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ウソ  作者: ミナセ。
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ウソ ~エリカ~

~回想 エリカ~


エリカとの別れは突然だった。多分、私も、周りの誰もがその別れを予想できなかった。

それくらい、私たちは上手くいっていた。すくなくても、私はそう思っていた。

付き合いも長かった。大学の1年生の時にエリカとは出逢った。友達が主催した合コンだった。

隣に座ったエリカはかわいらしい服装をしていた。確かそのときも服はピンクだった。

ピンクに黒の組み合わせが好きなエリカ。かわいらしい服装。少し茶色い髪が長く、いつも甘酸っぱい匂いがしていた。

付き合った当初は大学が違うためなかなか会えなくて、平日授業をサボって会っていた。

夜はお互いバイトをしているし、休日は私が短期バイトを入れることが多かった。

そのため、付き合い出してから半同棲のような生活をしていた。

ボロイアパート。電車で7駅。景色はのどかといえばのどかだが、何もないと言えばそれまでになってしまう。

一応駅付近は小さいながらスーパーがあった。

6畳一間のおんぼろアパートにエリカはよく遊びに来てくれた。

ただ、外観は古いが内装はしっかりしていた。掃除もしてキレイにしていた。

木造だったためか、大きな音を出すと隣近所からクレームが来る。

確かにこのアパートは一人用。同棲なんかしていることが大家にバレたら追い出されてしまうからだ。

だから、出来るだけデートをする時は外に出るようにしていた。

そう、お互い時間を見ては外でデートをする。

どれだけ付き合いが長くなってもそう決めていたんだ。

そして、その日は唐突にやってきた。

付き合って2年くらいした日だった。見たい映画があったから、朝から映画を見ていた。

映画を見終わってお茶を飲んで、少し買い物をして、食事をして、その後にホテルに行った。

その間会話も弾んでいた。エリカはずっと笑顔だった。

だが、、ホテルを出た後にエリカから言われた。


「別れましょう」


一瞬、何が起こったのかも理解できなかった。


さっきまで、エリカのぬくもりを体中で感じていた。

その時から思っていたのだろうか?


「どうしてだ?

さっきまで幸せそうだったのに。

それとも何かあったのか?」


私はこのときびっくりしていた。何か大きなことでも見落としていたのか?

いや、知らないうちにエリカを傷つけていたのだろうか?

そう思ってしまった。


だが、エリカの口から出たセリフは違っていた。


「私、ゆうの事好きよ。

初めて付き合ったのはゆうで良かったと思っている。

ゆうに対して、不満はないのよ。

唯一の不満は、不満がないことかも、、、しれない。

別れたいって思ったのは今日がはじめてじゃないの。

理由は上手くいえないけれど、私、ゆうといると甘えすぎてしまうの。

だから、もっと成長した時に出会いたいの。

だから、だから、私のわがままを許して。

でも、待っていて欲しいの」


ホテルを出てすぐの通りで泣きながらエリカが話した。

周りは怪訝な目で私たちを見ていく。ホテルから出て女性が泣き崩れているのだから。

私は意味が解らなかった。

何を言ってもエリカは変わらなかった。そう、別れたい理由はわからなかったが、別れたいという意思だけはかたくなだということだけは痛いほどわかった。

そう、別れは唐突におとずれたのだ。

もう一つびっくりしたことは、その次の日にアパートにあったエリカの荷物が全てなくなっていたことだ。

今思うと前々からエリカは自分の荷物を整理していたんだ。

この失恋の時、私は痛みから逃げ出したくて違うことに没頭をした。

そう、ひとつのビックイベント。

就職活動だった。

やりたいことは決まっていなかった。まだ、誰も着手していない。

今から出来るのは他の業界よりも早く応募を出している広告業界だった。

私はとりあえず、動くことを決めた。


その中で高見とであった。


この失恋、高見との出会い。私の環境は大きく変わった。

ただ、変わっていないのは、別れてもエリカとは連絡を取っていたということ。

そして、たまに会っていたということ。そして、どうしてもエリカにいえなかったことがあった。


「かおり」の存在のこと。


そう、新しく彼女が出来たにも関わらず、ずっとエリカにいえなかった。


「でも、待っていて欲しいの」


エリカの最後のセリフがすごくこだまする。

いつから、エリカは「かおり」の存在を知っていたのだろう?


