放課後
社会が閉塞してくると変な事を思いつく奴がいる。
平成32年、若年層の労働意欲の低下、少子高齢化の進行、これらに伴う消費意欲の衰退を打破すべく施行された「就業時間短縮及び終業後活動充実法」により、企業は就業時間を短くする事が義務付けられる一方、労働者は就業時間終了後、一定時間、職場にて業務以外の活動を義務付けられた。いわゆる「放課後法」のである。
業務以外の活動という事、あくまでも労働者の義務である事から、企業側は活動内容を指示する事は出来ず、労働者の自主性に任される事となったため、スポーツを通して互いを切磋琢磨する「体育会系」や、学業などの自己啓発をおこなう「文科系」、スポーツなどを含め気の合う仲間で集まる「サークル」、たただひたすら拘束時間が終わるのをまつ「帰宅部」といっった形で、人々は終業後の下校ならず下社の時間までを過ごすようになった。
キーンコーンカーンコーン。
放課後法の施行から多くの企業で、半分は行政への嫌味を込めて終業の時間に合わせて学校のチャイムを模した合図を鳴らすようになった。終業後の一定時間の活動が義務付けられているため、残業をするものは、ほぼいなくなった。残業をしても、その後、一定時間何かをしなければならないとなれば、業務にどんな影響があろうと、残業はしないという風潮は施行から1ヶ月もしないうちに定着し、ある程度のサービス残業に支えられていた経済活動は急速に停滞した。
放課後法から派生する問題点は他にも様々ある。
各社の放課後がだいたい重なるため、下社時のラッシュが朝のラッシュ並となった事。
交通機関の混乱は二酸化炭素の排出量増加につながった。
放課後の時間を利用し社内恋愛が増えた事により婚姻の平均年齢が下がったのは良いのだが、不倫も増え、離婚率が急激に上昇した。
会社の上下関係よりも、放課後の先輩後輩関係が強くなり、会社運営に支障をきたす自体になった事。
放課後法で保護される労働者に含まれない経営者は、「先生」と呼ばれるようになり、労働者との対立が生まれ、トイレでタバコを吸ったり、盗んだバイクで走り出したりするようになった……
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「こいつら馬鹿だったのか?」
東京湾で発見された太古の日本に住んでいたと思われる民族の残した謎の物体を研究していた研究者は、思わずつぶやいた……