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しせつのはなしとせいかつのほご  作者: 鹿家加布里
就労移行支援施設期
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前へ、前へ、前へ

 企業説明会に参加した。

 就職活動としては、初陣である。

 内容は、単調なものであった。

 企業の福利厚生や作業内容の説明が、パワーポイントで垂れ流される。

 よくあるプレゼンの光景である。

 あくびをするわけにもいかず、企業の担当者からの説明を、メモを取る振りをしながら右から左に聞き流す時間だった。

 自分は最前列右端、先方がプロジェクタを操作する場所が事前に割り当てられており、最も真面目さと正直さ、勤勉さをアピールできる場所に陣取っていた。

 眠たそうにも、けだるそうにも出来ないことは苦しい。

 

 説明会の参加者の多くは二十代から三十代。

 自分のような四十代のおっさんは絶無である。

 だからこそ、余計につらさがある。

 採用実績がプロジェクタでスクリーンに投影される。

 四十代から六十代は、お情け程度に一名ずつ、計三名しかいない現実を突きつけられる。

 就職氷河期の走りである世代である自分にとって、これは無慈悲に過ぎるというもの。

 諦めのほうが先に出てしまうのもむべなしと言ったところだ。


 だが、自分はここに応募することを決めた。

 何故か。

 ここでもまた、意志を強くしたのは、食料面だった。

 昼食が、この会社は無料でふるまわれる。

 食費が浮くのであれば、それは天国だ。

 自衛隊の人々が薄給でも裕福に過ごせるのは、ひとえに食料が供給される点が挙げられる。

 ああ、またしても食べ物につられているな、と思わないでもない。

 しかしながら、この界隈の定食屋は、一食当たり安くても七百円は軽く越えてくる。

 その負担が無い、それだけで給与水準が上がるのだ。


 ただし、待遇は契約社員。

 退職金は出ない。

 出ないが、その分は食料が前倒しで賄ってくれると考えれば、どうだろう。

 食料への執着は、自分にとっては凄まじいものがある。

 服は、襟がよれよれに潰れ、左肩に大穴があいたTシャツで充分だ、現に今もそれを着ている。

 住居も、生活保護とはいえ、しっかりしたものがある。

 しかし、食料は短期的食料品だ。

 これの安定供給は、最も困難だ。

 毎日カップめんでは、またしても栄養失調で倒れてしまうだろう。

 朝はコメを一合だけ、昼はカップめん、夜は二割引き弁当。

 そして、ときどきのアボカド。

 断じて健康的な食生活ではない。

 

 提示された給与は、決して高いものではない。

 下手をすると、生活保護か、それ以下の水準だ。

 だから働かない。

 それも選択肢だ。

 だが、自分は生活保護のようなぬるま湯は嫌だ。

 腐っていく感じがして、とにかく嫌なのだ。

 デイケアサービスといい、就労移行支援施設といい、探し当てられなかったら、どうなっていただろう。

 確かに、精神障碍者ではある。

 生活保護受給者でもある。

 重ね重ね、繰り返しになってしまうが。

 だからと言って、座して待つつもりは無い。

 自分は、働きたい。

 この現状でも、ネットは使え、ケーブルテレビに契約は出来、スマホを使える。

 いい生活をしているな、と思う。

 だが、それは何か違うと思うのだ。

 贅沢をし過ぎている気がしてならないのだ。

 だから、前へ、もっと前へ。

 最初のうちは、生活保護と併用で行くしかないかもしれない。

 だが、いつかは自立したい。

 だから、再起を狙う。

 難しい話だとしても、座して死するを、自分が良しとできないのだ。

 前へ、前へ、前へ。

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