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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
第一次活動期
25/127

制空力と制圧力

無様ですね

 自分は、日本の技術力とインドネシア(タグを見て確認した)の工業力を見くびっていたのかもしれない。

 ホットカーペットの性能に戦慄した。

 エアコンのあたたかさ上昇率がレシプロ機なら、ホットカーペットのそれはジェット機だ。

 様子見で中間出力に調整し、電源を入れた。

 するとどうしたことか、モノの数分で胡坐をかいた部分が温かいのだ。

 ほかの部分に手を当ててみると、そこも温かい。

 布団の下の部分なんか、春先のような快適さだ。

 さっそく敷布団にもぐりこむと、これがまた、心地よい。

 嗚呼、何故自分はこんないいものを持ち合わせながら軽視していたのか。

 使わなければ損ではないか。

 そうなると気になるのは、一つ。

 電気代、これだ。

 意気揚々とエアコンとホットカーペットの電気代を検索する。


 ランニングコストで考えると、ホットカーペットのほうが、エアコンより高かった。


 なるほど、確かにこいつはジェット機だ。

 燃費のほうも相応ということなのか。

 参った、これはうかつに使えない。

 そもそもこれを買ったのは仕事をしていた頃の話で、電気代とかをシビアに計算していなかった頃の産物だ。

 ええい、忌々しい。

 危うく両方同時に全力で使って、電気代に悲鳴を上げるところだったではないか。

 しかし、検索で出てきたサイトにあったアドバイスを見て、理解する。

 長時間室内にいるときはエアコン、朝の忙しい時間だけ暖を取りたいならホットカーペットがオススメ。

 つまり、使いどころを考えてやればいいわけだ。

 例えばエアコンで室内が暖まるまでの間、ホットカーペットを活用するとか。

 施設に行く準備をする間はホットカーペットに頼るとか。

 航空機でいくら攻撃しても、歩兵が居なければその地域を制圧したとは言えないというアレに近い話なのだ。

 ホットカーペットが制空権なら、エアコンは制圧力といったところか。

 だが、うっかりつけっぱなしで出かけてしまったら目も当てられないわけだが。

 

 納得すると同時に、やる気をなくす。

 まあ、明日も日曜日で施設はやってないし、今日はいいかな、と。

 エアコンのリモコンには手を伸ばさず。

 テレビの電源を落とし。

 パソコンの電源を落とし。

 おもむろにホットカーペットの電源を切り。

 布団にもぐりこむ。

 起き抜けの暖かさが残る布団、これこそ現段階においては至高の存在だ。

 今頃受験生たちは、センター試験を前に緊張している頃だろう。

 我が国の将来のため、存分にその実力を発揮して頂きたい。

 自分は、布団で暖を取る。


 ……暖を取るどころか、二度寝してしまった。

 睡眠導入剤に頼らず寝られたのはいつぶりだろう、と、そんなことを思いながら時計を見る。

 針はもう、午後五時を回っていた。

 もうこうなれば、笑うしかない。

 丸一日、無駄にしてしまったわけだ。

 ホットカーペットの電気代、それを知った、ただ、それだけの事のために。

 よかった探しをすれば、昼飯一食分が浮いた、というくらいのものか。

 しかし、覚えてしまった快楽は忘れられない。

 おもむろに、ホットカーペットとエアコンのスイッチを入れる。

 そう簡単には寝付けないだろうから、今日は室温をあげなければならない。

 それから、時間帯的にまだセーフなので洗濯機を回す。

 こればかりは今日やっておかないと、月曜日がシャレにならない。

 あと、今日明日で発生するエアコン温風の有効活用も織り込んでの判断だ。


 だらけているな、と心底思う。

 仕事をしていた頃なら、考えられない怠惰具合だ。

 掃除が苦手なのは、認めよう。

 案件ごとの山を作って、それで何とか回していくので手一杯だったころからの悪習だ。

 だが、二度寝で七時間というのは、よほど疲弊していない限りなかったことだ。

 施設はそんなに激務か?

 そんなことは無い、むしろユルすぎて未だに不安、いや、就労段階に入った今では焦りすら感じさせることのある場所だ。

 他方、焦っただけ仕事に就けるなら楽なことは無い、との諦念もある。

 ひとまず、今日やり損ねたことは明日やろう。

 目の前を、確実に片付けるしか、今の自分にできることは無いのだから。

寝すぎてかえって眠い

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