表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就職活動開始期
66/127

苦痛だ

 ここ最近、一回り年下の利用者に閉口している。

 話がくどいだけならまだしも、自分が面白いと思ったことや思いついたことを真似してくれ、と、迫ってくるのだ。

 まるで小学生をあやしているかのような気分になり、精神力をゴリゴリと削られる。

 スタッフに訴えても「ここはそういう人も集まる施設だから」と言われてしまえば、引き下がるしかない。

 独りで盛り上がってる分には文句を言う筋合いはないのだが、必ず巻き込もうとしてくるのが始末に負えない。

 自分だけならまだしも、六十代の利用者にまでそれを強要するのだ。

 苦痛だ。


 やることなすこと、幼稚になっているのだ。

 関わりたくないから、と、同好の志と話をしていても無理やり割り込んでくる。

 そして、一緒にお遊戯をしろと迫られるのだ。

 売れない芸人の一発芸を延々と見せつけられていた頃は、まだマシだった。

 だだすべりの芸を一緒にやれ、と言われても、正直困る。

 自分のノリが悪いわけではない。

 痛々しすぎてみていられないのだ。

 苦痛だ。

 

 いい加減しつこいよ、と言えば言うほど悪乗りしてくる相手を、どう捌けばいいというのだろうか。

 施設の特性上、無視するわけにもいかず、いう事を聞いてやる義理も無く、ほとほと困り果てている。

 今、彼の中で大流行しているのはナチス敬礼をしながら「ハイルヒトラー!」と延々言い続けることだ。

 流石に看過できない行為なので注意する。

 その注意という行為が、かまってもらえた、に脳内変換されるのだ。

 かまってもらえたという事は、これをやると会話をしてもらえるのだ、に置き換えられてしまう。

 性質が悪すぎる。

 最初にやり始めたころ、愛想笑いなんかしなければよかったと後悔している。

 苦痛だ。


 施設の活動でカラオケがある時、彼は自信満々に一番手で曲を入れるのだが。

 言いにくいが、つまり、その、音痴なのだ、彼は。

 本人は自分で歌はうまいと思っているようだが、お世辞にも……、なのだ。

 それを、褒めて褒めてと言わんばかりにアピールされる身にもなってほしい。

 悪いけど君、音痴だよ。

 この一言を言う勇気が無い自分が悔しい。

 苦痛だ。

 

 彼は重度のアトピー持ちだ。

 それはいい、仕方のないことだから。

 しかし、だ。

 花札に負けたからと言って、血が出るまで体を掻きむしるのは本当にやめてほしい。

 平然とした顔で「僕は血の匂いって嫌いじゃないんですよ」とか言っているが、見ているほうはドン引きだ。

 爪の間に赤黒いものが詰まった状態で花札を続行されるのは、精神的に辛い。

 そう、花札と言えば、負けが込んでくると札を投げつけるのもやめてもらいたい。

 苦痛だ。


 スタッフにお願いしても動いてもらえず、かといって、立場上注意出来ないというのがこれほど苦痛だとは思わなかった。

 彼なりの好意の表し方なのだろうが、それが致命的に下手くそ。

 舐められているのだろうか、舐められているのだろうな、多分恐らく。

 施設が、まさかストレスをためる場所になろうとは思ってもいなかった。

 彼が話しかけてこないと、ほっとする。

 仕事先でこんな同僚が居たらと思うと、ぞっとする。

 

 とりとめのない、ただの愚痴を垂れ流す。

 そんな日があってもいいじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