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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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次弾装填

 さあ、次だ。

 次の求人情報をむさぼるように漁っていた。

 そして、待遇の良さそうなところを見つけた。

 履歴書や自己PR文章を、再度書き直した。

 スタッフにも目を通してもらい、修正点を洗い出してもらった。

 今回応募するところは、書類選考でのふるい落としは無い。

 いきなりの面接となるそうだ。


 その実、自分は面接というものを体験したことは数えるほどしかない。

 二十年以上前のバイトの面接くらいのものだろうか。

 クライアントの担当との打ち合わせとは、空気が違うだろう。

 なにより今回、売り込むのは「自分自身」という商品だ。

 これ自体になんの価値も見出していない自分が、自分を知らない他人に売り込みをかけようというのだから滑稽な話だ。


 試しに、スタッフに模擬面接をお願いしてやってみた。

 結果は散々なものだった。

 模擬だというのに、ガチガチに緊張している。

 想定問答に対する答えは出てこない。

 今までは出来ていたはずの、普通のお辞儀やマナーすら、頭から飛んでしまう。

 ああ、これがブランクか、と、戦慄する。

 それ以前に自分の場合、ビジネスマナー自体が我流なため不安も大きいのだが、そこは今更言っても仕方のない話だ。

 ただ一つ、実戦時に普段の感じを出せるかどうかは賭けだ。

 賭けに勝つしかない、ただそれまでの話だ。


 仕事で漁師さんたちとやり取りした時より張りつめているのは、我ながらどうかと思う。

 漁師さんたちの話題の振り方というか話口上は、独特なのだ。

 下品なネタを振ってきたかと思いきや、話題の根幹にいきなり踏み込んでくる。

 網の調子というのだろうか、緩急の差が激しいため、油断すると相当な譲歩を持っていかれることもある。

 腕力を誇示するものもあれば、大卒の御仁も居たりと、相手ごとにその性質は千差万別。

 何度話しても、その都度機嫌が違い、機嫌次第で商談の進みに関わってくる。

 それに、その、なんというか。

 相性の合う人間が少なかった。

 相性の合う漁師さんとは、今でもやり取りをしているが、そうでない人はとことん合わなかった。

 そう考えると、面接も似たようなものか。


 思ってはみても、緊張はほぐれない。

 履歴書で戦っても負け、いきなりの面接でも負けたらどうしよう。

 心中は不安しか湧いてこない。

 戦う前から相手に飲まれるなど、働けていた頃にはあまりなかった。

 思えばあの頃の自分は、自信に満ち溢れ、半ば傲慢なところすらあった。

 それが、今ではどうだ。

 すっかり丸くなってしまっているではないか。

 ああ、やはりブランクは恐ろしい、と、愕然とする。


 まずは履歴書を送るところから始まる。

 それから、面接のスケジュールが決まる。

 決まる前から、送る前から、緊張している。

 落ち着け、失敗したからといって殺されることは無いだろう。

 社会復帰が少し遅れるだけの話だ、それも嫌な話だが。

 もう一度、履歴書を精査する。

 一日置いて、もう一度、スタッフに見てもらう。

 それから、履歴書の送付だ。

 次弾装填、準備良し。

 撃ち方はじめを、ひたすらに、待つ。

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