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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就職活動開始期
47/127

たかが風邪にも勝てず

 この一週間、寒暖の差が激しすぎたためか体調を崩した。

 もう若くないな、と、風邪をひくたびに自覚する。

 幸いインフルエンザではないので、独りで熱に耐えるしかない。

 施設に行かない日というのは、暇なものだ。

 掃除をしようかと思ったが、この体調だ。

 なんともままならない。

 幸か不幸か、今回の風邪で食欲が減衰することは無いらしく、買物に出なければならない。

 これが、なんともままならない。

 なによりなにより、月末だ。

 生活保護費に余力はない。

 具体的に言えば、千五百円しかない。

 月内予算の内で処理してしまう習慣を崩せば、一気に歯止めが効かなくなりそうで、怖いのだ。


 手持ちで栄養価の高いものと言えば、施設のゲーム大会で入賞したときにもらったドリンク剤が三本だ。

 それと、買い占めてきた半額弁当。

 この半額弁当は、一日当たりの定数を一つとすれば、日曜までしのぎ切れる計算だった。

 だった、ということは、今回の風邪のため、二つほど余計に消費しなければならない、ということだ。

 その他手持ちの食料品、蕎麦とパスタが、はたして風邪に効くか。

 確かに腹は満ちるだろう、だが、効用効能としては難しいと言わざるを得ないだろう。


 どこぞのバラエティ番組のように「蕎麦が体にいい!」なんて奴は、平時の健康維持について語っているものであり、有事の際には効果は限定される。

 なにより、自分はその手の番組を信じていない。

 そこらに植えてある街路樹の樹皮を煮出したモノだって、連中の弁舌にかかれば肝臓だか腎臓だかに効果が「期待できる(=効くとは言っていない)」有り難い代物に変貌するのだから。

 だからと言って、せっかく漬け上がったザワークラウトを消費し尽くすのは、あまりにも勿体ない話だ。

 追加で漬けようにも、風邪のウイルスと一緒に漬け込むのはあまり良い選択ではなさそうだ、と感じる。


 そしてこれは、自身内部での葛藤として、だが。

 病院にかかることはできる。

 できても、流石に連日点滴を受けに行くのは気が引ける。

 制度上利用可能だが、それはどうだろうという話だ。

 受益する権利は有するが、行使するとなると心の問題にぶち当たる。

 病院併設型という性質上、風邪を引いた状態では利用を咎められる。


 自分は、怠けたいから今の立場にいるものではない。

 これだけは、断言しておきたい。

 生活保護者、とくに精神障碍者手帳持ちの人間に対して、社会にどうしてほしいか、と問われれば、答えは簡単だ。

 自分のような人間も安心して働け、家庭を持てるような、仕事を斡旋してほしい。

 こんな簡単なことすら、叶わない。

 健常者ですら、叶っていないのだ。

 健常者より弱い立場に身を置くものが、勝てるはずもない。

 普通のやり方では勝てない戦いに挑むため、生活保護や、施設などの後ろ盾を活用するしかないのだ。


 風邪をひくたび、体調を崩すたびに、この自問自答に突き当たっている気がする。

 暇は酒のようなものだ、と思う。

 適度な暇は大変心地よいが、過ぎれば心の安定を崩し、苦しむに至る。

 自分は運よく、現在通所している施設を見つけられたので、まだマシだ。

 相談に乗ってくれる公的機関や資格保有者が、周囲に多数いるのだから。

 その中で、就労支援施設の存在を知り、これからソーシャルワーカーと一緒にどの施設が良いかを探そうとしている矢先の風邪。

 施設見学のスケジュールが流れてしまったのが、今回は、歯がゆい。

 自分に腹が立つ。

 どうして、前に進もうと動いているのにこんな目に遭うのか。

 自分が弱いのがいかんのだ、という考えが、やはり突出してしまう。

 これが性分なのだが、それはならぬと手綱を引かれているのが現状だ。

 もどかしい、なんとも、もどかしい限りだ。

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