ウソ ~疑惑~
~疑惑~
「エリカ、どうしてここに?」
私は一瞬びっくりした。病院でいなくなった時にもう、家に帰っているものだと思っていた。
あれだけ待たされたら自分が置いてけぼりになったことはわかるはずだ。
だが、普段のエリカだったら連絡をしてくると思っていた。怒っているのかも。
私は単にそう思っていた。怒っている時のエリカは何を言っても聞かない。時間をあけたらまた普通に戻っているからまた時間をあけて連絡をしようと思っていた。
いや、今目の前にエリカがいるからそういう言い訳を思っているだけなのかも知れない。
だが、どうしてエリカがここにいるんだ。
私には理解が出来なかった。この部屋に来るには鍵を持っているか、中にいる人間がインターフォンで誰が来たのかを見てロックを解除するしかない。
今、この601号室にいるのは高見だけのはずだ。
そういえば、高見はどこに行ったんだ。
高見を探している中で私よりも行動を先に起こしていた人がいた。
小林さんだ。
「なんで、あなたがかおりの部屋にいるのよ。
今すぐ出て行って」
ものすごい剣幕で小林さんはエリカにそういい捨てた。少しあごを上げて上から下をみる小林さんを見ていると私が言われていなくて良かったと思った。
だが、エリカも負けていなかった。
「あなたには関係ないでしょ。それに、私あなた嫌い。ゆうをちょっと連れて行くとか言って
全然帰ってこないし。この嘘つき」
小林さんより背の低いエリカは下から小林さんを見上げていた。
見たことがないくらい眼光が鋭いエリカ。
沈黙のあと、二人が言い争い始めた。
私は二人を横に部屋の中にいるはずの高見を探した。
リビングのソファの下で横たわっている影が見えた。高見だ。
まるで気絶しているかのよう、倒れていた。
まさか、死んでいるのか。私は、おそるおそる近くにいった。
「おい、高見」
私はかけよろおうとしたら、エリカが話してきた。
「なんか高見さん、体調が悪くて横になっているみたいよ。 高見さんにここまで入れてもらっ
たの。 でないと鍵のない私はここにこれないでしょ。
でも、ゆうひどい。 ちょっと席はずすって言ってずっと戻ってこないんだもの」
エリカがそう言っていたが、わたしにはなにかひっかかっていた。
何かがおかしい。高見は確かに私がこの601号室を出る時も体調が悪そうだった。頭を抱えてうずくまっていた。だが、意識はあった。
あの状態で本当にエリカをここにあげるだろうか?
それに、小林さんに言われて気になっていたことがあった。
そうあの疑問、
『どうしてすぐに会いにこれたのか』いや、『私の会う前にどこにいたのか』
私はエリカに聞いてみた。
「なぁ、エリカ。ちゃんとこっちもどうしてエリカをこんなに待たせたのか説明するよ。
ただ、ちょっと説明する前に教えて欲しいことがあるんだ。確かに今どうしてここにいるのか
もものすごくきになるんだけれど、もう一つ気になることがあるんだ。
今日、私と会う前はどこにいたんだ。
家じゃないよな。家だとあんなに早くここにこれないから。
教えて欲しいんだ。私と会う前にどこで何をしたいたのか」
私は話しながら、自分の声がやけに低く冷静なのがわかっていた。
エリカはなにかを隠している。私は自分の声の後に明らかにエリカの様子の変わったのを見たからだ。
「それは、、、
家よ。ゆうから連絡があって用意してきて、それから着たわ。
別に早かったのはたまたまよ。 それがなにか?」
エリカが答えてすぐに小林さんが話し出した。
「じゃあ、あなたは連絡が来る前から出かける用意をしていたの。
一体どこに?
それとも、あなた今日ゆうから連絡が来るってことわかっていたんじゃないの?
