表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就職活動開始期
59/127

気に入らない薬

 自分は数種類の薬を処方されている。

 その薬のうち、一つは水薬だ。

 それだけは、飲み忘れを懸念して、施設のスタッフに管理してもらい飲んでから帰る事になっている。

 この薬、説明では無味無臭という事になっている。

 だが、やはり薬の味はあるし、臭いもあるのだ。

 はっきり言って、苦行だ。

 自分には何故か、左ひじから左肩にかけて、鈍痛が来るのだ。

 重たく、思い通りに動かなくなる、嫌な感覚。

 かつて、左腕の感覚を失った時を思い出す。

 その薬を、今日はスタッフが忘れており、飲み忘れて帰ってきたのだ。

 自分もすっかり忘れていたが、帰ってきてそれに気が付いた。

 安堵した。

 普通の錠剤には慣れているが、水薬にはなれない。

 治療には無ければならない薬だ、だが、安堵してしまった。


 一応、飲み忘れたことを施設に電話で連絡する。

 だが、今更飲むためだけに帰ってこいとは言われない。

 摂取一回当たりの量が変わらないのはわかっている。

 だから、明日二回分を飲まされるなんてことは無い。

 これだけでも、心が落ち着く。

 ぴんときた方もいるだろう。

 この薬は、断酒薬だ。

 カネも無いのに、よほどの人間関係が無い限り、誓って飲んではいない。

 信頼されていないのだ。

 まあ自分の場合、そもそも一回に呑む量が常人のそれを越えているのだから、医療管理として肝機能の正常化を望めば、仕方ない事だ。

 しかしだ。

 自制心で、γ-GTPは1800あったものが、220まで下がっている。

 この努力を後押しのつもりなんだろうが、不服だ。

 

 自力でここまで頑張って減らした数値を、まるで横から成果だけをかっさらわれた気分だ。

 大人しくしたがっているよ、だが、だからと言って、納得できる話ではない。

 成果を誇張するためにこんな出し方をされれば、悪意を持って斜に構えてしまうのは当然だろう。

 薬のおかげでここまでよくなったわけじゃない。

 自分の努力と忍耐の結果だ。

 施設は時折、こういう真似をすることがある。

 成果が必要なのはわかるが、やられたものはたまったものではない。

 

 飲んだ、今日はそのイライラから、飲んだ。

 無論、翌日に反応が出ない判定レベルの分量だ。

 わずか三百円越えの抗議だ。

 信頼されないのだから、そこに反映されてしかるべき行動だ。

 飲むつもりも無かったのに、飲む。

 苦痛が体に溜まる。

 話したところで「嘘を振りまいている」と思われるだけだ。

 納得がいかない。

 断酒薬の作用で吐き気が起こっても知ったことか。

 従順に従っていたにもかかわらず、この扱い。

 面白くない。 

 単純にそう思った。

 飲まなければやってられないわけではないが、周囲の対応が気に入らないのだ。

 どうでもいい話だからと、ほっておいてなるものか。

 自分の頑張りを否定されて、腹が立たない連中はいないだろう。

 少なくとも、自分はそう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