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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
92/127

無能の人

 Flashアニメーションが、技術として死ぬ。

 二〇二〇年には、ほぼ命脈が絶たれる。

 ああ、そうか。

 自分のキャリアは終わったのだな。

 イラストレーターは、インデザインがマイナーだった頃、マニュアルを作ることによく使っていたので、絵は描けないが素人という訳でもない。

 フォトショップも、電線を消したり、マニュアルに使う画像のトリミングをする程度には使える。

 だが、それは、どこにでもいる程度のスキルレベルだ。

 ああ、そうか。

 自分は、ノンスキルの凡百になってしまったのだな。

 そう、思った。


 こうなってしまうと、自分にはもう、何のとりえもない。

 とりえもない、生活保護受給者の、ただのクズだ。

 過去の栄光はもはや眼前にはない。

 経験が役に立つ場面など、想像もできない。

 こうなるであろうという噂は聞いていたが、それを突き付けられたら、観念するしかない身分だ。

 Flashの代替技術を習熟するにも、カネが要る。

 それにとっかかるにも、環境をそろえるためにはカネが要る。

 

 自分は無力だ。

 技術がどうであろうが、それを練成する機会が無くては、何もできない。

 ただの、精神を病んだおっさんでしかない、今の、自分は。

 どこそこと、名前の通った企業の紹介Flashアニメーションを作った栄光はもはや昔のもの。

 どこそこと、名前の通った企業の内覧会Flash動画を作った成果はもはや昔のもの。

 手元には、何も残らない。

 デジタルのデータである以上、どんなに「俺はこういうものを作ったんだ!」と吠えても、それは負け犬のそれだ。

 未だに人は、目に見える新聞紙をありがたがる。

 

 この現状を、就労移行支援施設には、言えないでいる。

 使える得物が無くなってしまった、そもそも数年前から噂は出ていた話だ。

 努力しようにも資金が無く、何の手も下せなかった。

 故に、次の得物が何もないのだ。

 パソコンの技能として使えるのは、タッチタイピングの速度程度のもの、だから、本当に、初心者に毛が生えた程度のものだ。

 WordやExcel、Powerpointは、基礎的技能はあるが、複雑なことは出来ない。

 この施設に通うようになって、Excelは修練を積んでいる。

 ただ明らかに、力量不足だ。

 ネット環境があって、それを検索しながらなら、出来るだろう。

 出来るだろうが、その環境が無ければただの無能のぼんくらだ。

 そうなれば、今の施設で何を学習すればよいのだろうか。

 

 学習、か。

 そういえばこの施設に通うようになって、まだ、二か月程度しかたっていない。

 焦り過ぎなのかもしれない、とスタッフに言っても、ロードマップは勝手にひかれてゆく。

 自営業でやってきたためか、社会人としての一般的スキルは「ある」と判定されている。


 自分は、人間が嫌いだ。

 人間が、怖い。

 確かに仲が良くなった施設利用者も居る。

 だが、だからといって、信用してはいない。

 日ごろの態度のせいだろうか、ここを話しても、なかなか理解してもらえない。

 スタッフが思うほど、自分は温厚ではないのだ。

 ワンテンポ鈍いから、未遂で終わるだけの話だ。

 演じ続けなければならないのだろうか。

 仮に、就職が叶ったとしても。

 苦痛が伴うものなのだろうか。

 仮に、就職が叶ったとしても。

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