頭の上で飛び交う書類
繰り返しになるが。
障碍者支援体制は、本当に手間がかかる。
就労移行支援施設を正式利用するためには、様々な立場の者が絡んでくる。
今日は、アパートに相談支援事業の契約を取り交わすため、面談員が来た。
この面談は原則自宅で行わなければならないものである。
そのため、隠し事は出来ようはずもない。
午後になり、指定された時間を過ぎる事数分。
くだらない雑談を交わす間もなく、面談が始まった。
聞かれる内容は、多岐にわたった。
いつもの施設の利用状況や、就労移行支援施設を選定した経緯。
そういった基本的なことはもちろん、現在の病状。
病気になった経緯と、通院状況。
現在の生活リズム。
料理は出来るか、洗濯はできているか、掃除はどうか。
金銭の管理は出来ているか、外出の頻度はどうか。
果ては、趣味は何かまでもが質問の内容に上がる。
最後は、面談員と契約書を交わして終了。
これだけのことで、二時間もかかってしまった。
周囲が、施設利用のためにバタバタと動いてくれているのはわかる。
それはわかるが、法律で決まった手順とはいえ、頭の上でボールを投げ合われているような置いてけぼり感は払しょくできない。
彼らはいつもの事なので、普通に専門用語を出してくるのだが、それが混乱に拍車をかける。
意識して、噛み砕いて説明してくれてはいるのだが、それでも馴染みのない話ばかりだ。
極端に言えば、はい、か、はぁ、としか、答えようがないのだ。
このサービスを受けるためには、状況に流されるしかない、という事だけはわかっている。
だから、質問に明確な回答はするし、反応を返すしかない。
これもまた、就労移行支援施設と同様、営利企業による運営である。
それも、何故かゴム関連製品の製造販売会社の介護福祉部門などという、得体のしれない相手だ。
数年前に民間に業務が開放されるまでは、社会福祉事務所が行っていた事業だったそうで、そこに参入した、という説明は受けた。
そのため法律には則っているのだろうが、何ともすわりの悪い話である。
法律、いや、行政がらみはいつもそうだが、心が付いていけないことが多い。
目の前で、契約書と印鑑と申請書が量産されていく。
それをただただ、眺めているしかない。
要は、難しくて面倒くさいお役所とのやり取りを代行しますよ、という業者が、挟まっているためこんな面倒くさく理解に苦しむ事態になっているのだろう。
はたして、支援を受けるための制度を複雑化し、手間がかかる仕組みにする必要はあるのだろうか。
就労移行支援施設を体験入所し、相談支援事業員との面談を行う。
ここまでで、二つの事業者が絡んでいる。
さらにこれ以降、市役所? 保健所? へ行き、申請書を提出し、行政側と面談をやらなければならない。
そこから今日の面談員に連絡を取り、また書類を書かなければならないそうだ。
そのため、行政からの承認が下りるまで、長ければ一ヶ月も待たされるらしい。
その間、何をやっていればいいというのか。
幸い、就労移行支援施設側は、承認が下りるまでの間は「体験入所」という体裁で通所を容認してくれる姿勢だ。
ゴールデンウィークが明けたら、いつもの施設ではなく、毎日、就労移行支援施設に通所してよいとの承諾は得ているので、実質は動き始めていると言っても良いだろう。
社会復帰したい気持ちに嘘は無い。
無いのだが、こうも、やれ契約書だ、印鑑だ、申請書だ、面談だ、体裁は体験入所だ、と、畳み掛けられようとは思ってもみなかった。
こういうのが面倒臭いなら、直接ハローワークへ行って、自分で探せばいい話なのだ。
だが、そこは自営業歴約十年の中年男。
ほとんど傭兵稼業で食ってきたようなものだ。
組織の一員としての振る舞い方を知らない以上、学ばなければならないことがたくさんある。
だからこそ、就労移行支援施設を活用する道を選んだのだ。
とはいえ、はやくこの状況は終わってほしい。
はやく、こうも面倒な申請作業に煩わされることは無くなってほしいものだ。




