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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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削りようがない

 今年は、早々と諦めることにした。

 エアコンの利用について、だ。

 就労移行支援施設やデイケア施設に行っていない間は、昼夜たがわずつけっぱなしにする。

 電気料金が痛いが、これはもう仕方がない。

 室温が三十度を越える日がここまで続いてしまえば、我慢にも限度というものがある。

 昼間なんぞ、下手をすれば四十度を越えている、これは日本人の生活してきた環境ではない。

 三十代までなら気力と体力でしのいだだろうが、自分の老いを感じてしまった。


 就労移行支援施設へ通所する旨を市役所に申請してからと言いうもの、本来なら先月来るはずだった生活保護課の担当者は来訪していない。

 つまり、死んだことを誰にも気づかれずに生乾きのまま遺体を晒す期間も長くなるという事。

 エアコン設置物件だというのにそういう事となれば、アパートの大家さんに申し訳がたたない。

 死んだあとでは、自分の尻すらふけないのだ。

 

 とはいえ、出費を削るというのは、これ以上もう限界だ。

 飯の回数と量、材料数を削るくらいしか無い。

 就労移行支援施設に行けば、味はともかく一食は食える。

 だが、成人男性のそれからすると、どうにも量が少ない。

 せめてコメの一合は欲しい。

 この点、デイケア施設の飯のなんと旨かったことか。

 一週間おきに薬をもらうため現在も通所しているが、そのたびにスタッフから「痩せたね」と言われ、ご飯の量を融通してくれるのだ。

 デイケアは生命線、コメの一粒血の一滴なのだ。


 交通費は、削りようがない。

 どちらの施設も、自転車で通うには現実的ではない距離がある。

 途中で熱中症をおこすリスクは、犯せない。

 

 それよりなにより、削るどころかカネを貯めねばならないのだ。

 就職活動の面接時に着るスーツや靴、カッターシャツを買うために、だ。

 自営でやってきていたため、そういった格好をする場は滅多になかった。

 そのため、もはやサイズが合わないのだ。

 今履いているGパンだって、痩せてぶかぶかなのをベルトで無理やり締め付けて使っているから、腰回りがほおずきのように膨れ上がった、大変みっともない様相を呈している。

 もともとぶかぶかだぶだぶの恰好が好きなのだが、就職活動ともなればそうも言ってはいられまい。

 

 そもそも自分には、服を買うという文化様式が浸透していないのだ。

 Tシャツは最低でも一年半は着るし、冬場に着ていたトレーナーなんかは、酷いものでは七年選手もいるくらいだ。

 その代り、生地のしっかりとした、若干高いものを買うように心がけている。

 そちらの方が、結果的に費用対効果が大きいことを知っているからだ。

 なので、自分のファッションセンスは、古い上に珍妙だ。

 指先しか出ていないトレーナーに、ほおずきみたいなGパンをはいたおっさん。

 コンセプトは、日曜日のお父さんだ。

 嫁も娘も、二次元にしかいないが、そこは気にしない。


 話を戻す。

 就職活動に適した格好は、最低でも九月いっぱいには揃えなければならないと施設から言われている。

 そのための貯蓄をしながら、エアコンを使うことを決めた。

 削れる無駄は一切ない。

 ……のだが、「劇場版魔法少女リリカルなのは Reflection」は、初日にしっかり観に行った。

 なんと意志薄弱な事かと呆れられるかもしれないが、こればかりはもう、公開発表があった時点で予算を組んで準備してあったのだから仕方がない。

 気を張り続けてばかりでは疲れるだけだ、と、最近思うようになった。

 具体的には、ここ二週間で二回吐き、その両方に血が混じっていた辺りからだろうか。

 

 就労移行支援施設では、間違いなくストレスが溜まっている。

 ただでさえ人間嫌いで人ごみが苦手なのに、狭い空間に三十人以上詰め込まれて暮らす日々を送っていれば、無理もない。

 そこにきて人間関係が絡むのだから、苦行だ。

 詳細は書けないが、理不尽な対人関係トラブルにも一方的な被害者として巻き込まれ、継続中だ。

 控えめに言っても、重迫撃砲の標的に縛り付けてやりたいくらいの事があった。

 社会復帰、今なお遠く、だ。

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