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ウソ  作者: ミナセ。
3/15

ウソ ~かおり~

~回想 かおり~


商店街の奥は高級住宅街というイメージしかなかった。

石垣のある家や、外国でしか見たことがないような庭のある家。一人暮らしで住めるくらいのスペースもある駐車場がある家。そう、そういう高級住宅街が国道を挟んだ向こう側。

私の知らない世界。

そういうイメージを私は持っていた。いや、このイメージは間違っていない。

かおりに連れられて歩いているとそういうイメージを超えた家が並んでいた。

一体どういう生活をしていたらこんな家に住めるのだろうか。

私は不思議に思っていた。

住宅街の奥。少し斜面を上がった先に茶色いマンションがそびえていた。

それまで住宅街の中にあった形のかわった、いわゆるデザイナーズマンションといって方がいいのかわからないが、そういうオーソドックスでないマンションと違って、作り自体はシンプルなマンションがそこにはあった。

ただ、まだ新築の匂いがどこかに残っているような真新しいマンションは確実に風格があった。

そう、確実にこのマンションは「高級」という雰囲気が出ていたのだ。

遠くからでもそれが感じられた。


マンションに入ってオートロックの扉をあける。

行き先を押す必要のないエレベーター。

エレベーターから降りたらそこにある小さな門。

小さな門だったがまるで私は拒絶されたかのように感じてしまった。

かおりの部屋に入る。

一人暮らしとは思えない広さだ。

リビングにダイニング。寝室。

この広さなら二人以上でも暮らせるのではないのだろうか。私は素朴な疑問を思った。


「こんな高級なマンションに住んでるの?」


かおりの年齢から考えると疑問だった。年齢は25歳。

私より二つ下だ。

私も給料は低いほうではない。

でも、このレベルのマンションに住むと生活が厳しいだろう。

いや、済めるかも知れないが、生活が出来ないだろう。

収入の大半が家賃に取られるからだ。

「給与の1/3が家賃」

それが、普通だと私は思っているからだ。

それから考えるとこのマンションは少なく見ても15万円は1ヶ月にかかっているはずだ。

1/3と考えたら45万円。さすがに私はそこまでの収入はまだない。

何か他にしているのではないのだろうか。

私は怪訝に思った。

その表情を見て取ったのか、かおりは私にこう言った。


「実は、お父さんが心配して借りてくれているの。

だからよ。

ホントはここまでのマンションじゃなかってもいいって言ったんだけれどね。

でも、お父さん聞かなかったから」


かおりは少し照れながらそういった。


かおりの両親が何をしている人かは知らない。

だが、よくかおりを見てみると実につけているものはブランドが多い。かばんはヴィトンのモノグラムのやつだし、ネックレスはブルガリのピンクゴールド。財布はD&G。

私自身は何一つブランドのものなどもっていなかった。


お嬢様なんだろう。私はそう思うことで追求をすることを辞めた。
















~再び高見~


「オレの推測が正しければ、特に問題ないかもしれないな」


高見の声でトリップから戻される。どうも、どこかで今の現実を見たくない自分がいる。

けれど、どうにかしないといけないことも事実。タイムリミットは決っているんだから。

高見が言ったのはこうだった。


「もう一度郵便受けの中を良く見てみろ」


郵便受けにはダイヤル式の鍵がかかっている。私はそのまま引っ張ってみた。

郵便受けは難に抵抗もなく開いた。おそらくかおりがそうしておいてくれたんだろう。

郵便受けの中に入っているものを見る。デリバリー系のちらしと、後、封筒が一つ。

そこには


「高尾祐一へ」


と書かれたもう一つの封筒が入っていた。

中を開けると先ほどの鍵と同じような鍵が入っていた。ただ違うのは「S」という文字ではなく「b」という文字だったことだ。


高見が話し始める。


「祐一がはじめに見た、『S』の文字の鍵。

これは『S』ではなく『5』ではないかと思ったんだ。

つまり、はじめに見た部屋は『601号室』ではなく、『501号室』だったんだ。

ひょっとしたら、何かのいたずらだったんじゃないのかな?

案外かおりのいたずらだったりしてな。

でも、これで、普通に6階に行ってみたらどうだ」


高見はそういって、背中を「ぽんっ」っと叩いてくれた。


そして、高見は、

「オレは下で待っているから、何かあったら声をかけてきてくれ」

と言ってくれた。


6階の鍵で扉のロックをはずす。

頭には、少し前になったかおりから来たメールがこだまする。



「私、ゆうに話さないといけないことがあるの。

それを、知ってもそれでも私を受け止めてくれる?

受け止める自信があるのなら、マンションに来て。」



一体、かおりは何を話そうとしていたのだろう。

そして、時間がたった私を受け入れてくれるのだろうか?


