プロローグ
読んでくれてありがとうございます。
―――2×××年、強盗犯が捕まり持っていた時限式の爆弾を爆発物処理班が軽やかな手つきで爆弾解除にかかるところだった。
比較的単純な爆弾だったので新人の和合が処理にかかった。和合は新人ではあったが成績優秀で実績もあった。青い導線を切りそ
の当時爆弾に使われていたメノキスという解除を複雑にする装置を分解し時限装置を止めるだけだった。メノキスの解除方法はス
クールで習っていた。複雑ではあったが覚えれば大した事は無かった。
青い導線を切り、メノキスの解除にかかった。約2分位かかった。タイマーが止まり不安に溺れていた人質が歓声をあげた。解
放された人質は家族の元へ走っていった。「よくやった。」と先輩の野本に褒められた。少しばかり嬉しかった。爆弾を持ち上げ
、処理班の車に持っていこうとしたその時だった。
「ピッピッピッピ」と電子音が鳴り響いた。和合は耳を疑った。疲れているのだろう、咄嗟に和合はそうこじつけた。しかしその
幻聴と思われる電子音は未だに消えようとしなかった。ひどい耳鳴りだ。和合は不意にタイマーを見た。
「1:26・・1:25・・1:24・・」タイマーは時を刻んでいた。心臓の高鳴りを和合は感じた。有り得ない、解除は成功
したはずだ。恐怖に負けて和合は野本を呼んだ。
「野本さん!爆弾が再びう、動き出しました!」
「何だと!?急いで置け!再解除だ!!」
和合は爆弾をコンクリートの上にそっと置いた。処理班のエリート集団「グループ4」が車内から飛び出してきた。爆弾の周りを
囲み、いろいろな器具を用いて解除に没頭した。和合は野本の元へ走って行き、状況報告を速やかに行った。和合の心臓の高鳴り
は一向に止む気配を見せなかった。こういった事態は何度も見てきたが今回は何故か違った。解除できるという希望が見当たらな
い。それどころか、爆発してみんな死ぬという絶望しか見出せなかった。
グループ4の作業は止まらなかった。いつもなら20秒もあれば停止していたはずなのに。突如グループ4の一人がその場を走
り去った。全速力で逃げていった。全員が目を疑った。あのグループ4が。その後も一人、二人と逃げていき遂に残り一人となっ
た。
その一人が拡声器で「緊急事態です!住民および警察の人々は直ちに避難してください!」その声とともに住民と警察の一部が
逃げ去った。警察の一部は強盗犯に入手先などを聞いていたが強盗犯は気絶しており、何も答えなかった。
その後、どんどん逃げて行き、残ったのはグループ4員と和合、野本だった。
「野本さんは逃げないんですか?後30秒はありますよ。」と和合
「逃げない。私は処理班だ。解除するまで逃げるわけにはいかない。お前こそどうなんだ?逃げないのか?」
「逃げませんよ。ま、死ぬときは皆一緒ってことで。見たいなね。はは。」
和合も野本もやけに落ち着き払っていた。
「なあに。3人がなんたら文殊の知恵ですよ。解除しますよ。」
グループ4員が言った。3人で色んな場所をいじったが止まる気配は無かった。
残り10秒。さすがに焦った。皆息が荒くなった。
「くそ!止まれ!止まれ!止まれ!」和合は叫んだが止まることは無かった。電子音は和合達を嘲笑うかのように鳴り響いた。
9・・8・・7・・6・・5・・4・・とどんどん死への階段を上っていった。
「畜生!畜生!畜生!」
カチっという音と共に爆弾は破裂した。とてつもない高温が和合達を包み込んだ。
体が焼けていく。・・・3人は息絶えた。爆風は獲物を求めるライオンのように町の方へ向かった。凄まじい威力だった。核爆弾と
同等、もしくはそれ以上だった。町を覆い、死者を出現させた。逃げていった者も、家にいた者も全て。
町は爆弾の破裂により、終焉を迎えた。―――