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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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趣味の合う仲間たち

 就労移行支援施設には、オタクが多い。

 アニメキャラクターのグッズを普段使いしている者は多くいるし、オタク談議に花が咲くこともある。

 だからと言って、「障碍者≒オタク」という偏見の構図がすべからく当てはまるという訳でもない。

 まあ、一般社会と比較した密度で言えば、間違いなく高いだろう。

 じゃなければ、

「二十四年ぶりにタイラーのアニメ新作やるって!」

 なんて会話が、朝から大ニュース扱いで盛り上がろうはずもない。

 ちなみに、前作を、物心ついてから地上波リアルタイム視聴していた者は、少ない。

 自分が学生時代の作品だというのに、話題を振ってきてしまえているほど、付いて来れてしまうほどの剛の者揃いだとはいえよう。

 

 さて、なぜ障碍者にオタクが多いイメージがついて回るのか。

 これは、一つの事に集中しすぎてしまうきらいがある方が、自分も含めて多いからではないかと思う。

 それが現実社会に役に立つ知識ならば良い。

 ところが、そんな幸運に恵まれる人ばかりではないのだ。

 大都市の真ん中でタラの芽やゼンマイ等といった、山菜の採り方や食べ方をいくら知っていても、その知識は役に立とうはずもない。

 市が管理する公園に大量のツワブキが茂っているからといって、採って食べていいのかと言われれば、判断に迷うだろう。

 もちろん原則的には市有地のものを勝手に持ち去るのは違法だが、それがまかり通っている現状も、ある。

 山菜採りに行って遭難する老人が多発するようなもので、つまりはそれと同じ理屈だ。

 運が悪いから、いや、拾ってくれる場所を見つけ出すことができる幸運な環境にいたから、ここに来た。

 それだけの話だと、自分は思っている。


 とはいえ、はやく仕事を見つけたくて、就労移行支援施設に通っているのは確かだ。

 かといって、条件に見合うような求人募集は、見当たらない。

 徒労感は、ストレスになる。

 それはこの施設に通うほぼ全員の心にのしかかっている。

 暗い気分を抑え込むためには、やはり趣味嗜好の似た者は、自然発生的にグループを作るのは、人間社会なら当たり前の事。

 特に休憩時間や、終了時間を過ぎてからは、やはりプライベートな話題や付き合いというものは頭をもたげてくる。

 そのため、施設が終了してからアニメキャラグッズ専門店に一緒に行こう、といった話になることも、ままある。

 財布のひもは、ぎちぎちに固い。

 だが、見るだけならタダだ。

 酒もやらず、インターネット以外に娯楽もなく、では、なんと心の苦しい事か。

 何もしないことは苦痛にしかならない、これが幸せな環境と取られるかどうかは、各自の判断にお任せしたい。

 何もしない環境は、確かに最初は心地よい。

 だが、それを毎日繰り返すことになってしまった場合の、なんと窮屈な事か。

 食事とやる事は、無ければ心に直接効いてくる攻撃だ。

 これは、経験者が言うのだから間違いない。


 という訳で、誘いに乗った。

 同人誌販売店をハシゴして、キャラグッズ専門店をまわり、ゲーセンで一休みする。

 気が付けば日は落ちて、それで解散になる。

 一人ではよくある行動パターンだが、三人も連れだってまわるというのはいうのは、いつの日以来だろうか。

 親友が帰ってきて誘われ、二人でまわることはある。

 だが、三人ともなると、人が集まらない。

 気が付けば所帯持ちだらけなのだから、周りには。

 そう考えると、おそらく大学生時代以来、ということになるだろう。


 自分は人間嫌いだ。

 だが、楽しかった。

 今までの施設とは違う、活気にあふれる楽しさだ。

 干支が一巡以上離れた感性の若さ、同じ作品を見てからの感想、ありあまる体力についていくので精いっぱいな自分。

 施設通いという境遇の等しさから、作品やキャラクターに向けられる思いや見方は、似通っている部分が多い。

 多いが、やはり世代の差からくるキャラクターへの共感する部分が違っていて、本当に面白い。

 こんな日が、月に二、三回くらいなら、あってもいいなと思う。

 ただ、こんな日が毎月やってくるようでも、困る。

 この施設は、ゴールではない。

 再出発のゲートなのだから。

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