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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
107/127

 この一週間は、さながら電撃戦の様相を呈した。

 志望した会社に履歴書を送ったのが月曜日の夕方。

 その会社から、面接のスケジュールを問い合わせる電話があったのが、火曜日の午後。

 提示された面接日は、水曜日、それと金曜日。

 水曜日は、流石に無理だった。

 心の準備ができていなさすぎるし、同行してくれる就労移行支援施設のスタッフのスケジュールが空かなかった。

 第一、昨日の今日で明日に面接とか、普通ありえないスケジュールだ。

 なので、金曜日と答えた。

 書類選考を重視しないという話は聞いていたが、まさかここまでフットワークの軽い企業だとは……。

 追い付くのに精いっぱいだった。


 その間にやれたことはと言えば、スタッフにお願いしての模擬面接の反復練習くらいのものだ。

 他に何をやれというのか。

 模擬面接で指摘されたことは、働いていた頃の口癖「まあ」「ちなみに」を減らすことと、目線を合わせすぎないこと。

 一日や二日でどうこうできる問題ではない点を注意点として挙げられてしまったのでは、話にならない。

 ちなみに、は、打ち合わせに行った先の担当者から情報を聞き出すために多用していた単語。

 まあ、は、明確には確定できないであろうスケジュールを聞かれた際、逃げの一手として使っていた単語。

 目線を合わせまくるのは、威圧感を出すことによって、クライアントが無茶な納期を言い出すのを未然に防ぐためのテクニック。

 仕事の場で培ってきた癖をプレーンに戻せ、今すぐに、と言われても、正直困る。

 この時点で木曜日。

 翌日には決戦が迫っている。

 面接の想定問答を渡されたので、解答を埋め、うすぼんやりながらも暗記するくらいしか、誰も対抗策を捻りだせなかった。


 そして、さしたる準備もできないまま、実戦がはじまる。


 〇九五〇 志望先企業が入るビルのエントランスにて、施設スタッフと合流

 〇九五五 志望先企業へ赴き、面接官に挨拶

 一〇〇〇 面接開始かと思いきや、提示された書類に、必要事項を記入開始

 一〇一〇 記入終了、面接開始


 同行していたスタッフ曰く、ガチガチに緊張していたようだが、個人的には臆することなく面接に挑めたように思える。

 確かに開始当初は気が張り詰めていたが、持ち込んでいた制作成果物を提示すると、そこから局面ががらりと変わった。

 制作成果物の現物を見せ、話の流れをこちらに持ち込むのは、フリーランス故の切り札だ。

 もっとも、面接自体がほぼ初めての体験なので、これが正しい答えだとは思えないが。

 そもそもどんなことをしてきましたか、と問われても、口頭で説明するのは難しい。

 だから、やってきた実績を視覚的効果に訴えかけた。

 そこから話が弾むようになった。

 面接官とは大学の先輩後輩の関係にあるだとか、制作物に記載された内容についてだとか、雑談的な要素も入ってきた。

 このペースならいける、と思ったが、話はここで終わらなかった。


 一一〇〇 いきなり筆記試験を行う旨を告げられる


 聞いていない話だった。

 同行してくれた施設スタッフに問うような眼を向けてみたが、これは想定外だったらしく、慌てているようだった。

 ここまで来て、これか。

 それと同時にスタッフは、次の予定にバッティングするから、と、その場から退散していく。

 なんだそりゃ、同行してきた意味はあるのか?

 もやもやするものがあったが仕方がない。

 ここからは一騎打ち、というより学生時代の期末テストのノリだ。

 問題は三種類。

 読解力・計算能力・倫理。

 この三つのカテゴリを、各十五分で次々に解いていく形式だ。

 読解力は、なんとかなった。

 伊達にライティングも仕事にしてきたわけではない。

 だが、数学と倫理、これは歯が立たなかった。

 数字の一部が伏せられた数式が二つ並んでおり、その法則性から数字を選び出せ、なんていう問題を出されても、答えられない。

 計算能力は、全問に目を通すことすらかなわなかった。

 倫理はもっと凶悪で、図形や数列から法則性を見いだせ、みたいな内容だった。

 当然こちらも、最後まで目を通せなかった。


 あはは、終わった。

 落ちたわ、これ。

 口には出さないが、態度には露骨に出ていたことだろう。


 一二〇〇 面接終了、退出

 

 その足で、就労移行支援施設に向かう。

 同行していたスタッフは先に戻ってきており、どうでしたかと聞いてくるが、どうもこうも、だ。

 面接を横で見ていた感想をフィードバックして来週お渡ししますと言われたが、その前に立ちはだかるのは、圧倒的な虚無感だ。

 次の面接先を、すぐにでも探し始めなければならないだろう。

 ここは、恐らく落ちた。

 となると、次弾装填だ。

 止まってはいられない。


 とにかく前へ進むしかない。

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