表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国トランスジェンダー  作者: 六三
突然性転換の巻
11/27

11:六三郎

 俺が七重を野盗から救った後、ふたりで一緒に旅をする事になった。


 七重は、物怖じしない性格なのか、知り合ったばかりの俺ともざっくばらんに喋ってくれるが、どうも訳ありの様で自分の事をあまり詳しくは話してくれない。


 まあ、いずれ話してくれる時もあるだろうと無理に聞かないでおいた。


 一緒に旅をしていて気付いたのだが、七重はこっちの国の風習や食べ物にうとい。


 遠い国から来たと七重は言っていたし、肌の色も少し浅黒いので琉球から来たんだと当たりをつけているのだが、多分当たっているんだろう。向こうとこっちではかなり風習が違うって言うからな。


 しかも育ちが良くて働いた事が無いのか、あまり体力もないらしく、どうも俺がついていてやらないと危なっかしくてしょうがない。


 仕官先を求めての旅の道中も七重は歩くのが遅く、予定していた場所まで歩く事が出来きず、すぐに弱音を吐いた。


「足がいたーい」

 と言う七重に、俺は、やれやれとため息を付く。


「大丈夫か?」


「もう歩けなーい。」


 でも、俺が仕方ねえなーとおぶってやると七重は申し訳なさそうな顔をした。

 だったら最初から弱音を吐かなければ良さそうなものだが、もしかして今日はここまでで野宿をしたかったのか?


 とはいえ、俺にも予定があるのでそうはのんびりとはしていられない。

 俺は、まあ女の子の一人くらいおぶって歩くのも修行の内かと思うことにしたが、七重が予想以上に軽いのには驚いた。


 女の子ってこんなに軽いものなのか。

 これじゃ確かに体力がないのも仕方が無いか。


 しかしこんなに軽いのに出ているところはちゃんと出てるんだよな。

 俺の背中にさっきから柔らかいものが当たってくる。いかん結構ムラムラしてきたぞ。


 だが、これくらいでムラムラしてくるからと言って、俺はもちろんチェリーではない。


 道場の兄弟子から

「女も知らんで人が切れるか!」

 と、もっともなんだか良く分からない事を言われて遊郭へと連れて行かれてとっくに経験済みだ。


 しかし遊郭では最近、南蛮人が持ち込んだという梅毒という病気が流行っていて危険そうなので軽々しく行くのも躊躇する。


 かの天下人、太閤秀吉から

「百万の軍勢の采配を任せてみたい」

 とまで言われた名将大谷吉継も梅毒にかかり、関ヶ原の戦いの時にはすでに目も見えなくなっていたという。

 それほどの男ですら病には勝てないのだ。


 そう思うと遊郭に行くのも躊躇われて、そう何度も足を運んだ訳じゃない。


 もっとも俺も、はじめは七重の事を遊郭に売られていくのなら一番初めの客にと思ったのだが……。


 しかしこうして一緒に旅をしていると、そういう心算で野盗に連れられていく七重を追いかけたと言うのが後ろめたくなってくる。

 野盗から助けた俺を無邪気に頼ってくる七重に、俺も保護欲がかき立てられてきたのだ。


 まあ、遊郭の客になる心算だった事はいずれ話して謝る事にしよう。


 だがその時は思いの外早くやってきた。


 深夜、野宿していた俺が目を覚ますと七重の姿が見えない。


 一瞬、もしやまた野盗にさらわれたか! とも思ったが、さすがにそれだけの騒ぎが起こったならその時に俺が目を覚まさない訳がない。


 七重が自分でこっそりとどこかへ行ったんだろうが、まったくどこへ行ったんだ?


 俺はやれやれと寝床から起き出した。

 俺が気配を感じられないほど離れた場所で、また七重がさらわれる可能性もあるからな。


 あちこち探し回っていると、どこからかバシャバシャという水がはねる音が聞こえてくる。

 しかも七重らしき声もするではないか。

 そして俺が、そこか? と思って音が鳴る方へと向かい、

「七重!」

 と顔を出すと、なんと七重が滝つぼで水浴びをしていた。


「な、ななななな何してんだ!? 七重!?」

 心の準備が無い状態でいきなり目の当たりにした七重の裸体に、俺はうろたえてしまった。

 ま、正直、「よっしゃ!」と思う気持ちもないではなかったが……。

 この状態ってまさか、俺、のぞきと勘違いされてないか?


「何って、水浴びよ。あんまり暑くて寝られないんだもの」

 慌てて水の中にしゃがみこんだ七重が、少しふてくされたような声で答えた。


 おいおい、無用心にも程があるだろ?

 まったく! 俺が見つけたから良かったものの、もし野盗に見つかっていたらまたさらわれるところだぞ!


「ひとりで危ないだろう! また野盗にさらわれたらどうするんだよ!?」


「さらわれないわよ」


「……って、実際さらわれてただろ!? そなたは女なんだから用心しないと!」


 七重は大丈夫と言うが、大丈夫なわけないだろう!

