるものだ。

 電話で聞いたところによると、母は父親のヘルプに耳を貸さなかったそうだ。

 盆参りにくる親類縁者の相手を父親にすべて押し付け、お茶を出したり云々にしか従事しなかったらしい。

 それが気に入らなかったらしく、喧嘩になりそうだったらしいが、母親の「殺し」文句の前に、父親は沈黙するしかなかったそうだ。

 

 父親は、外面だけは良すぎるのだ。

 そのため、家族を顧みられたことは無い。

 母親は、性格の悪い父の母、所謂糞ババァの嫁いびりにさらされ続け、糞ババァの被害は、自分と弟にも及んでいた。

 大学時代にあの糞ババァがくたばってから、楽になった。

 当時は倫理観が強かったからやれなかったが、糞ババァが生きていたら、毎日が楽しかっただろう。

 関節を極めたり、ぶんなぐったり。

 糞ババァのお茶に塩を入れてやったり、糞ババァの夕食の盛られた皿にだけ、漬物の汁をまんべんなくぶっかけたり。

 くたばっていなくなった奴とはいえ、今でも鮮烈に、当時できなかった嫌がらせをいくらでも考え付けるのだ。

 そして現実に、仕掛けてやりたい。

 今年は実家に戻らなかったが、あの糞ババァの位牌に水をかけてやったことは一度もない。

 それどころか、デコピンで揺らぐのを面白がるくらいに恨んでいる。

 へし折ってやろうか、いい感じに炭焼きにしてやろうかとも思ったが、そこは良心がとがめるのでやってはいない。

 

 この態度は、恐らく父親がそうなった時も取るだろう。

 いや、そもそも生活保護の身。

 知らなかったことにして、葬儀に出ないかもしれない。

 家を継ぐのは、弟がいる。

 弟は結婚し、子どももいる。

 こんな駄目な男より、そちらがつぐ方が安定するだろう。

 前田利家だって次男坊だ、社会適合力のあるほうが家を継ぐべきだ。

 相続放棄をしたい、と、母親にも弟にも訴えているのだが、相手にしてもらえない。

 自分は、すっきりしたいのだ。

 生活保護の身であるから、なおのことだ。

 財産が散逸するくらいなら、弟夫婦に集中してもらいたい。

 就労移行支援施設に通っていて、晴れて就職なったとしても、自分は家族を持てるような器用さが無いことを知っている。

 自分は、甘え方を知らない。

 甘えたい盛りの頃、父親は単身赴任だったし、あの糞ババァと同居で、さんざんな嫌がらせのとばっちりを受けていた。

 風呂に入れば、冬場に水風呂だったり、沸かし過ぎてとてもじゃないが入れない水温だったり。

 牛乳と麦が嫌いだと言い張るくせに、天ぷらとケーキが大好きだったりと、想像以上の馬鹿だった糞ババァ。

 生きていたなら、さんざんな目に合わせてやるのに、くたばりやがったことが残念でしようが無い。


 だから自分は、結婚しないだろう。

 あんな醜い仮面舞踏会を、二度と味わいたくないから。

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