気がついたら、エリカにメールしている自分がいた。


「今日、話がしたいんだけれど、あいているかな?」


確かめたい。でも、どうやって。ここ数ヶ月はエリカとはメールしかしていない。

そう、メールだけ。

それは、罪悪感からかもしれない。そう思う事で少し自分が楽だったはずだ。

私はただ、逃げていただけなのかも知れない。色々な事から。

エリカからメールはすぐに返事が来た。


「いいけどどうしたの?

どこにいけばいいのかな?」


何度かエリカとメールのやり取りをして1時間ほどで駅に着くと解った。

ちょうどいい時間だ。

下にいる高見に相談しよう。相談。

一体何を。

指が吹っ飛んだことを話すのか?それとも、元彼女『エリカ』の事を話すのか?

急激にいろいろな事が起こり、思考能力が低下している。それが良く解る。

落ち着け、落ち着け。

そう思いながら、マンションの下に降りていった。


~高見~


マンションを降りると人だかりが出来ていた。

世間話で集まっているという感じではなかった。何かの様子を見るために人が集まっている。

一瞬、さっきの爆発音が漏れて誰かが警察に通報したのかと思った。


「もちろん、警察なんかに話した場合、ゲームオーバーとさせてもらうよ。」


ライヤーが送ってきたメールを思い出した。

こんなことでゲームオーバーになんてさせたくない。

私は何が起こったのかわからなかったから高見の携帯に電話をした。

なり続ける呼び出し音が余計に不安にさせる。


人だかりから声がする。


「この辺も物騒になったよね。ひき逃げですって」


爆発音でなかった。ゲームオーバーでない。私は安心をした。

遠くから救急車のサイレンが聞こえる。

そういえば、この近くの救急病院は駅前の大きな病院くらいしかない。

そう、全てが駅前に集まっているからだ。

人ごみがどんどん離れていく。

その中心に高見が、横たわっていた。


「どうしたんだ?」


おもわず駆け寄った。

ひき逃げ?


