魔法世界の中での医療とは?
ファンタジーの定番中の定番とは、剣と魔法の世界である。
剣と魔法の世界において傷や火傷、害毒などの負傷を治す時、使われるのは往々にして回復魔法と呼ばれる魔法の1種によって行われる。
大抵のファンタジー作品では回復魔法があるのだが、時にはさらにその上に医術と呼ばれる別技術が存在する事もある。
医術もまた人々を回復させるための手段の1つであるが、回復魔法と言う物があるファンタジー世界において医術とはどう言う物だろうか? また、そもそも医術とは発展するのだろうか?
今回はその事について、少し考えて行きたいと思う。
まず、回復魔法と医術との大まかな違いを述べたいと思う。
回復魔法とは治療を目的とした魔法であって、医術とは魔力を用いない治療と診察を行う技術である。
この2つの共通点とは人の治療を行う所であり、相違点は魔力の使用の有無と言う所だろう。
次に細かな違いについて述べていこう。
回復魔法とは対象がどんな病気や傷を負っているかを知った後、それに対して魔法を行うと言う事である。
例えば体力が減っていて、なおかつ麻痺などの状態異常の場合、大抵の回復魔法ではどちらかしか回復出来ず、また魔力の大きさや魔法の種類によって回復が出来ない。
医療とは対象のどこが怪我しているかのおおよそを掴み、処置を行って治す行為だ。
これは多くの場合において対応が出来るが、その代わりに魔法とは違ってすぐに効果が出ないのが欠点であると言えよう。
どちらも、回復魔法であれば魔法の腕、医術であれば医療知識が必要となって来るが、その辺りはまたどちらも努力と才能によって変わって来るだろう。
では次に、医術がなく、回復魔法しかない世界ではどう言った事になるのか?
例えばこのような例ではどうだろう?
「うぅ……魔法使いさん。どうも身体に傷が出来てしまい、それに火傷や麻痺があるみたいなんですけれども……」
「そんな時は回復魔法! 行きます、ヒール!」
「うわぁ、す、すごい! 身体の不調が、古傷が全部治って行くぅ!」
……絶対、危ない薬か何かをやっていると思うのは私だけでしょうか?
もうそんな回復魔法があるのならば、魔法使いは回復魔法しか居なくなる。
そう考えるとやはり、回復魔法だけでなく医術も必要になって来るのは目に見えて分かる事だろう?
また、病気と言えば精神的な物もあるので、こんな例もあげておこう。
「うぅ……魔法使いさん。どうも心が痛くて……これも回復魔法で何とかなりませんか?」
「そんな時でも回復魔法! 行きます、キュア!」
「う、うわぁ、す、すごい! 心の傷まですべてが無くなって行く!」
明らかに危ない洗脳ですね、分かります。
とまぁ、その時点で回復魔法を使う魔法使いが、教団を作っていても可笑しくはないと思う。
まぁこれはあくまでもちょっとばかり特殊な、極端な例ではあるけれども、別に回復魔法だけでなくて、医術を行っても良いと言うのが今回の私の結論である。
そもそもファンタジー世界で地球の病気しかないと言うのが可笑しな事であると私は考える。
魔力を失っていく病気や、魔力を用いると危険な病気とかがあっても可笑しくないと思うし、それに多くの異世界ではエルフとか獣人とか人間とは明らかに身体の構造が違うような生物も居るからその生物特有の病気や症状があっても不思議ではない。
そんな所で、回復魔法1つで解決できるようなファンタジー世界ならば、こちらから可笑しいだろうと思ってしまう。
ファンタジー世界での魔法を考える際は、現実の地球での病気以外にも、その世界特有の病気も考えるのも重要だと思う。
そうすれば、自然と回復魔法だけでなく、医術も発展するだろう。
回復魔法と医療の2つを上手く使う場合、そう言った異世界特有の病気や症状を考えるべきかも知れない。
そして医療できちんと相手の症状と的確な処置を行い、その上で回復魔法で補佐する形。
これが回復魔法と医療の正しい共存の仕方ではないかと、私は考える。