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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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飯のレベルが雲泥の差

 就労移行施設の飯は、不味い。

 食えないほどではない、だが、今までの施設と比較すると雲泥の差だ。

 塩味も無い、規格通りに切って蒸かしただけの野菜とこんにゃく。

 塩の味しかしない、ぼそぼそとしたおから。

 今までの施設と違い、飲み物は自分で用意しなければならない。

 うっかり忘れてしまうと、呑み込むのも困難なほど不味いそれが口のなかに残り続ける。

 

 就労移行施設の飯は、弁当形式だ。

 だからこそ、味に偏りが出来てくる。

 一番安くて調達しやすいものを出す業者と契約しているのだろう。

 ただ熱が通っただけの大根もあれば、醤油が辛くて血圧が心配になるものもある。

 ああ、自分はここに飼われているんだな、と思わざるを得ない。

 今までの施設の昼食は、美味しかったし、量もあった。

 管理栄養士監修のもと作られていたので、当然と言えば当然なのだが、美味かった。


 休憩も、利用者側から休憩しようと言い出す始末だった。

 ところが、今は違う。

 集中する時間が持続していて作業に没頭し、休憩時間の取り方がまずければ注意される。

 フリーランスでやってきた傭兵稼業の癖が抜けきらない。

 傭兵は、言われた時間内は集中するが、それ以外の時間は知ったこっちゃない。

 そんな考え方をしてしまう。


 ブラック企業体質と言われればそれまでだが、自分の知っている「社会」と、就労移行支援施設の言う「社会」の認識のずれが大きすぎるのだ。

 やれと言われれば、三日連続の徹夜は当たり前だった。

 ところがそれは、良くない事だと諭される。

 順法精神から言えば、施設のほうが正しいのだろう。

 しかし、興が乗る乗らないという、感情的な部分はどう処理すればいいのか。

 

 カリキュラムを守ってください、と言われる。

 しかし、合同訓練のような場では、作業能力に明確な差が生じてくる。

 出来ない人の肩代わりはしないでいい、そういうルールがある。

 だが、社会はそんなものではないので、実戦的とは言えないと思う節がある。


 もっと苛烈なものだと思っていた。

 ところが、生ぬるいのだ、現実は。

 今までの生き方が、馬鹿らしくなるくらいに。

 それは確かに、楽してカネが手に入るなら、それに越したことは無い。

 とはいえ、実際に突き付けられてみると、自分の今までの暮らし向きはなんだったのだろうか、と、考えに苛まれてしまう。

 考えを切り替えねばならない、それはわかる。

 わかるが、やはり心が付いて行かないのだ。


 今までの施設が恋しくて仕方がない。

 何をするでもなく、お遊戯に興じて、時間を潰すだけの施設。

 心理的負担が無いからこそ、ここまで回復できたのもまた事実だし、いつまでも居ていい性格の場所でもない。

 慣れ切ってしまえば、社会復帰など夢のまた夢だ。

 といっても、関係はまだ完全に切れたわけではない。

 主治医に薬を処方してもらう日には、今までの施設に通所する事になっている。

 同好の志と、花札が、隔週で待っている。

 いつの間にか、楽しみの場になっていたことに、美味い昼食にありつけていたことに、今更ながらありがたみを感じている次第である。

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