「関係者の方ですか?」


誰かがそういっていた。気がついたら、救急車に乗っていた。

高見は頭と腕から血が流れている。何か話している。


「高見、どうした」


高見は何かを話そうとしている。声が聞き取れない。

私は高見に耳を近づけた。

高見の声は弱々しかったが、きちんとこう聞こえた。


「かおりの携帯に電話してみろ」


それともう一つ、手渡されたもの。一つのメモだった。メモにはこう書かれている。


「答えはそ・・・」


途中から文字がかすれていてなんて書いてあるのか読めない。

いったいこのメッセージは。それにかおりの携帯はここにあるのに、かけて何が起きるというのだ。そして、この途中までしか読めないメモ。


「答えはそ・・・」


「そ」から始まる言葉を考えて見る。だめだ、あたまがまわっていない。一体なんなだ。



駅近くの病院へ高見は搬送されて、検査が始まった。頭を強く打っているため、念のために検査をするとのことだ。だいたい検査は30分くらい。

高見自信が意識を失っていることから検査をして、問題がなければそのままで終わるということだった。怪我自体はそこまでひどくないとのことだった。

それだけが救いだった。ただ、ひき逃げだから、この後は警察へいかないといけない。

相手が見つかればの話しだが。


しばらくして、メールが入る。そういえば、携帯の電源を切っていなかった。

ばたばたしていたから忘れていたのだ。


メールはエリカからだった。


「もうすぐ駅に着きそうだけれど、今どの辺?」


そうだ、エリカとこれから待ち合わせをしていたんだ。

忘れていた。ちょうど、病院は駅近く。


看護士さんに少し外に出る事を伝えて駅へ向かった。

この時、もう少し落ち着いていれば、高見の検査が終わるのを待っていただろう。

いや、今日はずっと落ち着いていなかったのかもしれない。こんな状態で冷静を保つなんて出来そうにないから。そう、自分に言い訳をいいながら駅へ向かった。


駅前にエリカはいた。いつも、独特のかわいらしい服を来ている。

ピンクを基調としたワンピース。甘栗色の髪はツインテールにして、ピンクに黒で縁取ったリボンをしていた。ふわりとした感じは今も昔と変わっていない。

甘酸っぱい匂い。いや、何か違うようにも感じてしまう。

さっき、むせ返るくらいの血の匂いをかいだからかも知れない。私は首を横にふった。

エリカは相変わらずかわいいかっこが好きだ。

確か、エリカの好きなブランドは


「ピンクトルネード」


という服だったはずだ。

一度、一緒に店に見に行った時に、値段の高さに驚いた。


「この店、かわいい服が多いの。でも、値段はかわいくないのね」


そう言っていた事を思い出した。もう、昔のこと。

けれど、記憶はまだ、私の中で確実に生きているんだ。

そう私はどこかで「エリカ」を過去に出来ないままでいた。卑怯だと思う。

友達以上だけれど、恋人ではない。寂しい時に会って話したり出かけたりしていた。

そう、かおりと付き合うまではそういうことを繰り返していた。

ただ、違うことは、この3ヶ月は会うということをしなかっただけだ。


「なんか『ゆう』と会うの久しぶりじゃない?で、今日はどうしたの?」


明るいエリカの声で、現実に戻された。

私は何度この声に救われてきたのだろう。

不思議とエリカと私は別れてから恋人がずっと出来なかった。

ただ、もう一度付き合うというタイミングがわからなかった。また、同じように唐突に終わるのかも知れない。私はずるかったと思う。どこかでエリカをセーフティーネットにしていたのかもしれない。

ただ、今の私にとって一番は「かおり」だ。

私はそう自分に言い聞かせた。何度も。


「とりあえず、ちょっと話しがあるんだ。お茶でも飲もうか」


私はそう言った。エリカは


「あの店がいいな」


と言って来た。

そう言ってエリカは駅前にある喫茶店「ルーシュ」へ向かった。

その喫茶店にあるジャンボプリンパフェをそういえばエリカと食べた記憶が蘇ってきた。大きなプリンがパフェの上に君臨していた。ジャンボプリンパフェ。そういえば、エリカは細い体なのに、このパフェを良く頼んでいた。

