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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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壊れるときは一気に

 テレビが逝った。

 スマホが逝った。

 同時期に逝った。

 テレビに関しては、かれこれ十年以上世話になっていた代物であるし仕方がない。

 リモコンに、アナログ放送と地上波デジタルとの切り替えボタンが付いているくらい古い。

 亀山モデルとして、国内メーカーが我が世の春を謳歌していた時期に買ったものだ。

 このまま買わないでも良いかな、と思いもしたが、やはり世事に疎くなってはよろしくない。

 贅沢な話だが、アニメも観たい。

 情報はインターネットだけ、テレビだけに頼れば、バイアスがかかって正解に近い点を見出しづらくなる。

 買った。

 生活保護費を毎月一万円積み立ててきた、節制努力の結晶を砕いてまでも。

 今までは32型を使っていたのだが、流石に今の状況ではそれを購入するなど夢物語。

 大人しく、24型を購入した。

 やたらと駅近くにあることを前面に打ち出す家電量販店の店頭で、悩み、選んだ。

 

 はっきり言って、物足りなさが強い。

 画像に関しては、このサイズとはいえ画素数は新しいモノのほうが上だ。

 不満などあろうはずもない。

 問題は、音のほうだ。

 あの頃はカネがあったのだな、と、ひしひしと感じる。

 今まで使っていたものは左右に脱着式スピーカーが搭載されたモデルだった。

 そのためだろう、スピーカー内蔵式の新しいモノは、音の広がりが無い。

 迫力が無いように感じてならないのだ。

 わかっている、贅沢は出来ない身の上というのは。

 しかし、その贅沢の味を知っているからこそ、辛いのだ。

 完全に精神を病んで、生活保護に落ちる前までは、まともに働いていたのだ。

 最初から知らなければ、こんな葛藤など出ようはずもない。

 家電リサイクル料込みで四万円が、あっという間に消えてなくなった。

 それだけが、事実として残った。


 嗜好品としてのテレビが逝って数日後。

 スマホのバッテリーが死んだ。

 フル充電していても、持ち歩けばバッテリーが十二時間しかもたない。

 施設に行って帰るだけの間、ギリギリの航続距離しかなくなってしまったのだ。

 この状態になって、それでも三か月は我慢して使っていたが、もうだめだった。

 バッテリー残量が70%を切った途端、電源が落ちるまでに至っては、もはや携帯電話の用をなさない。

 腹をくくった。


 電車を使って、アップルストアに駆け込んだ。

 スタッフに相談すると、最新型への機種変更をお勧めされた。

 しかし、その提案には首を縦に振るわけにはいかない。

 毎月千五百円程度の出費だと考えれば、長期的に見れば得になる。

 確かにそうだろう。

 だがしかし、月々の支払金額がその分増えるとなっては、先の見えない身の上故に甘受できない。

 結果、バッテリーの交換、約一万円の現金支払いを選んだ。

 欲しいモノを買うな、必要なものを買え。

 誰の言葉だったか忘れたが、この鉄則に従う。

 修理費用で一万円、持って行かれた。


 スマホが無ければ、施設との連絡もそうだが、就労移行支援の手続き、果ては障碍者手帳の更新にも支障が出る。

 公的福祉を受けるにあたって、手続きの煩雑さが跳ね上がるし、連絡がつかないとなれば、生活保護のほうも困った事態になる。

 以前にも記したと思うが、生活保護は、ある程度機材が整った状態の時点で申請しないと、手遅れな性質がある。

 公的セーフティネットは、ここに至るまでの頑張りを評価してくれ、手心を加えてくれている面がある。

 贅沢はしない、だが、必要なモノのメンテナンス費用は織り込んで暮らしを組み立てなければならないのだ。

 遊んで暮らしている?

 税金で暮らしやがってうらやましい?

 馬鹿を言うんじゃない、そんなのは嘘だ、出鱈目だ。

 常識的な考えで、機材が故障することを考慮し、節約節制し、切り詰めていなければ、あっという間にコメすら食えなくなる。


 生活保護費だけで、五万円を備えとして準備しておくのが、どれほど厳しいか。

 涙ぐましい努力と、情報収集力、置かれた現状で受けられるサービスをいかにして使うか。

 その結果が、今回の事情を乗り越えられた成果なのだ。


 施設に通っていたから、昼飯はタダで食えた。

 だから、対応できた。

 それだけの話だ。

 だからこそ、思う。

 せめて半年の間は、どの機材も健在で、こわれることが無いように、と。

就労移行支援施設は、本当に個人のスキルアップが主体の、地味な世界です。

そのため、特筆すべきことが何もない日が多くなりそうなため、更新速度が著しく落ちると思いますがご容赦のほどを。

いつもの施設は、今にして思えば非日常を凝縮しうる場所だったのだなぁ、と、感じ入っている次第です。

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