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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就職活動開始期
43/127

あがく

 障碍者就労支援施設の見学に行ってきた。

 所謂授産施設ではなく、本格的な社会復帰を目的とした施設だ。

 感想としては、良くも悪くも、思い描いていた姿とは違った、ということだろうか。

 仕事が辛くないわけはない。

 これは、自分の思い込みだろう。

 だが、それを差し引いても、今日見学に行った就労支援施設はユルかった。

 もちろん、今の施設よりは規律や休養の面において、厳しい部分はある。

 あるが、それでも想定よりはるかにふんわりしていた。


 ソーシャルワーカーや見学先の職員にその旨を話した。

 すると、心底憐れんだ目で見られた。

 ブラック企業と呼ばれるものの体質に染まりきってしまっている、と断言された。

 自分は、自分の道しか知らない。

 その言葉に、理解を示す節はままある。

 生きるために、必死だった。

 いいように使い潰された人生、つまりはそういうことを言われたわけだ。

 生活保護になって初めて、ゆっくりのんびり、自分のペースで生きて構わないことを知らされた面は、多々ある。

 ままあり、多々あり、詮方も無し。

 仕事をするということは、命のやり取りに等しい、とまで思い詰めて生きてきたのだ。

 ところが、社会一般ではそういうものでもないらしい。

 自身の働き方に対する考え自体を改めねばならないのだな、と思った。


 就労支援施設のカリキュラムは、説明を聞くだに、今の施設と同程度の部類で柔らかい。

 午前十時に出所し、午後三時に退所する。

 移動時間や睡眠時間で考えれば、支援施設のほうが二時間も楽だ。

 現在の施設には、午前七時半に起床して準備をし、午後三時半に退所・送迎バスに約一時間揺られる行程だ。

 やる内容こそ違えど、睡眠時間の削られ具合は、一時間半も違う。

 

 ソーシャルワーカーは、あと二件ほど就労支援施設を廻って、合う場所を見つけてほしいと語っていた。

 自分も、その見解に大いに賛成するものである。

 楽が嫌い、という訳ではない、ここで楽をしても意味が無いどころか、その後に繋がらないと思ったからだ。

 施設はあくまで経過・過程だ。

 そこで手を抜いてどうしろというのか。

 自堕落な生活に慣れろ、とでもいうのか、冗談じゃない。

 確かに、生活保護の範囲内で生き延びることは充分可能であることは、理解している。

 だからと言って、そこに座して、それを良しとする気分にはならない。

 

 恥、だ。

 今更何を恥じるのか、と言われようが、これは心情の問題だ。

 本来なら寛解するまでゆっくりすべきであろう、だが、時間は残酷だ。

 等しく皆を老いさせる。

 良い老い方もあれば、悪い老い方もある。

 悪い老い方、つまり、碌に定職にもつかず、好き勝手放題やって、周りに迷惑をばらまいて死んでいく。

 これは、望む将来設計ではない。

 じゃあ良い老い方はなんだ、と聞かれても、答えに窮する。

 良いものの大半は、普通だとか平凡だとか言われるものなのだから。

 今更有名になろう、だとか、英雄になろう、だとか、そういった欲は持ち合わせてはいない。

 普通を求めているのだ。

 ところが、その普通が、手を伸ばしても届きそうにない。

 今の自分には遠すぎる。

 

 就労支援施設を探す。

 職を見つける。

 難しい話だ。

 だからと言って尻込みしているわけにもいかない。

 施設通いから抜け出すのが、大事なことだ。

 かせぎは、それは多いに越したことは無い。

 だが、今はなにより、一歩を踏みしめていくことに尽きる。

 

 仕事に楽しさや満足感を求める段階ではない、生き残る事がすべてなのだ。

 何かあれば、進んで命綱から手を放して落下していくであろう心象風景を抱えていても。

 それでも自分は、面倒くさくても生きなければならない。

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