兵站の崩壊
経済的側面においての、戦略基盤が崩壊した。
近所のスーパーが、半額弁当を辞めたのだ。
今後は、二割引きにしかならない。
百五十円で済んでいた夕食が、二百四十円に跳ね上がる。
五千円ほどで済んでいた夕食代が、今後は八千円近くかかる話になるのだ。
これ以上削りようもない状況から、何を削るか。
これ以上の節約節制努力を、どうやって捻出するか。
兵站の崩壊を意味する大事件に見舞われているのだ。
この方針転換は、四月一日にあったという。
パートのおばちゃんに直接聞いたので間違いない。
何故、自分がそれにすぐ気付かなかったのかと言えば、出歩くことの面倒くささから、毎回六食ほど買いだめしていたからだ。
最後にスーパーを訪れたのが、先月末。
その翌日から、値上げ。
面食らった、神はこの世にいないのかと思った。
この件で、スーパーを恨む気持ちが無いとは言わない。
だが、今までよく頑張ってくれたものだという感謝の念でいっぱいだ。
自分からすれば、昔に戻るだけの話だ。
このスーパーを見つける前、自炊していた頃の食生活環境に。
そのためには、行動圏を広げなければならない。
仁義にもとるかもしれないが、このスーパー、弁当以外は若干高いのだ。
アパートを中心とした一キロ圏内には、三つのスーパーがある。
一つはこの、旧・半額弁当スーパー。
今までどうもありがとう、二割引きでも費用対効果は大きいから使うよ。
一つは、昔から味に慣れ親しんだ醤油を置いているスーパー。
醤油の味は、たとえ貧しかろうが、どうしてもこだわりが出てしまうものだ。
肉の二割引き開始時間は把握しているから問題ない。
一つは、価格帯も中途半端でぱっとしないスーパー。
時々味噌を半額コーナーに置くなど、謎な行動が多い。
もっとも遠く、品ぞろえも微妙なため滅多に足を運ばない。
さらに二キロにまで行動圏を広げれば、B級野菜を取り扱う八百屋が存在するし、飲食店が主な顧客だというやや安い魚屋もある。
この値上げは、正直痛い、痛すぎる。
だが、一つだけ、不幸中の幸いとするならば。
就労支援施設を決めた後に行われないで良かったな、という点だ。
就労支援施設を選ぶにあたっての今までの悩みは、前提条件として食費が安く抑えられている事が挙げられる。
つまり、昼飯が出るところ一択になったと言っても過言ではないのだ。
もう一件見学に行くことは決定しているが、勝負の行方はとうに出てしまっている。
飯。
この一点だ。
兵站戦略が崩壊した以上、今まで同様、いやそれ以上に、昼食が得られる場所が最強なのだ。
なりふり構っていられない。
食わねば、そして生き残らねば。
なおの事、早期に社会復帰せねば。
追い立てられている。
意図しなかった方向からも、自分は今、確かに、追い立てられている。




