ウソ ~高見とかおり~
~高見とかおり~
高見の話しはこうであった。
今日は仕事のため、会社に行っていた。
そう、だからすぐに駆けつけることができたと。
確かにあの研究所からならば、ここまで遠くない。
「ちょっと明日までにまとめて起きたかった資料があって、朝から研究所にいたんだ」
高見は説明してくれた。確かに、そうかもしれない。でも、何かがまだ聞くべきことがある。
私は自分の中でまとまっていないだけなのかもしれないと思うようにした。
「後、さっき5階でこの写真があったんだ。 この写真に見覚えはあるか?」
私はおそらく聞きたいことはこれではないと思っていたが、古い館を背に高見とかおりが写っている写真を見せた。一瞬高見は固まってから、話し出した。
「この写真。さっきかおりとは血がつながっているということは伝えたと思う。 その事実を知ったのがこの館なんだ。 私の父親の話をしないといけないな」
高見の話は長かった。
高見自身古くからの名家である。いうならば、資産家である。そして、高見の父親は若いときに身分違いの恋をしたそうだ。そのときの相手がかおりの母親。
その段階で想像はついた。高見の父親ができたことは一つの館を渡したこと。それがこの写真の館だという。
「かおりにこの館に連れてこられたときに、気がついた」
高見はそういった。そう、二人の恋の終止符となった場所がこの館だそうだ。
「だが、なんでこの写真が5階に?」
疑問を持っていたのは高見であった。
「ま、悩んでも始まらないしな。そろそろ下に戻ろうか」
高見はタバコの火を消してそういった。 だが、私にはまだ聞くことがあった。
「高見、いつから記憶が戻ったんだ?」
そう、事故でここ数日の記憶が曖昧であったはす。なのに、今日の午前中のことは覚えている。
つまり、すでに記憶が戻っている。
「ああ、さっき非常階段で倒れたときに記憶が戻ってきた。そして、気がついたら6階の部屋にいた。 起きたときはまだぼんやりしていたけれどな」
高見がそういった。
私は聞いた。事故にあう前に何を見たのか。
それと
「答えはそ・・・」
のメモ。
だが、高見の答えは私には納得できるものではなかった。
~高見が見たもの~
高見はタバコに火をつけながら話し出した。
「あの時、ちょうどあの場所でタバコをすっていた。 火をつけて、一瞬何か動いたと思った。
そう、非常階段に誰かいる。 誰がいるのがでもちゃんと見えなかった。 だから、道路の中
央に出ていったんだ。 そしたら、かおりの携帯から電話があった。 声はボイスチェンジャ
ーで変えられていた。 その時に車にはねられたんだ」
高見の話しはそれで終わった。
「あのメモ
そう、『答えはそ・・・』はいったい」
私は確かにかおりの携帯に電話するように伝えたのはわかった。だが、メモはいったい。
高見はそのメモを見て話し出した。
「これは、事故にあって、倒れる間際に見えたもの。 それがこの事件の解決につながると思っ
た。だが、『そ』と書いた記憶はない。これは、文字の途中なんだ。 「さんずい」の途中で、書きたかったのは、「演技」という文字だったんだ」
高見はそういってタバコを投げ捨てた。
「ま、信じる、信じないは任せるよ。 とりあえず、ちょっとまだ仕事が残っているんだ。
これからまた研究所に戻らないといけない。 何かあったら携帯に連絡をしてくれ」
そういって、高見は屋上から出て行こうとした。
「高見、最後にひとつだけ。 さっき非常階段で倒れる前にエリカをマンションに入れたのか?」
エリカを信用していないわけじゃない。でも、気になっていたことだ。
「ん?てっきり、私は3人でマンションに来たと思っていたが、違うのか?」
高見はそういって屋上から降りていった。
~再びエリカ~
私はしばらく考えていた。
高見とエリカ。言っていることが食い違っている。いったいどっちが本当のことを言っているんだ。それとも、何かまだあるのだろうか?
私は悩んでいても何も変わらないから、私はエレベーターで下におりた。
6階。そこにいたのはエリカだけであった。エリカはリビングで雑誌を読んでいた。
「小林さんはどこにいったの?」
私はそこにいたエリカに声をかけた。
「知らない、帰ったんじゃない?」
そっけなくエリカは話す。ここはエリカの家でないのに、くつろいでいた。
ものすごくいやだった。こんなことを私は望んでいない。
「何しているの?」
私はエリカに複雑な思いをもって話した。
かおりの部屋をそんな風に使わないでほしい。
「何って、ゆうを待っていたのよ
もう、いいでしょ。いきましょ」
そういって、エリカは部屋を出ようとした。だが、いったいここを出て私にどこに行けというんだ。私はまだ動くわけにはいかなかった。
「エリカ、ちょっといいかな」
私は今抱いている疑問をエリカにぶつけようと思った。だが、何から聞けばいいのだろう?
