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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就職活動開始期
58/127

土筆採り

 外はまだ、肌寒い。

 今日の施設活動は、土筆採りだった。

 施設は、わりと田舎にある。

 だから、歩いていける場所には田畑が広がっている。

 草の枯れた畦道を、下を見ながら散策すれば、そこには土筆がいっぱいだった。

 活動時間という制限はあるが、三十分もあれば、数日は腹を満たすことが出来るだろう。

 さっそく見つけた土筆を、鉛筆を握るようにして、根元をつかみ、引っ張り上げる。

 なにより今日の活動で採った土筆は、持ち帰りを許されている。

 食糧採り放題だ。

 黙々と、採りつづけるだけだ。

 他の施設利用者は、和気あいあいとした空気のなか、話をしながら土筆を採っている。

 だが自分は違う。

 なんというか、殺気立っているのだ。

 自分でもわかる。

 かけるに足る労力だとわかっているからこそ、俄然やる気になろうという物だ。

 春を楽しむ、というテーマが掲げられていたが、それは食でも同じこと。

 味覚で春を楽しんでもいいじゃないか。

 それに自分は昔から、食べ物としての土筆を含む山菜類は大好きだ。

 土筆に限らず、ツワブキやふきのとうなどと言った山菜類は、子供の頃から、好きだ。

 あの苦味が良いのだ。

 卵とじもいいが、個人的にはおひたしか、吸い物に入れるのが美味しいと思う。

 気が付けば、他者の三倍も採っていた。

 一人だけ、ビニール袋を一杯にしていたのには自分でも苦笑するしかなかった。

 

 さて、アパートに帰ると、少なからぬ苦行が発生した。

 袴を取る作業だ。

 なにせ数が多い。

 しかしこれは貴重な栄養源であり、糧なのだ。

 黙々と、ただ黙々と、二時間くらいの時間をかけて袴を取りつづける。

 幸いまだ土筆の頭は閉じており、濃厚な春の味を楽しめる。

 施設の周りとはいえ、田舎ならでは、だ。

 こんなに大量の土筆を、タダで手に入れることが出来るのは。

 これがスーパーに並べば、一掴み百円ほどもするのだから、都会は恐ろしい。

 下ごしらえが終われば、次は茹でる。

 茹で上がりを食べる。

 自分は、あく抜きをやらずにそのまま食べる派だ。

 そちらのほうが苦みが残り、大変心地よいからだ。

 酒が欲しくなる味だ。

 だが、生憎と酒は無い。

 しかしそれこそ、このまま食べ尽くしてしまいたいくらいだ。

 まあ、そんな勿体ない事は現実にはしない。

 明日の朝食べる分は残して、あとは小分けにして冷凍する。

 確かに数日は食卓をにぎわせるほどの量がある土筆だが、せめてゴールデンウィークくらいまでは美味しく頂きたいと考えるのも人情である。

 これがツワブキなら、醤油でじっくり煮込んでから冷凍するところだが、土筆は茹でるだけに留める。

 土筆は、練りごまを醤油とみりんで溶いたものをかけてから頂くのが、個人的にはお勧めだ。

 無論、醤油だけで頂くのも良い。

 卵とじは採ってきたその日しか味わえない良さがあるが、生憎と卵を切らしていたため、今年は諦めることにした。


 思えば実家にいたころは、毎年土筆採りをしていたものだ。

 昼間からビニール袋片手に畦道を徘徊していたら、職務質問を受けたこともある。

 まあ、中身を見せれば何事もなく解放されたのだが。

 そういえば、実家の庭にはタラの木を植えていたが、今頃どうなっているだろう。

 毎年のこぎりで切り、芽を吹かせ、天ぷらとおひたしにして食べていた。

 この時期、アパートには緑が無い。

 ベランダに、プランターは置いている。

 時期になれば、プランターにはオクラが三本植えつけられることだろう。

 黄色の花を楽しめ、食べられるものを植え、そしておいしく頂く。

 もうすぐ春。

 植物が活気づく時期が迫っている。

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