無能の人
Flashアニメーションが、技術として死ぬ。
二〇二〇年には、ほぼ命脈が絶たれる。
ああ、そうか。
自分のキャリアは終わったのだな。
イラストレーターは、インデザインがマイナーだった頃、マニュアルを作ることによく使っていたので、絵は描けないが素人という訳でもない。
フォトショップも、電線を消したり、マニュアルに使う画像のトリミングをする程度には使える。
だが、それは、どこにでもいる程度のスキルレベルだ。
ああ、そうか。
自分は、ノンスキルの凡百になってしまったのだな。
そう、思った。
こうなってしまうと、自分にはもう、何のとりえもない。
とりえもない、生活保護受給者の、ただのクズだ。
過去の栄光はもはや眼前にはない。
経験が役に立つ場面など、想像もできない。
こうなるであろうという噂は聞いていたが、それを突き付けられたら、観念するしかない身分だ。
Flashの代替技術を習熟するにも、カネが要る。
それにとっかかるにも、環境をそろえるためにはカネが要る。
自分は無力だ。
技術がどうであろうが、それを練成する機会が無くては、何もできない。
ただの、精神を病んだおっさんでしかない、今の、自分は。
どこそこと、名前の通った企業の紹介Flashアニメーションを作った栄光はもはや昔のもの。
どこそこと、名前の通った企業の内覧会Flash動画を作った成果はもはや昔のもの。
手元には、何も残らない。
デジタルのデータである以上、どんなに「俺はこういうものを作ったんだ!」と吠えても、それは負け犬のそれだ。
未だに人は、目に見える新聞紙をありがたがる。
この現状を、就労移行支援施設には、言えないでいる。
使える得物が無くなってしまった、そもそも数年前から噂は出ていた話だ。
努力しようにも資金が無く、何の手も下せなかった。
故に、次の得物が何もないのだ。
パソコンの技能として使えるのは、タッチタイピングの速度程度のもの、だから、本当に、初心者に毛が生えた程度のものだ。
WordやExcel、Powerpointは、基礎的技能はあるが、複雑なことは出来ない。
この施設に通うようになって、Excelは修練を積んでいる。
ただ明らかに、力量不足だ。
ネット環境があって、それを検索しながらなら、出来るだろう。
出来るだろうが、その環境が無ければただの無能のぼんくらだ。
そうなれば、今の施設で何を学習すればよいのだろうか。
学習、か。
そういえばこの施設に通うようになって、まだ、二か月程度しかたっていない。
焦り過ぎなのかもしれない、とスタッフに言っても、ロードマップは勝手にひかれてゆく。
自営業でやってきたためか、社会人としての一般的スキルは「ある」と判定されている。
自分は、人間が嫌いだ。
人間が、怖い。
確かに仲が良くなった施設利用者も居る。
だが、だからといって、信用してはいない。
日ごろの態度のせいだろうか、ここを話しても、なかなか理解してもらえない。
スタッフが思うほど、自分は温厚ではないのだ。
ワンテンポ鈍いから、未遂で終わるだけの話だ。
演じ続けなければならないのだろうか。
仮に、就職が叶ったとしても。
苦痛が伴うものなのだろうか。
仮に、就職が叶ったとしても。




