表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

幕間、『英雄幻想歌 ~最終決戦前~』

 00、クロウ


 ……俺は恋がよく解らない。


 竜はこの星が産み出した自らの守護者――彼女達は数百年前、唐突に観測された。

 物理攻撃に対する高すぎる防御力と圧倒的な膂力を持ち、強力な魔法を操る。上位種にいたっては人間以上の知能を有し、『世界の記憶』に干渉することで莫大な知識すら得る。

 その能力で『世界の敵を排除する事』を種族全体の使命として掲げる存在。

 そして、さらに恐ろしいことに竜には雌しか存在しない。

 彼女達は自らが認めた他の生物を取り込み子供を産む。産まれた子供はその生物の特徴を継承する。つまり、竜という種族は自分の意思で進化の方向を選べると言う事。

 二、三十年前――西方で一匹の竜が『人間』を取り込んで子をなした。

 産まれたのは美しい少女の姿をした人型の竜。

 その竜に恋をした人間。その思いに応えた竜。

 竜と人間の血を引いて産まれた九人の混血――竜人種。

 そんな竜人という奇跡の種族に憧れ、崇拝した人間達が作り出したのが『地之国』という宗教国家。この世界全てを人以上の存在に支配される事を望んだ地之国と、人が治める天之国は当たり前のように戦争になった。

 当初は誰もが高度に発展した魔法・科学技術を有する天之国の優勢を予想していたが、九人の竜人『九頭竜将』によりその予想は覆される。

 九頭龍将は竜を使役し、竜と融合し、その絶大な力を思うがままに振るった。

 竜人の力の前に窮地に陥った天之国。

 救うために立ち上がったのは当時十二歳の姫と六人の愉快な仲間達。

 その七人が九頭竜将の融合形態『竜魔装』と天之国に伝わる伝説の『神機』を参考に最終決戦兵器『獣騎装』を造り上げ、反撃の狼煙を上げた。

 開発期間一ヶ月。ドワーフの突貫工事で造られた機体に天才が思いつきで組んだプログラムを走らせ、損傷部分を魔法で応急処置できる俺を相棒の不思議生物と一緒に放り込んで……そんな感じに不安ばかり詰め込んで完成したのが、精霊神騎クリン・ガイアース。

 ……たぶん死ぬな~と思ったけれど、それでも良かった。


「クーにーたんが死んだら自殺してやるんだから、死ぬ気で生きてよね!」


 出撃前――義妹が俺の背中にしがみついてそんな事を言い出す。

 死ぬのは怖くない――それは背負ったモノが重すぎて死んだほうがマシだと思うから。

 それなのに、そんな俺に義妹は更なる『重荷イノチ』を背負わせる。

 ムカついた。

 無視して出撃しようとしたら、進めなかった。

 義妹が俺を放してくれなかった。

 イラついた。

 力尽くで振り払ったら、その場にへたりこんで泣き始めた。

 うわ言のように「死んじゃやらぁ」と繰り返し呟き、啜り泣く義妹……。

 

 …………………………気がつけば、初めて自分から唇を重ねていた。


 抱きしめると、その小さな身体から温もりが伝わってくる。

 胸に燃え始めたのは、この娘の望みを叶えたいと思う気持ち。

 大切で、暖かくて、愛おしくて、ずっと側にいたい、ずっと護りたいと思う暖かな感情。

 欲しい、誰にも渡したくない、いっそ壊してやりたいと思うほど狂おしく燃え上がる激情。

 これは……これがたぶん『恋』なんだと思った。


 でも、俺の大切な、俺の事を「好きだーっ!」といってくれる友人達(男女問わず)は、その感情を「それは恋じゃなくて、ただの家族愛シスコン!」だと言う……。


 …………だから、俺には恋が解らない。

 でも、別に解らなくてもいい気がした。


 それは終戦日の一幕。

 出撃した俺は心のままに獅子奮迅の大活躍。

 魔竜装状態の九頭竜将、全員を十分で撃破。

 空中移動要塞に特攻しその機能を完全破壊。

 そのまま敵の本拠に単身乗り込んで、決着。

 そんな奇蹟の原動力は――義妹への家族愛。



 ……相棒の『愛とか奇蹟とかバカにしちゃダメなんだよ!』という言葉に深く共感した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