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第二話

今回は早く書けたと思います!第一話から続けて読むとわかりやすいです!

誤字脱字がありましたら教えてください。ご協力お願いします!

「ユートは今年も最下位に甘んじるのかい? 君の実力をハッキリと見たことがあるわけじゃないけど、リアちゃんは上位精霊なんだからもう少し上位を狙えるんじゃないかな?」

「あー、そっか。お前は去年の俺の最悪の事故を知らないんだっけ?」

 俺が懐かしむようにそう言うと、レグルスは少し考えた後首を横に振った。

「僕は入院していた、としか聞いてないね」

「現在超エリート揃いの三年一組の生徒で、しかも生徒会副会長である俺の義理の姉、ルリ姉に試合前日の模擬戦でボコボコにされて入院してたんだよ」


 一組から五組まであるクラスで、精霊祭の順位が高い順に一組から入るシステムだ。一組の生徒が優等生とは言うまでもない。

 この学園の生徒会には、三年のトップ四人が強制的になる決まりとなっていて、一番が会長、二番が副会長、三番が書記、四番が会計といったような順番になっている。

 つまりルリ姉こと俺の義理の姉は、三年の中で二番目に強い。


 それに比べて、落ちこぼれである俺は二年で最低のクラスーー二年五組に所属している。義姉弟なのに雲泥の差だ。

 そのルリ姉と精霊を手に入れたばかりである一年の俺が模擬戦を行えば、いくら加減をしていてもうっかり力を出し過ぎてしまうことぐらいあるだろう。誰だって力量がわからない相手にどれだけ手加減すればいいかなんてわかるわけがない。


「それは不幸だったね。でもユートのお姉さんも悪気があるわけじゃなさそうだし……仕方ないといえば仕方ないけど、それで最下位の劣等生にする教師もどうかと思うね」

「そうなんだよな。欠席した人は適当な順位と闘わせて決める、ってやり方だったらもう少しマシな位置にいれただろ」

「まあ、今さら去年のことを言ったところでどうかなるわけでもないんだけどね」


 苦笑するレグルスに、俺も苦笑いで応えた。

 ルリ姉と義姉弟になったのはだいたい十年前、俺が六歳の時だ。ルリ姉の両親も俺の両親も精霊使いのエリートが集まる精霊騎士団に所属していたので、仕事でたびたび家を開けることがあった。

 その際、一人っ子の俺は、当時七歳にして家事を完璧にこなしていたルリ姉の家に預けられていた。俺とは違い姉妹だったが、二人とも仲良く接してくれて、いわば家族のような関係だった。


 そして、俺が六歳の誕生日を迎えた日、両親は仕事に行っていたので、一人でケーキの準備や飾り付けをしていた。

 日付が変わる十二時前に玄関の扉が開く音がした。遅かったな……、と疑問を抱きつつも嬉しさが勝り玄関に急いで向かう。しかし、そこには両親ではなくボロボロになった体で精霊武装を杖代わりになんとか辿り着いた、といった感じのルリ姉の両親がいた。精霊武装を展開しているから魔力はあったんだろうけど、体中は悲鳴をあげていて今にも倒れそうだった。


 二人は近づいた俺をバッと抱きしめて泣き叫ぶ。子供の直感かなにかで、だいたいの予想はできてしまい、両親が死んだという話を聞いた後も涙が出ることはなかった。

 その後、仲の良かったルリ姉の家に引き取られ、現在に至るというわけだ。ルリ姉とその妹のアイリスは、俺の義理の姉と義理の妹になった。

 と昔を思い出して懐かしんでいると無意識のうちに足が止まっていた。不思議に思ったレグルスが声をかけてきて我に返った俺は、なんでもないと適当に返事をして再度歩き出す。


「そういや、お前の精霊武装ってどんなやつだっけ?」

 急に疑問に思えて聞いてみた。

 精霊武装とは、精霊の神力に近い力を武器や防具にすることで、それは精霊と共に精霊使いが闘うための手段である。相互の感情やコミュニケーションが良くないと使うことはできない。

 俺はまだ使ったことがないけど、リアが悪く思っていないなら使うことができるだろう。そんなに関係が悪くないと思っているのは、俺だけかもしれないけど。


「白虎の精霊武装は『西王の八刀やとう』だよ。魔力によって八つの刀を宙で動かすことができるのさ。そういや、ユートはまだ精霊武装を使ったことがないのかい?」

 さすがは西地域の守護者だな。精霊武装も名前に負けない強そうな名前である。

「使うことなんてそう多くないだろ。上位の人達なら模擬戦とかもするだろうけど、あんなことがあったから俺はする気になれないしな」


「それはそうだね。僕は模擬戦以外にも守護者としての仕事もあるから日常的に使ってるけど」

「そうなのか? 案外面倒な仕事っぽいな、守護者は」

「まあね。……っと、ここからは別々の道だね。また明日、ユート」

「ん、またな、レグルス」


 別れを告げて、それぞれ別々の道を歩き出した。

 会話の相手がいなくなり、自然と歩くスピードが上がった。一人で帰路を歩くほど虚しいものはない。家に帰ればアイリスが待っているだろう。生徒会の仕事があるルリ姉はいないと思うけど。

 俺の家ーー正確にはルリ姉達、ランシュミー家の家は、小さな森の中にある。迷うほど広大ではないため別段困ったりはしないけど、それでも毎日通るには面倒だった。

 森の中の入り組んだ道を進む。時々レアな精霊がいたりするんだけど、今日は気配も感じないしいないだろう。


 ぐおぉぉぉぉぉぉん!!


 低音でかなり大きい叫び声のようなものが聞こえて、すぐさま耳を塞いだ。

 鼓膜が破れるかと思った。獣精霊……にしては大きすぎるか。この森に獣精霊より大きな声を出せる精霊がいただろうか?

 この森に住む精霊は、他と比べると友好的な方なので俺もよく見回って遊んだりしているが、このような声は聞いたことがない。

 頬を嫌な汗が流れた。条件を満たすものは一つしか考えつかなかった。

 霊地の乱れによる精霊融合!

 嫌な予感がして、俺はすぐに声のした方へ走り出していた。

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