私はまずは些細な質問からしていった。
「今つけている香水、エンジェルハート。
それっとどこで手に入れたの?」
そう、いつもエリカがつけていた香水は違ったはずだ。それに、この部屋に一面のエンジェルハートもあった。無関係とは思えない。でも、本当に聞きたいことはこれじゃない。
それも解っている。でもいきなり本題に入るのが怖かった。私はエリカが話しやすいことから質問していこう。私はそう決めた。
私がエリカをずっと見つめているとエリカは話し出した。
「え、ああ、かおりからもらったの。
もらったというか、なんというかね」
歯切れは悪かった。だが、かおりは確かにつけていたかもしれない。
赤いハート型の香水。そういえば、見たことがある。
「そうなんだ。
んで、このマンションに来るまでどこにいたの?」
そう、それもひとつの疑問だ。でも、まだ本題じゃない。
心臓がどきどきしているのが解る。そう、エリカのウソを暴いている。私はどこかでエリカがウソを付いていると確信していた。
小林さんと違って近くに家があるわけでもない。
それに、エリカから連絡もなかった。
どこかで何かをしていたと考えるほうが不思議じゃないのかもしれない。
エリカはが話す。
「うん、ちょっとね。用事があったの。
それより、いつまでもここにいてるのはいや。
早く行きましょ」
話をはぐらかしてきた。いったいこの間に何があったというんだ。
何かを隠している。そう感じた。
だが、どうやって聞けば話してくれる。私は考えていたが、思いつかなかった。
「ねぇ、なにだまっているの?」
エリカが話しかけてきたときに、いきなりテレビがついた。
そこに映っていたのはエリカだ。
今より若い。大きな瞳。変によそよそしく撮影している人と話しながら歩いている。
歩いている景色はよく見た景色。
そう、私が昔住んでいたアパートだ。
すぐに場面が変わる。私の部屋だ。また場面が変わる。
次はユニットでエリカが縄で縛られている。
まるで今日ライヤーから送られてきたかおりの画像そっくりに。
AVビデオ
すぐにそれとわかった。
私と付き合っていた時に、こんなことまでしていたのか。
夜働くだけじゃなく。
私はどんどん呆然としていった。いや、何かが吹っ切れたかも知れない。
目の前にいるエリカを私はちゃんと見れなくなっていた。
エリカが震えながら話し出した。
「なんで、ここにこれがあるのよ」
今までとエリカは口調が変わっていた。テレビの電源を切ろうとする。
だが、上手く切れない。映像は流れ続けている。
恍惚の表情を浮かべるエリカの顔が画面に流れる。
「これはいったい何?」
答えなんてわかっている。ただ、自分の知りたいという気持ちはとめることができなかった。
エリカが話し出した。
「わかった。 話すよ。でも、ゆうこれだけは信じて。私、ゆうのこと好きよ。
私、前に夜の世界で働いていたの。そのときに、ちょっとホストにはまって、
気がついたら借金ができていたの。それで、借金の返済で一度ビデオに出たの。
それがさっきのビデオよでも、後悔しているの。だから、ゆうと別れなきゃって思ったの。
でも、やっぱり私ゆうが好き。こんな女だといや?」
そう、話してエリカは一筋の涙を流した。私は一瞬エリカを抱きしめそうになった。
涙に弱いのかも知れない。だが、その瞬間、携帯が震えて、動きが止まった。
「そうだよね。こんな私じゃだめだよね。でも、信じて。私、ライヤーではないから
それと、さっきのビデオで思ったかもしれないけれど、かおりの写真をみて、私はまっさき
にこのビデオを思い出したわ。だから、あせったの。その確認で私、このとき撮影した場所
に行っていたの。そう、あのビデオはゆうがいないときにあのアパートでとったのよ。
すごい罪悪感があった。でも、私にはどうすることもできなかったのよ。
わかって。これがさっきの答えよ。そこにはかおりいなかったから」
エリカはそういって部屋を出ようとした。
「最後に教えてほしい。どうしてこの6階に来れたんだ?」
私は多分かける言葉は違っていたのかもしれない。
でも、口から出たのはこのセリフだった。
エリカは、かばんからポーチを取り出した。
「これ、昨日かおりのを間違えって入れちゃったんだ。
その中に、香水も、ここの鍵もあったの。
だからよ。だって、私がここに鍵持っているってしったら、真っ先にライヤーだと思われる
もの。でも、私がライヤーだったら、こんな回りくどいことしないわ。
だって、まるで何かに気がついてほしいみたいなんだもの
もう、ゆうとはこれでさよならだね。」
そういって、エリカはマンションを出て行った。
多分、もう私からもエリカに連絡はしないだろう。おそらくエリカからも。
私は自分の携帯に来たメールを見てそう思った。
そして、私は徐々に気が付いてきた。ライヤーが誰なのか。
全ての疑問は徐々に確信へと変わっていった。




