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彼と私のぐだぐだ恋愛日記。

ぐだぐだ誕生日

作者: ひばり れん
掲載日:2014/02/28

年に一回の記念日。

彼はいつも私よりも嬉しそうに祝ってくれる。


今日は十六回目の誕生日。

いつもの通り彼の家でデート。


の前に。気になることがたくさんある。


まず彼の挙動が変だ。

いつもならメールが一日一通は送られてくる。学校帰りは一週に一日は会う。

でもこの数日は全くの逆だ。

ここまで接点を減らされたことは今までなかった。


それで心配になってメールを送ったら、返事が数時間単位で来た。

普段の彼ならば即レスなのに。

待っている時間ずっと、風邪なのか怪我したのかと心配した。


久しぶりに会えたのが今日。

なんだか生傷が見える。至るところにというまででもないけれど、彼にしては珍しい。

小さい傷がたくさんあるみたいだ。青痣がちらりと服の下に見えた。


なにか危険なことでもしているのだろうか・・・・?


もしそうならば私が、なんとしてでも止めないと。

むん、とやる気を搾り出す。他でもない彼のためだ。

ココは自分の性格なんてちっぽけなものは置いておこう。


「あ、あのさ」

「んー?なに?」

「最近何してるの?」

「・・・・んー?」


私の質問に答えず、後ろから私の肩に顎を乗せる。

言い忘れていたけれど今私は座ったまま抱きしめられている。

ホールドの強さは変わらない。でも彼の体温が少し高い気がする。


「ちゃんと答えてよ。最近変だよ?」

「・・・・・・・」


まるで浮気の口論のよう。自分で考えておいて例えがひどい。

彼が、浮気なんてする訳・・・ないのに。

いつもいつも私を大事にしてくれている彼がするわけないのに。


「なんか今日は必死な感じだね」

「・・・うっさい」

「いいよー教えてあげる」


すでにご機嫌斜めの私の頬にキスをした彼。

一旦離れて部屋の収納から大きな袋を出した。

そして満面の笑みでいうのだ。


「誕生日おめでとう!」


と。

驚いてそのまま両手を伸ばしてそれを受け取る。

重くはあるが、見た目ほどではない。誕生日プレゼント。

中身はなんだか中くらいの箱と袋がくっついているものだった。


「これ・・・・あけてもいいの?」

「うん、いいよ。あ、ケーキ持ってくるねー」


笑顔のまま彼は部屋を出て行った。ケーキもあるの?!

箱と袋の中身によるけれど、一体いくら費やしたのだろうか。

恐怖と期待とが私をおした。


そぅっと包装を気遣いつつ開けていく。


「・・・・・・・・・?」


箱の中身は空気洗浄機だった。そして袋にはアロマボトル。

ボトルの大きさから値段が低くない事がわかった。

そして空気洗浄機も見覚えがあった。でも詳細を思い出せない。

単純に私の花粉症や、体調管理がヘタなのを思いやってくれただけじゃないと思うのに。


「これ光るんだ?きらきらするんだー」


おしゃれな球体。光る機能が付いている。アロマ。

取り扱い説明書や箱に書いてある情報からぼんやりと思い出した。


これは、去年彼と一緒に見たものだ。


去年は私が意地悪をして、プレゼントを買おうとした彼を困らせた。

結局当日外でデートをしつつ良さそうなものを買ってくれたのだ。

そのとき見たのだ。この空気洗浄機を。


『・・・・これすごいね』

『うんうん、おしゃれーだねー』

『でもすごい値段。諭吉さんいくら必要なのって感じ』

『きれいだねー』

『うん、キラキラしてる』


店の中で二人で夢心地で見ていた記憶が蘇る。

あんなちょっとの出来事を覚えていてくれたんだ。ほんの数分のあの遣り取りを。

感動して考えがまとまらない。

私のこと大事にしてくれているんだってストレートに言われるより心に響いた。


ガチャ。


「おまたせー」


まったく身動きできない状態の私がいる中彼は戻ってきた。

私の向いている方向とは真反対に扉はある。

しかし彼の顔を直視できる自信がない。顔を見られるのに抵抗がある。

今きっと私、にやけてる。ううん、泣いているかもしれない。

鏡を持ってくればよかった。確認できない今の状況が歯がゆい。


「どしたの?」


ケーキ(を乗せたお盆かな?)を置いた音のあと、彼が私に近づいてくる。

やばいやばい。近くに来ないで。

私の願いは虚しく散った。なんということもなく、彼と向き合う形になる。


振り向かせるために掴まれた肩が一気に熱を持つ。

顔にも熱が這い上がってくる。口はパクパクしてて音を出せない。

鼻も目にも液体の気配を感じる。


「え、いやだった?」


泣きそうな私から手を素早く離し、おろおろと両手をさまよわせる彼。

どこまでも優しくて、素晴らしいひとだ。私にはもったいないくらい。

鼻水垂れそうなので一度鼻をすすって笑って。彼を抱きついた。


「ちょーうれしーよ」


声がガラガラで自分でも驚いた。まともに言葉も出ないし。

もういいや、泣いてしまおう。抱きついていれば顔見られない。

ぎゅぅっと彼の体を抱きしめて、離されないように力を両手に込める。

彼の力にはどうしたって敵わないけれど、せめてもの抵抗だ。


「ありがとう」


ぽんぽん、と頭を撫でられた。

そして同じようにぎゅぅっと抱きしめられた。

暖かい紅茶の香りとケーキの甘い香りと彼の匂い。


「こんなに甘えてくれるなんて思ってもなかったなぁ」

「・・・・・・・・・・」

「頑張った甲斐あってよかった」


そうだ。忘れてた。

彼の最近の奇行は一体なんだったのだろうって考えていたじゃないか。

プレゼントに気が行ってしまって忘れるなんて子供か、私は。

当初の目的を思い出せ、私!


「それで、なんで変になってたの?」

「うーんとね。プレゼントどうしようかなーって思ったとき、前来たお店回ってたんだよ。

 そんでね。この空気清浄機みて楽しそうにしてたからバイトして買ったんだー」


私の高校は基本バイト禁止だけれど、彼の学校は違う。

寧ろ推奨している節もある。校則がゆるいわけじゃぁない。

社会経験が今後の強みになるからだ。


それでえっと、つまり?なんだ。


これを買うためにバイトをしていて。

忙しかったから連絡がとぎれとぎれだった。

ただ、それだけ?


「・・・・・・・ほんと?」

「嘘つくわけないでしょー」


また私の頬にキスをする。

怪我は仕事の所為。


「体熱いけど・・・熱あるの?」

「あーなんかねバイトしてから新陳代謝良くなっちゃって」


杞憂って言葉はいつ使うべきか。答えはもちろん今だ。


なんだ、と落ち着いた自分が、先ほどの行為を鮮明に思い出してしまう。

顔が再び顔が火照る。もうやだ、恥ずかしい。




ケーキを食べよう、と声をかけられるまであと数分。

それまでずっとお互い抱きしめあっていた時間が、何よりも幸せだった。




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