最後のコーンフレークを食べるのはいつの私だったな。

よく思えばいたるところに思い出がちりばめられている。

その思い出をかおりで塗りつぶしていったのも事実。

だからこそ余計にかおりと出かけることを増やしていたのかも知れない。

ただ、かおりはジャンボプリンパフェを頼むなんて事はしなかったが。

普通のチョコレートパフェを一回頼んだくらいだった。

思い出が交差する。いや、今、目の前に起きていることをただ単に拒絶しているだけなのかも知れない。

私はまとまりきらない思考をどうにかまとめようと必死だった。

そう、エリカにまず話さないといけないことが多いからだ。

待てなくてすまなかったとでも話すのか。

いや、そもそもエリカは待っていたのだろうか。

エリカは私と同じ年。もう27歳だ。そろそろ周りも結婚してきている。

けれど、エリカを見ていると、いや、エリカといると、まるでタイムマシーンで過去に戻ってきたみたいに錯覚する。

そう、エリカの服装が昔と変わっていないからだ。

まとまりきらない思考のまま、私は喫茶店についてしまった。







喫茶店「ルーシュ」。この喫茶店は少し変わっている。

毎回来るたびに奥側に通される。奥側はテーブルが小さく向かい合わせにいるのにかなり距離を近く感じる。初めて来た時、手前側の広いところがいいと思ったくらいだ。

だが、後で調べたのだが、カップルでの来店の場合は奥のちょっと小さめのテーブルに通すというのがこの喫茶店のルールなのだと。

だから、この喫茶店に来るということは「付き合っている」という証なのだと。

エリカと別れてからも何度かこの喫茶店に来ていた。

喫茶店に入って、妙な沈黙がつづいていた。目の前のジャンボプリンパフェはまだ減っていない。

先に口を開いたのはエリカだった。


「ひょっとして、気がついた?」


そう、これだけだった。一瞬、心が凍りそうだった。

かおりの事黙っていたことなのだろうか。それとも、他に何かあるのか。

黙っていると、エリカから話し出してきた。


「ゆうがずっと話してくれないから。

 私、話してくれるの待っていたのよ。

 でもね、ゆうが選んだ人があのかおりでよかった。

 だって、あなたたちはあまりにも似合っていなかったから。

 いつか、別れる。

 それまで、私はあなたがもう一度私に振り返るように、

 自分を磨いていよって思っていたから」



不適に笑うエリカを見ていて、私は一瞬怖かった。でも、一体、いつからエリカは知っていたんだ。そして、どうして昨日会っていたんだ。

おそらく、最後にあった人間はこのエリカだろう。私は、今朝からかおりが行方不明になっている事をエリカに話した。


「ふ~ん、そうなんだ。

 大変だね。でも、あの年齢で誘拐されてただで済んでいるって事ないよね。

 そんな人とちゃんとこれからも付き合っていられるの?」



エリカがなんとなく言ったセリフは重かった。けれど、だからといって、ここで逃げるわけには行かない。そう、逃げるわけにはいかない理由が今の私にはあるんだ。

私は一つの疑問をエリカにぶつけた。


「昨日、かおりとあっていたよな。 何かなかったのか?」


エリカは考えながら話してくれた。



「う~ん、何も覚えていないわ。

 というか、普通に出かけて、お茶して、プリクラ撮って、それで、別れたの。

 特に何もなかったよ。

 あ、そうそう、私香水変えたんだけれど気がついた?」


そう言われて、出された手首からの匂いは、どこかなつかしかった。いや、つい最近この匂いを嗅いだ記憶があったからだ。

かおりのマンション。そうだ。

いつもかおりが付けている香水と違う匂いがしていた。

ただ、確信はない。そこまで、自分は香水に詳しくないからだ。


「この香水って?何?」


恐る恐る私はエリカに聞いてみた。


「いいでしょ~

 もらい物なんだけれど、入れ物がかわいいの。

 エンジェルハートって言うのよ。

 ほら」


そういって、エリカはカバンから、赤いハート型の香水のビンを出した。今、赤い色のものは見たくない。

むせ返すような血の匂いしか思い出さないから。そう、だからこそ、匂いに自信はなかった。


「もらいものって、誰から貰ったの?」


なんとなく私は言った。特に何も考えていなかった。けれど、その答えは返ってこなかった。

その代わりに、私の携帯がなった。見たことのない番号だ。

相手は、高見が搬送された、病院の事務の方だった。

内容は


「検査が終わって結果を伝えようとしたら高見さんがどこにもいないんです。

 そちらにいっていませんか?」


という内容だった。

そして、行き先に心当たりがあれば教えて欲しいといわれた。

だが、思いつかなかった。一体、高見はどこへ行ったのだろうか。

しかも、事故の後、検査の後ににいったい。

高見がいっていた言葉を思い出した。


「かおりの携帯に電話してみろ」


電話を切って、かおりの携帯に電話をしてみる。すぐに留守番電話サービスに繋がる。

圏外らしい。

だが、私が持っているかおりの携帯は、私の携帯と同じく3本アンテナが立っている。

では、この携帯は一体誰の携帯なんだ。

いっそうナゾは深まっていった。


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