第十話 スロー・圧倒・人外
ようやく戦闘……長かった…………。
若干グロ注意です。
まず俺は、向かって正面のゴブリンを袈裟斬りにした。
もちろん、それを見て別のゴブリンが動く。
俺は前へ数歩移動し、ゴブリンの打撃(棍棒)を躱す。
その打撃は、さっき倒れたゴブリンに直撃し、ぐちゃ、という肉体が砕ける音が響いた。
……あれ、当たったらかなり痛いだろうな……
痛いじゃ済まないかも。
俺はできる限り攻撃を食らわないように心がけた。
ゴブリンが俺の頭上から、その重そうな棍棒を振り下ろしてくる。
何故かかなりスローで再生されているが。
熊の時と同じような感覚に戸惑いつつも、俺は一歩右に避け、そのまま体を捻り、棍棒を振り下ろした状態のまま硬直しているゴブリンの背中に、ショートソードを突き刺す。
そのゴブリンは、びくり、と一回体が震えたが、それっきり動かなくなった。
それを確認した俺は、次の標的に目を向ける。
ゴブリン達にさっきみたいな勢いがない。
これなら……
そう思った瞬間、頭の中で声がした。
Tips:狙撃手が森に潜んでいるかもしれません。注意してください。
それを聞いた俺はハッとなって今いた位置から飛び退く。
数瞬後、ドスッ、という音とともに、俺のさっき立っていた位置に木の棒が刺さった。
否。おそらく矢であろう。
俺は飛んできた矢から位置を割り出す。
さらにそこに向かって、さっき飛んできた矢を投げ返す。
数秒後、
「ギャッ」
という悲鳴と、どさり、と何かが落ちる音が聞こえた。
それがもはや離れ業のレベルを超えていることはわかっていたが、俺は意識を矢を投げた方から残ったゴブリンの方へ向ける。
さっきの光景を見たせいか、かなり士気は下がっているようだが、まだ諦めてはいないようだ。
二匹がいっぺんに飛びかってくる。
しかし、それはやはりスローであり、避けるのに苦労することはなかった。
そのゴブリン達は、俺の後ろの地面に着地し、左右から棍棒を振るってくる。
俺はスローな世界でそれらを見切りつつ、右側のゴブリンの首を跳ね飛ばす。
プシャッ、と、ゴブリンの首から血が吹き出る。
しかし、その血の色は、人間と同じ赤ではなく、青くどこか禍々しい色であった。
その血を浴びたもう片方のゴブリンは、完全に戦意を損失させ、そのままどこかへ逃げていった。
「ふぅ……。助かった……か?」
とりあえず危機は去ったらしい。
それにしても……。
あたりを見回す。それは虐殺の後のような光景であった。
「俺がやった……のか……。」
これを?
一人で?
「……うっぷ。」
辺りを見渡していると、吐いてしまいそうになるので、俺は慌てて別のことを考えた。
さっきのスローな世界は一体何だったんだろうか……。
「熊の時もスローになったしなぁ……。」
これが一体何なのか。それがわからないことには対策のしようがない。
むぅ……
一人で考えていると、近くでガサガサという音が近づいてくる。
俺はまたゴブリンが来たのかと思いショートソードを構える。
足音が次第に大きくなり、姿を見せたのは、
「ちょっ……大きすぎんだろ……。」
体長2.5mはあると思われる巨大なゴブリンだった。
その手にはこれまた巨大な棍棒を持っている。
そういや、さっき『助かったか?』とか口走っちゃったな……。
もう一級死亡フラグ建築士と言われても突っ込めまい。
逃げようにも、どうやらこの道はここで行き止まりのようでで、あいつが塞いでいるところしか道がないようだ。
…………また、戦闘かよ……。
また…戦闘かよ……orz