不安を胸にエレベーターを降りた。


先ほどのようにエレベーターをおりて目の前にある門をあける。

この門に一体何の意味があるのだろう。腰くらいの高さ。普通に閂はあけることが出来る。侵入者を防ぐわけでもなく、ただ存在している門。ただ、マンションのグレードの高さだけがわかる。

そう、それくらいだ。

私は門の奥にある扉横のインターフォンを押した。

1、2分はまったが応答はなかった。ドアノブに手をかけてみる。

鍵がかかってる。私は手に持っている「b」の刻印がある鍵で扉を開けた。


中に入ってみる。


「かおり~ かおり~」


よんでも返事はない。

私は部屋の奥に入っていった。

入ってすぐの部屋は衣服を入れている部屋。見たことないタンスがそこにはある。表面が鏡になっていて、服を着替えたあと、その場で自分が確認できるのだ。姿見の鏡の代わりになるタンス。

一体どこで売っているのだろう。私は毎回そのタンスを見て思う。

磨き上げられたタンスは部屋に誰もいないことだけは教えてくれた。

かおりはここにはいなかった。

次は寝室を覗いてみた。

セミダブルのベット。

部屋全体は薄いブルーで統一されている。きれいに片付いている部屋。そこにもかおりはいなかった。

私は一番広いリビングにいった。

料理を食べるときに使っているテーブル。大きな液晶テレビ。テレビを見るためにあるソファー。

一人暮らしの部屋にはいつも見えない。いや、一人でこんな広い部屋に住んでいて寂しくならないのだろうか。

私はそう思ってしまう。この部屋にもかおりはいなかった。

ただ、気になっていたことだけはあった。

いや、どこかで頭の中で何かを否定しようとしていただけなのかも知れない。

そう、何かの匂いがするのだ。

私はリビングにあるテービルを見た。

いつもはそこには果物がカゴに入っているくらいだ。

だが、今は黒い箱と、封筒がある。

封筒には


「高尾祐一へ」


と書かれていた。今日、何回こう書かれた封筒を見ただろうか。

私はそう思いながら封筒の開けた。

中には手紙が入っていた。



「ようこそ6階へ

警察に言わなかったのは賢明だが、誰にも話さずにここにたどり着いて欲しかったね。

でも、どうも『ゆう』は危機感を感じてなさ過ぎだ。

手に入らないものならいっそ、一生手に入らないほうがいい。

もっと、真剣になれるように私から『ゆう』へ一つのプレゼントだ。

受け取ってくれたまえ。

「ライヤー」より」


そして、その下にあった箱をあけた。


一瞬何が起こったかわからなかった。ただ、匂いだけが物語っていた。

いや、この部屋、かおりの部屋に入ったときから感じていた。

ただ、否定をしてかっただけだったのかも知れない。

この事実を。


そこには、

小指と薬指。

そして、薬指には見慣れた指輪。

そう、昨日かおりにあげたカルティエの3連リングがそこにあった。


箱は真っ赤になっていた。

そして、むせ返るくらいの血の匂いが広がった。


「うわぁぁぁぁぁあ」


気がついたら叫んでいた。


「手に入らないものならいっそ、一生手に入らないほうがいい」


ライヤーのセリフが痛いほどわかった。

呆然としていると次に、爆発音がなった。


指が入っていた箱が爆発したのだ。


私の手も目の前も血で真っ赤になった。

ただ、指輪だけがむなしく音をたてて転がっていった。

ただ、自分の悲鳴とむせ返る血の匂いだけが、現実だと力いっぱい教えてくれた。

















しばらく、呆然としていた。

箱であったものを見つめながら、ただ呆然としていた。どこかで、今起こったことを否定したいとおもっている。どれだけ、血の匂いが充満していても。

けれど、携帯が鳴ったことで現実に戻された。


高見だった。


「なにかあったのか?変な音がしたぞ?」


メールが入る。この、かおりの部屋に高見を呼ぼうかと思ったが、ちょっといやだった。

変な独占欲。

かも知れない。それとも、

かおりに悪い。かも知れない。

とりあえず、高見にメールをしてから洗面台で手を洗おう。

高見には


「かおりはいなかった。

もうちょっとしたら降りるよ」


とメールした。ライヤーの狙いがわからないからだ。

それに、一人でないという事がわかるという事は近くで監視している可能性もある。

これ以上、かおりに何か起こるのはイヤだ。


確かに「真剣」にさせてもらったよ。


ライヤー


洗面台の前にある鏡。そこにうつる自分の顔。

すごく真剣な目だ。

鏡には色んなプリクラが貼ってある。

見たことない女の子友達のプリクラや、結構昔のプリクラ。

けれど、そのプリクラの中に一つ目を疑う事実が。

かおりともう一人写っている人物。

名前は、


「皆口 エリカ」


私の元彼女である。

その元彼女のエリカとかおりのツーショット写真。一体どうして、この二人が知り合いなのだ。


そして、日付。

5月17日。昨日だ。


どこにも接点などないはずなのに。沈黙だけがやたらとこだましていた。


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