だから早く用意が出来た。
それとも、ホントは家にいたんじゃなくて違うところにいたんじゃないの?」
エリカの目が一瞬大きく開いて、そして体が震えだした。
そして、細く消えそうな声でエリカは話し出した。
「ひどい、まるで私がライヤーみたいにはなすのね。 どうして私がライヤーじゃなきゃいけな
いの。 私がライヤーだっていいたいの。 もし、私がライヤーだったら、あんなヒントなん
か書かずに。かおりなんかゆうの目に付かないとこに追いやるわよ」
エリカは泣き出した。
だが、小林さんはエリカ泣いたことで余計にスイッチが入ったのか追い立ててきた。
小林さんの目に力が入ってくる。
「かおりをどこにやったのよ」
小林さんの声が響く。ただ、エリカは泣いているだけだった。
私はその光景を見ながら考えていた。確かに、エリカが犯人だとライヤーからのメールはしないだろう。いや、なにか他に意図があるのかもしれない。
それとも私はなにかを見落としているのか。
エリカがライヤーであって一番助かるのは誰だ?いや、エリカは確かになにかを隠している。
「痛~い」
鈍い音ともにエリカがこけて、カバンから携帯が出てきた。その携帯に残っている画面。
そう、忘れることなんて出来ない。
高見の携帯の待ち受けになっていた、かおりの指の画面。
「エリカ、これは一体なんだ?」
私の声が怒気を帯びていたのがわかる。今までにエリカにそんな口調で話したことなどなかった。
付き合っていたときでさえ。
エリカは一瞬固まって、そして口を開いた。
「わかった。すべて話すから。
でも、一つだけ約束して。
絶対に信じてほしいの。
だって、信じてもらえないって思ったから、いえなかった」
エリカはそうして、隠していたことを話し始めた。けれど、そのことは何の救いにもならなかった。
すくなくても私には。
~疑惑~
エリカの話しはにわかに信じがたかった。
エリカのもとに少し前からメールが来ていたという。
そのアドレスは私の携帯に一番最初に来たアドレスだ。フリーメールだが、ライヤーとだけはわかる。後はxxxxで埋め尽くされている。
エリカは話し続けた。
「はじめは、何変なの~って思ってたのよ。 でも、ゆうのことすごくわかっていて、
怪しいけれど、でも、信用できるかもって思ったの。 そして、昨日のメールがこれよ」
エリカはそういって携帯に入ったというメールを見せた。
そこには、こう書かれている。
「愚かなお嬢さん
明日であなたが想っている『ゆう』 との関係が変わるよ。
明日昼にあなたの大事な『ゆう』からメールが来るよ。
今から会わないかって感じのね。
今日が転機だよ。
望む世界か、望まない世界かはわからないけれどね。
変わるのは確かさ。
後は愚かなお嬢さん次第。
ライヤーより」
差出人はライヤー。また一緒のメールアドレスだ。私はだがそんなことでは納得できないことがあった。
「その写真はどうしたんだ?」
言葉はまだ怒気を含んでいる。私は今までエリカが隠していることを、ウソをついていることをみぬけなかったの。いや違和感はあった。でも、それは今に始まったことでもなかったから気にもしなかった。気にしないようにしていただけなのかも知れない。
だが、この画像。
待ち受けに普通するのならこんなグロテスクなものは選ばない。
そして、高見の携帯の待ち受けにも同じ画像があった。誰かが爆破前に写真で取って携帯に送らない限りこんな画像が広まるはずがない。
だが、エリカはそれにも淡々と答えていた。
「それも、メールが来たの。 画像つきだったからびっくりしたわ。 このメールよ」
エリカはそういって、また携帯を見せてきた。
「愚かなお嬢さん
賽は投げられたよ。
そして、動き始めた。この画像がその証だよ。
でも、不戦勝なんかじゃあなたの望む形には永遠にこない。
これはでも、あなたが有利な証拠さ。
愚かなお嬢さん
ライヤーより」
そのメールに添付はついていた。そう、携帯はそのままになっていたという。
私はわからなくなっていた。いや、エリカが言っていることは正しいのかもしれない。
「少し、考えさせてほしい」
私はそういって601号室を出た。非常階段を登る。違う世界が見たかった。屋上までは距離があったが別に苦にならなかった。いや、むしろ体を動かしている方がどうしてか楽だった。
屋上の扉は鍵をかざしたら普通にあいた。
どうやらこのマンションの住人なら誰でも屋上は上がれるらしい。
そして、このマンションの屋上へ上がった。たばこを取り出して外を見ていた。
そういえば、たばこをゆっくりもすえていなかったな。
私は金網にもたれながらマンションから見える景色を見ていた。
少し丘になっているところに立てられているマンション。この高さだと色んなところまでが見える。
私のマンションも見える。そういえば、小林さんのマンションも見える。
この近くに住んでいないのは高見だな。高見の住んでいるほうを見るが、ぜんぜん見えない。
当たり前だよな。
引っかかっているセリフが頭をよぎる。
「だから早く用意が出来た」
小林さんが言っていたセリフだ。
よく考えるとおかしい。なんで、高見はすぐに来れたんだ。家も遠いのに。
そして、もうひとつ。なんで小林さんはすぐ近くに住んでいるのに。
時間がかかったんだ。
考えれば考えるほど、わからなくなってくる。
「ここにいたのか?」
ふいに声がしたびっくりした。振り返るとそこにいたのは高見だった。
少しフラフラしている高見は本調子ではないのだろうと思った。
だが、手にはタバコを持っていた。かおりの部屋は灰皿がない。
それに、かおり自体がたばこを吸わないから部屋で吸うことを許さない。
だから高見も屋上に来たのだろう。
私はそう思った。
私の横で景色を眺めている高見に話しかけた。
「大丈夫なのか?」
さっきまで横になって寝ていた、いや気絶していたのかも知れない。
その高見がここにいる。いや、あの二人は下で何を話しているんだろう。かおりの部屋で。
小林さんがいるから部屋がむちゃくちゃになることはないだろう。
そんな暴挙にもしエリカが出たら強制的にエリカは外に連れ出されるだろう。
私は大きくたばこを吸い込んだ。高見が話しかけてくる。
「ああ、ちょっとくらくらしてな。非常階段で倒れこんじまったよ。
そして、気が付いたらかおりの部屋で横になってたよ。
5月とはいえ日が長くなってきたな」
空を見上げながら高見はそう言った。だが、夕焼けは徐々に暗い空へ変わってきている。
もう、暗くなってきている。
私は高見に切り出した。
「今日、高見はここに来る前はどこにいたんだ。いや、ちょっと考えたらすぐに来れたからな」
私はひやひやしながら聞いた。
「ああ、ちょっと外にいたんだ」
そういった高見に私の口は止まらなかった。
「よかったらそのときの話を聞かせてくれないか?」
いいながら私の中で疑問が疑惑というものに変わっていった。




