表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
110/127

思うようにはいかず。

 もう、大掃除の時期がきている。

 毎年のことながら、やらねばと思いはするのだが体がついて行かない。

 おかげで家具の天板は白い層が出来ており、その箇所の多さに辟易して、行き足が止まってしまう。

 この部屋は、狭い。

 布団をあげようにも、クローゼットが狭い。

 おかげで掃除機をかけるタイミングも、月に一度あるかどうかだ。

 フローリングも想像以上に汚く、カリカリに乾いたご飯粒を踏んづけて嫌な気持ちになってしまう。


 特に今年は、やる気がそがれている。

 あの糞ジジイとの係争は続いており、いまいち心休まらない。

 一応刑事訴訟の方は年内で判決が出るらしい。

 今の自分はただの復讐鬼、採算度外視だ。

 そもそも慰謝料が入ってくるとなれば、生活保護費の返納など、面倒くさいことになりかねない。

 一般的な訴訟なら、まずは示談を模索、それから刑事に移るという話らしいのだが、国選弁護人に言わせれば「無欲すぎる」被害者と映って仕方がないそうだ。

 相手の糞ジジイも、とんだババを引いたものだ。

 まあもっとも、カネだけで世の中うまく渡れないというのを、身をもって知るにはちょうどよかったのかもしれない。

 拘置所暮らしなんてめったに出来ない経験なのだから、精いっぱい楽しんでほしい。

 保釈も出来そうなものなのだが、それが成された形跡が無いところをみると、親族内でもそうとうな鼻つまみ者だったのだろう。

 見捨てられるとは、哀れなものだ。

 自分もああはならないよう、お行儀よく生きていきたいものだ。


 さて、それはひとまず置くとして。

 面接を受けにはいっているものの、一向に採用の通知が来ない。

 三連敗中だ。

 自分を商品に例えてプレゼンするつもりでやっているが、なんともしっくりとこない。

 前も語ったかもしれないが、自分の売りが皆目見当もつかない。

 そもそも正直なところ、志望動機なんていう美辞麗句を並べ立てることができないのだ。

 代わりに、ダメなところならいくらでも捻出することができる。

 生活保護を受けている点。

 精神を病んでしまっている点。

 年齢的に厳しい点。

 記憶力がそこまで良い方ではない点。

 ぱっと並べるだけで、これだけの事が思いつく。

 さらには、人に触れられるのが苦手だとか、人見知りが激しい(ただし、心を開ける相手だとわかったら何も隠さない)だとか、デメリットはいくらでも、だ。


 フリーランスでやってきたからこそなのだろうが、成功よりも失敗を恐れるきらいが強いのだ。

 最悪想定を念頭に置き、妥協点を見いだせたら首を縦に振る。

 なんとまあ、商売人に向かない性格だろう。

 そんな奴でも、十数年生きてきたのだ。

 ネット普及の黎明期から安定期までは、IT事業のなんとぬるかったことか。

 まず第一に、在庫を抱えなくて済むのだ。

 続いて、機材は揃いさえすれば五年単位で出費を要しない。

 休みは自由だし、がっつかなければ喰いっぱぐれる心配もなかった。

 Flash技術が業界的に死んでしまった今となっては、昔の光、今いずこ、だが、独り身を食いつなぐには十分すぎる稼ぎがあった。

 ITは、常に技術についていく向上心が必要だったし、習熟に対するコストも必要だった。

 だが、本格的に病んでしまった今となっては、向上心も熱意も、どこにもありはしない。

 過去の栄光にすがる、醜い老人だ。


 こういった心の滓を抜いてしまえるのだろうか。

 来年の一年間は、就職先が決まるのはもちろんのことだが、心の澱みを奇麗にしよう。

 もっとも、すぐに綺麗にはならない。

 裁判だの示談だのが終わってからの話だ。

 時間は無常だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