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ウソ  作者: ミナセ。
2/15

ウソ ~高見~

~高見との出会い 回想~


高見との出会いは少し変わっている。

大学も出身もぜんぜん違う。そう、普通にしていたら出会うことなかった人物だ。

たまたま、就職活動をしていた時にとある選考会で横にいたのが、高見だ。いきなり高見がこう話しかけてきた。


「悪い、書くもの貸してくれないか?」


そう、それから、度々高見とは選考会で会うことになった。第一印象は「なんだこいつ」という思いだった。だが、気さくな性格や、愛嬌のある笑顔。本当ならぴりぴりしているはずの選考会なのに、高見の笑顔のおかげで私はリラックスできたのを覚えている。

それから何度か選考会や一次面接で一緒になった。

就職活動をしていた時の私は特に自分がしたいことなど見つけられなかった。

ただ、選考が早い広告会社からエントリーをしていった。大学のOB訪問で大手広告会社のリクルーターの人にも会っていた。

なんとなく面白そうかも。

漠然と思っていた私に色々と業界のことを違った視点で教えてくれたのも高見だった。

説明会や選考会などいつも一人で行っていたが、帰りは誰かと一緒になっていた。

高見は一緒になる確率が高く、その都度帰りにファーストフードに寄ってはあそのこ会社の選考でこんな質問をされただの、筆記試験はSPIじゃなくて、まるで公務員の試験のような問題だっただの話しをしていた。

