気に入らない薬
自分は数種類の薬を処方されている。
その薬のうち、一つは水薬だ。
それだけは、飲み忘れを懸念して、施設のスタッフに管理してもらい飲んでから帰る事になっている。
この薬、説明では無味無臭という事になっている。
だが、やはり薬の味はあるし、臭いもあるのだ。
はっきり言って、苦行だ。
自分には何故か、左ひじから左肩にかけて、鈍痛が来るのだ。
重たく、思い通りに動かなくなる、嫌な感覚。
かつて、左腕の感覚を失った時を思い出す。
その薬を、今日はスタッフが忘れており、飲み忘れて帰ってきたのだ。
自分もすっかり忘れていたが、帰ってきてそれに気が付いた。
安堵した。
普通の錠剤には慣れているが、水薬にはなれない。
治療には無ければならない薬だ、だが、安堵してしまった。
一応、飲み忘れたことを施設に電話で連絡する。
だが、今更飲むためだけに帰ってこいとは言われない。
摂取一回当たりの量が変わらないのはわかっている。
だから、明日二回分を飲まされるなんてことは無い。
これだけでも、心が落ち着く。
ぴんときた方もいるだろう。
この薬は、断酒薬だ。
カネも無いのに、よほどの人間関係が無い限り、誓って飲んではいない。
信頼されていないのだ。
まあ自分の場合、そもそも一回に呑む量が常人のそれを越えているのだから、医療管理として肝機能の正常化を望めば、仕方ない事だ。
しかしだ。
自制心で、γ-GTPは1800あったものが、220まで下がっている。
この努力を後押しのつもりなんだろうが、不服だ。
自力でここまで頑張って減らした数値を、まるで横から成果だけをかっさらわれた気分だ。
大人しくしたがっているよ、だが、だからと言って、納得できる話ではない。
成果を誇張するためにこんな出し方をされれば、悪意を持って斜に構えてしまうのは当然だろう。
薬のおかげでここまでよくなったわけじゃない。
自分の努力と忍耐の結果だ。
施設は時折、こういう真似をすることがある。
成果が必要なのはわかるが、やられたものはたまったものではない。
飲んだ、今日はそのイライラから、飲んだ。
無論、翌日に反応が出ない判定レベルの分量だ。
わずか三百円越えの抗議だ。
信頼されないのだから、そこに反映されてしかるべき行動だ。
飲むつもりも無かったのに、飲む。
苦痛が体に溜まる。
話したところで「嘘を振りまいている」と思われるだけだ。
納得がいかない。
断酒薬の作用で吐き気が起こっても知ったことか。
従順に従っていたにもかかわらず、この扱い。
面白くない。
単純にそう思った。
飲まなければやってられないわけではないが、周囲の対応が気に入らないのだ。
どうでもいい話だからと、ほっておいてなるものか。
自分の頑張りを否定されて、腹が立たない連中はいないだろう。
少なくとも、自分はそう思った。




