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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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優しい戦場

 就労移行支援施設に通う人は、その目的用途が様々だ。

 デイケアなんかより、はるかに幅が広い。

 子供の養育費が欲しい者や離婚調停の真っ只中などといった者。

 自分と同じように、生活保護から脱したい者。

 こういってしまってもいい、社会の底辺の縮図だ、と。


 これまでの施設とは違い、皆、障碍者手帳は持っている。

 なので、そこは笑い飛ばすことが出来る。

 ところが周囲には「今まであれこれいったこと」自体を消し去りたい人もいる。

 無論、そんな可能性は絶無といって良い。

 可能性があるだけ、と言った程度だ。

 そうは思うが、これは両方の施設に言える事なのだが、筋肉を売りにしたスタッフは誰も存在しない。

 ああ、この人は体術か居合を嗜んでいるな、という人はいる。

 

 この施設ではなく、むしろデイケアに居るほうが幸せなんじゃないか、と思う利用者もいる。

 空気も読めなければ、間合いも取れない、作業時間中に居眠りしてしまうのがほとんど、という人だ。

 ただそれは、自分個人の主観であって、スタッフの取り方は違うのだろう。

 ただし、その相手と組まなければならなくなった場合は最悪だ。

 今までの施設のしいたけの彼のほうが、よほどコミュニケーションを取れると言ったものだ。

 幸いここでは、無理にこちらから当然のような利用者は少ない。

 恐らく、デイケア利用者とそれに準ずるもの、それと受け入れる事業所が綺麗に切り分けられているからだろう。

 

 優しい世界だ、ここも、やはり。

 しかしここの優しい世界も、覚えたころには次の戦場。

 つまり、就職先へと赴かなければならないのだ。

 ただどうにも、通うには力が要る。

 家を出るまでの三十分が何と長いものか。

 

 遅刻はしない、という当たり前のルール前提で、通所は三十分ほど前には施設に到着するよう行動している。

 これは、今までの施設とは大きな隔たりがあるルールだ。

 今までの送迎のバスはプラスマイナス十分程度は融通を聞かせてくれるが、今の施設に、送迎バスなんてものは存在しない。

 あとは、一般的なマナーだ。

 就労開始の十分前に通所し、一コマ五十分と整備されたカリキュラムをなぞっていくだけ。

 そう、本当になぞるだけなのだ。

 Word の操作を学びたければ、そのテキストを。

 Excel の操作を学びたければ、そのテキストを。

 これが基本の毎日になる。

 それにプラスして、就労支援としてのビジネスマナー講座や、企業業務での実践といったものが日によって入っている。


 はっきり言おう。

 自営業時代のほうが楽だ、と。

 およそここまで上がった課業のほとんどは、個人事業者には経験のあることだ。

 その代り、集団での行動となると、途端にダメになってしまう。

 これを分業でやるのが、社会なのだろう。

 それがようやくわかり始めた。

 群れた経験のない傭兵、だからこそ。

 誰かの助け方を知りたい。

 手伝いの仕方を教えてほしい。

 残念ながら、助け合うカリキュラムは存在しないようで、なんとももどかしい。

 もっと大きく教養を積まなければ。

 これ以上腐るわけにはいかないのだ。

 いかないのだ、とはいえ……。


 家から出るのがだるい、面倒くさい。

 家から出てしまえば苦痛ではないのだが。

 今までは、起床からパソコンに火を入れればお仕事スタートだった。

 三十秒の手間をこなして、電話を待って、なさそうなら遊びに行って。

 自由奔放に生きてきた。

 もちろん、その会社に入っての作業と言う経験もある。

 だが、組織集団で業務を行えと言われるのは、非常に難しい。

 かつて経営していた会社のように、チェックをしながら、チェック自体をクライアントに任せながら、といった行動が極めて珍しいものだとは思っていなかった。

 だから、今は。

 社会を知る、というのが一番大切なことなのだなと感じた。

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