後はエントリーシートに何を書いただの話しをしていた。気が付いたら人も増えていて、一種のサークル活動のような感じになっていた。その中心にはいつも高見がいた。

こういう集まりも楽しいかも知れない。

不思議と本来の就職活動よりもその後に誰かと会って話しをするほうが楽しくなっていっていた。

選考会をする場所も大体限られている。そして、時間も。

終わった頃に駅でいつもいくファーストフードに行けば高見はいつもいた。

それが一つの安心だった。

けれど、内定が出ると人はどんどん減っていった。

当たり前だ。

残りの大学生活を楽しみたいから、わざわざこんなところにきて苦しい思いなんてしたくない。

少し寂しいけれど、ここに集まっているメンバーは内定を取るという目的でいるわけであって、仲良くなるという目的ではなかったのかも知れない。

せっかく出会ったにも関らず。

そういう寂しい思いをしていた時に高見が思いもよらないことを言い出した。


「せっかく就職活動を通じて知り合ったんだ。何かその後も出会えるようなサークルを作ろう。

でも、みんな住んでいるところも、大学も違う。だから、ネット上にサークルをつくろう」


そう言って、まずはメーリングリストでみんなに連絡配信できる環境を作った。

それから掲示板、SNSへと発展をしていった。

参加をしてみると、同じ大学だが今まで話したことのない人との出会いも会った。

また、この時にはやったのが、他の大学の講義を受けに行くこと。

他の大学の学食を食べに行くことがツアーとして起きた。

気が付いたら教授も巻き込んでゼミへの参加や論文発表なんかも参加していた。

そう、面白い授業、興味がある授業や教授に会いにいったり、学校にもぐりこんだりしていた。


社会人になってもこのつながりは残っていた。

たまに同窓会のようにオフ会をしたりしていた。

また、仕事上での繋がりも増えてかなり不思議な付き合いが出来ていた。

ただ、私はどうしてもこの中で彼女を作りたいと思えなかった。

このサークル外でかおりとは出会った。どうしても、付き合う人を探すのならば、このサークルの外がいい。そう、思ったからだ。

ただ、不思議と高見はかおりを知っていたが。

この年代では高見はある意味カリスマだから仕方ないのかも知れない。

そう、知り合いをたどっていくとどこかで高見にたどり着く。

別に不思議なことじゃない。

そう思う事にした。その方が楽だからだ。

気がついたら楽なほうへ逃げている。いや、お互いその距離のほうが傷つかなくてすむからだ。

人付き合いなんてそんなもののほうが確かに楽だ。

私は過去を思い出しながら駅へと向かった。










~一人目 高見~

中都市と呼ぶにふさわしいこの街は駅前が一番開けている。

JRと私鉄が繋がっているこの街。ターミナルとして発展したこの街は3階建ての駅ビルと隣接している7階建ての百貨店がある。そして、その横には病院がある。

かおりが住んでいるマンションからは20分くらい歩く。普段ならバスで移動するが、高見が用意をすることから考えて歩いて駅まで向かった。

住宅街から国道を越えると商店街に様変わりする。

古びたアーケードの横に飲食店やスーパー、八百屋、惣菜屋が並んでいる。

不景気の影響下どころシャッターが下りている。

少し前まではシャッターが下りていたところは違うテナントが入るか、駐車場に変わっていく。

街は徐々に変わっていくものだ。都心部みたいに再開発のような大きな変化はないが変わって言っているのが良くわかる。

私は大学でこの街に来たからだ。

ただ、住んでいるのはここから電車に乗って4駅先の坂の多い住宅街だが。

駅について、待ち合わせでよく使う銅像の近くへ行った。

女の子が両手を広げている銅像。通称「あやとり」と言っている。

手の形があやとりをしているように見えるからだ。

本当は平和を祈っているというよくわからない銅像だが、何度見てもその手の形はあやとりをしているようにしか見えない。

ま、一部の芸術家には違うのかも知れないけれど、世間一般では「あやとり」としか認識をされていない。

私は銅像の近くの壁にもたれかかった。


「どうしたんだ?」


もたれかかってすぐに声をかけられた。

背の高い、肌は褐色。端正な顔立ちだが、どことなく「カマキリ」を想像させる人物。

黒いズボンに白にシャツ。全体をモノトーンで統一した服装。

そう、高見がそこにいた。


「もう少し時間がかかると思っていたら意外と早かったんだな」


私は考え事をしていたからか、高見が先に「あやとり」のところにいたことに気が付かなかった。

高見は愛嬌のある笑顔で笑っていた。

私は高見の事をいつも軽いのりだが、頭の回転は人一倍よい人物だと思っている。だからこそ、あんなコミュニティーなんかを作れたんだと思う。



「すまないな、折角の休みに呼び出してしまって」


私は、そういいながら、一体何から切り出していいのかわからず、迷っていた。

時間はそれほど残されていないのに。そうどこかで思っていた。



焦る気持ちよりも、上手く説明したい気持ちの方が上だった。

話したことは。


「昨日、かおりにプロポーズしたこと」

「かおりに呼ばれて家にいったこと」

「家に着いたらもぬけのからだったこと」

そして、

「ライヤーと名乗る人物からメールがきたこと」


意外と話していると落ち着いてきている自分が良く解った。それが、ある意味この高見の人柄なのかもしれない。

昔、聞いたことがある。

精神科に通っている患者が、本当に信頼できる医師にめぐり合えたら、その医師の声を聞くだけで、平静になれるというのを。

私にとっては高見がそうなのかもしれない。


思えば、出会いは偶然だったが、それからの人生は高見がいたからこそ楽しめたものも多い。


「祐一、いいか」


高見の低い声が安心感を加速してくれるのがわかる。多分、私はどこかでこの現実を直視していないのかも知れない。いや、理解できないことだから逃げたいだけなのかもしれない。

逃げようとする意識を高見の声が逃げさせてくれない。

だが、それを心地よくも思えてしまう。不思議なものだ。

高見はさらに続けて話した。


「まず、物理的におかしな点があるんだ。

祐一がかおりから部屋に来てといわれてから、実際に部屋に行くまでの時間は

『7分』

もかかっていないといっていたよな。

それだと、どうやって荷物がいきなり消えるんだ。

まず、そこに疑問点がある。


普通に考えてありえない事柄には、何か理由があるはずだ。

理由のないナゾなんて存在しないんだからな」


力強く高見は言う。高見はある出来事があってから、リアリストになったと聞いたことがある。

実際、高見自身から聞いたことではないから確信は得ていない。しかもうわさレベルだ。

ただ、聞きにくい内容なため、いつか高見が語ってくれるのを待っていた。これも逃げているだけなのかもしれない。もう逃げるのは辞めよう。私はいつも震えながら逃げていただけなのかもしれない。少しだけでいいから現実を見てみよう、と。

高見のいう事を考えてみた。確かにその通りだ。

なにか、トリックがない限り7分で人も物も消えるのはおかしい。


「何か違和感はなかったか?」


高見が問いかけてくる。

確かになんともいえない違和感はあった。でも、それが何か解らない。


「いや、答えは祐一の中にあるはずなんだ。

 何か心の中に引っかかっているものはないか?

 気になっていることでもなんでもいいんだ。」


高見がそう言ってくれた。その言葉が少し心が楽になった。

引っかかっているもの。気になるもの。

わからない。とりあえず、今私の中にあるナゾを並べてみよう。



『君が持っているもの。それがすべてだ』


「ライヤー」が書いていた最後のメール。

このセリフが一番気になる。

でも、私はなにを持っているんだ。


今あるのは、封筒と鍵、そして、キーロックされているかおりの携帯電話。

そして、「ライヤー」からのメール。


考えながら並べて見た。


封筒には鍵以外何も入っていなかった。念のため、封筒をもう一度開いて中を見てみた。

何も入っていない。封筒はどういう状態であったのか思い出してみた。取りやすいようにすこし郵便受けから出ていた。もう一度封筒を見てみる。


「高尾祐一へ」


としか書かれていない。

鍵も立体的で複製しにくそうな鍵だ。おそらく普通に鍵屋に持っていってすぐに複製できるようなものとも思えない。模様に「S」の文字がある。かなりデザインにこっているのがわかる。

携帯電話。キーロックがかかっている。一体暗証番号は何なんだ。

これが開けば何か解るのだろうか?そして、「ライヤー」からのメール。

わからない。

考えていると高見が話しかけてきた。


「確か、かおりの部屋は『601号室』だったよな。

そして、この鍵。

もし、オレの推測が正しければ、5分間で部屋が空っぽになったカラクリが解けるかもしれない。

ちょっと、マンションへ行ってみよう」


自信のある高見の声はものすごく助けになった。正直、不安でいっぱいだった。なんだか、悩んでも何も出てこない私にここまで助けてくれるなんて。私は高見に「ありがとう」って気持ちで泣きそうになった。だが、泣くには早い。

それだけは、わかる。

でも、友と言える人物がいてよかったと思えた瞬間でもあった。

再びかおりのマンションにたどり着いた。何度見てもこの高級マンションは人を拒絶しているかのように見えてしまう。

はじめてきたときはかおりとは違う世界の住人なのではと思ったくらいに。

そう、かおりと。


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