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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就職活動開始期
49/127

胃具合が悪い

 体調悪化極まれり、だ。

 起きた瞬間から、体調が悪かった。

 飲酒をしていなくても、胃袋がひっくり返りそうなくらいの吐き気に襲われる。

 施設では飲酒を疑われたが、生憎と飲んではいない。

 目まいがするし、視界が揺れる。

 酒に飲まれてこうなるのなら自業自得と言えるが、原因不明で問答無用の吐き気が来るのは腹が立つ。

 腹を掻っ捌いて、内容物を掻き出したいくらいだ。

 月末は、施設を休むわけにはいかない。

 休めば、食べられる場が失われてしまうのだ。

 飢えを馬鹿にしてはいけない、服を着られないのはどうってことは無い。

 住処を追われるのも、今の日本だ。

 軒先は腐るほどある。

 ところが、食糧は有限だ。

 おまけに、衣住と違って、食は消費するものなのだ。

 

 水は、公園の水でも事足りるのだが、食糧はままならない。

 飢えと寒さは、味わってみなければわかるまい。

 何度でも繰り返してしまうくらい、この二つを充足させるのは難しいのだ。

 

 腹具合が悪いから、食べなくていいだろうという話ではない。

 目まいも歯を食いしばっていれば治るだろうという話ではない。

 食いしばるにも、力が要るのだ。

 耐えるというこの行為、慣れてしまえばいいという訳ではない。

 慣れてしまってもいい、という話でもない。

 これは欲、だろうか。

 欲、でも構わない。

 生き残るには、綺麗事だけではいられないのだ。


 施設で供される食糧は、こともあろうに、カレーだった。

 自分には辛くて耐えられない。

 それでも、食べなければならない。

 症状は悪化した、悪化したが、それでも飢えるよりは何倍もマシだ。

 胃が痛む、重たい感じがする、人参が胃の中でゴロゴロする。

 朝よりは回復してきたのか、戻すようなことは無かった。

 していたかどうかはわからないが、変な口臭は収まっただろう。

 カレーくさいほうがまだマシだろうから。

 

 しかし、体調が悪いからと言って、いくら前科があるとはいえ、アルコール検知器をスタッフに持ってこられたのは苦笑するしかなかった。

 二日酔いのそれに似た症状を出していたのだから、仕方がないとはいえる。

 いえるが、原因が酒と決めつけられるのも気分が悪い。

 自業自得、それは認める。

 そうとはいえ、今回は違っていたのだ。


 今もまだ、胃の具合は悪い。

 戻しそうな感覚はまだ続いている。

 もういっそのこと、胃袋を酒で満たして抑え込む、頭の悪い逆説的アプローチをとってしまいたい。

 ウドやセリを食べたいな。

 幼かった頃は、近くの川辺にビニール袋一杯、土筆を取って帰ってきたものだ。

 懐かしい、郷愁というものか。

 里山を走る小さな沢のそばに、セリと一緒にクレソンが群生していた。

 懐かしい光景だ。


 こちらでは、どれもこれも、買うものだ。

 田舎がどれだけ恵まれていたのか、そう思わずにはいられない。

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