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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
赤貧期
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追いかけてきてくれる過去

カネと運には見放されてますが、友人たちの優しさは誇れます。

 相変わらず、年末からずっと孤独な時を過ごしている。

 施設の年始開所が十日からだからだ。

 喋る相手もいなければ、花札の相手もいない暮らし。

 普段は観もしないテレビをつけっぱなし、パソコンをいじるだけの暮らし。

 結局、お宮参りは近所の小さな神社ひとつしか行かなかった。

 人ごみというか、人間が嫌いなのだ。

 そのくせ孤独が堪えるなんて弱音を吐いているのだから、始末に負えない話だ。

 飯も、四日からはいつもの半額弁当に戻った。

 賞味期限の都合で半額シールが付いたおせちの余りが一品追加されている、まあ、ちょっとした贅沢だ。

 なんだかんだ言って、安さは正義だ。

 味は二の次、量があるということはおいしいということだ。


 友人たちとの飲み会は、一件だけあった。

 店は、自分のかつての常連店。

 個人経営だが鯨づくしの、度胸気概のある店で、カネがありできることなら月一で通いたいくらいのもの。

 いや、通っていたお気に入りだ。

 四人集まり、妻帯者は二人。

 自分ともう一人は、この分だと一生独身だろう。

 わかっているのだ、自分が結婚には向いていないことが。

 技術革新にすらついていけないロートルが、日に日に変わる女心をつかめるはずもない。

 それに、弟が結婚していて、既に甥っ子もいる。

 家が絶えることは無いのだから、それでいいじゃないか。

 両親は健在だが、特に父親との関係は劣悪で、よく喧嘩では刃物が飛び出す間柄だ。

 長期の帰省は諦めざるを得なかった。


 そんな中、大学時代の友人が電話をかけてきてくれた。

 生存確認だと言っていたが、素直にうれしかった。

 学生時代は、良く馬鹿なことをしたものだ。

 大学創立者の銅像の前で連日のように車座になり、大宴会を繰り広げた。

 ビールで磨くことにより、銅像の輝きを取り戻したりもしたものだ。

 二月になったら、この友人に久しぶりに会いに行こうと思う。

 どん底の自分に気をかけてくれる人が居るのは、嬉しい。

 割と大きな出費になるが、昔を懐かしむ場を設けてくれるのだから。

 

 電話越しだが、会話は弾んだ。

 しかし時間は残酷だ。

 妻帯者になっている彼と、面と向かった時に何を話せばいいのだろう。

 彼には、生活保護になっていることを教えている。

 そこをいじられるのは、苦にならない。

 その話題だけでも構わない、昔を知る人物と、久しぶりに面と向かって話をするのはいいことだ。

 飲み会もそうだが、どんどん変わっていく周囲と、置き去りにされたままの自分との距離感を補正するようなものだ。


 手近な孤独対策として、施設の再開が待ち遠しい。

 何もやることが無く、布団の中でぐねぐねごろごろするだけの生活には飽きた。

 昼間は毎日カップめんというのにも、いい加減飽きてきた。

 飽きたものづくしだ。

 二月の『非日常」も待ち遠しいが、それよりもはやく「みんな」に会って、「日常」に帰っていきたい。

 自分は、人間が嫌いだ。

 そんな自分でも、居場所を提供してくれる人たち、心配して声をかけてくれる人たちの存在はうれしいものだ。

 それに、施設が開所すれば、いよいよ就職活動が開始できる。

 

 明日への一歩。

 これまでの小さな一歩の積み重ね。

 馬鹿にされてても、いい。

 気にかけてくれる人が居ることが、嬉しかった。

孤独になれるなんてことはないみたいです。

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