 どこどう考えれば大丈夫だって言うんだ? 仕方がないので、七重が滝つぼから上がるまで見張っていた。

 ……と言っても、裸の七重をジロジロ見るわけにはいかないので(そうしたいのはやまやまだったが)、七重が着替えるまでの間は背を向けて気配だけを頼りに無事を確認していた。


 あまりにも世間知らず過ぎる。これじゃ四六時中俺が着いていないと危なっかしくてしょうがない。

 とりあえず今日は良いとして、明日からはちゃんと見張っておかないとな。


 だが……と、俺はふと気付いた。それってずっと一緒に居るという事か?


 七重とずっと一緒に……か。

 まだ知り合って数日しか経っていないのにこんな気持ちになるなんて不思議だが、自分でもなぜか違和感を覚えなかった。


 滝つぼから上がった七重は着物を着て姿を見せたが、頬が幾分赤い。

 まぁちらりとは言え男に裸を見られたんだから当然か。


 見えたのは腰から上だけで、しかも七重はすぐに背を向けて水の中にしゃがんでしまったので、本当に一瞬のことだったが、予想通りの豊かな胸と濡れてつややかに光る背中はしっかりと俺の脳裏に焼きついていた。


 改めて七重を見ると、濡れた髪に小さな木の葉がついている。

 俺は無意識にその葉をつまんだ。

 俺に触れられると思ったのか、七重の体がびくっと震えた。


 「……やべーな……。俺が襲っちまうかも……」


 無邪気だった七重が俺に裸を見られて緊張していることに、俺も刺激されていたようだ。

 思わず心の声がぼそっと出てしまった。

 七重は真っ赤な顔で驚いたように俺を見て少し後ずさった。


 だが俺は逆に妙に冷静になっていた。

 男として七重を自分のものにしたいという欲望はあったが、それ以上にずっと一緒に居たいという気持ちが強いことに気づいた。


 七重のそばに居て、突拍子も無い七重の行動に振り回されるのも悪くない。

 もっと七重を知りたいし、見ていたい。

 こんな気持ちになったのは初めてだ。


「七重。俺の嫁になってくれない?」


 今ぼんやりと頭の中で形になってきた気持ちがつい口から出てきた。

 我ながら不思議なんだが、何故か俺の中に躊躇とか不安とかいうものは見当たらなかった。


 七重は更に驚いたまん丸な目をして、更に真っ赤な顔をして俺を見た。


「何を……言い出すのよ?」


「白状すると、そなたが売られてしまうなら最初の客になろうと思って後をつけてた。最初にそなたを抱くのは俺だと」

 七重が野盗に連れられていた時、遊郭に売られるものと思って最初の客になろうとしていた事を正直に話した。


 そして心からの言葉を口にした。

「そなたのような女は初めてだ」


 いつか俺も所帯を持つことになるだろうと思っていた。

 七重のような女ではなく、良き妻となるようなしとやかな女を妻にするつもりだった。


 だが、俺は妻が欲しいのではない。

 七重が欲しいから、七重を妻にしたいと思った。まったく、予想外のことだったが。


「それは、私だけ? 死ぬまで私だけを愛すると誓える? アッラーにかけて」

 七重がこれまた予想外のことを聞いてきた。

 プロポーズされた女は「はい」か「いいえ」で答えるもんだと思っていたが、条件を付けてくるとは……。

 しかも、アッラーってなんだ? 琉球の神様か?


 俺は懐から母上の形見のかんざしを取り出した。


「アッラーが何かは知らんが、このかんざしにかけて誓う」


 そして母上の形見のかんざしを七重に差し出した。いつか、妻にする女性に渡そうと思って持ち歩いていたのだ。


「これは?」


「母上の形見だ。肌身離さず身につけていた。上泉家の家紋が入っている」


 俺はかんざしを七重に差し出した。


「そなたがこれを受け取ったら、今晩そなたを俺の妻にする」


「……!!!!」


 七重は真っ赤な顔のまま絶句したが、しばらくするとそっとかんざしを受け取った。

 俺は七重を抱き上げ、そのまま草の褥に下ろした。


 俺が触れるたびに七重は体を縮込めるようにして震えた。

 野盗になんかさらわれないとあんなに強気だった七重が、俺の腕の中で小さく震えている。

 優しくしないと、傷つけてしまいそうだ……。


 七重を抱くのは俺だけだ。

 七重に触れるのも、俺だけだ。

 ずっと側にいて、誰にも傷つけられないように守ってやらないと……。


 七重を妻にした夜、俺は心の中で誓った。



 朝目を覚ますと七重がすでに先に起きていた。


「おっおはよう」


「……おはよう」


 お互い朝の挨拶をしたが、どうも照れくさい。

 七重は俯いて俺と目を合わせない。もっとも俺だって七重に正面から見つめられていたら目を逸らしてしまっていたかも知れないのだが。


 それから俺と七重は目を合わせないまま黙々と朝食の準備をした。


 そしてふたりとも黙々と飯を食べる。

 ふたりとも目を合わせずに、ただただうつむいて食べ続ける。

 しばらくその状態が続いたが、あまりの不自然さに俺は遂に、

「っふ!」と軽く噴出してしまった。


 すると七重も俯いて、

「ふふふっ」

 と笑い出した。


 七重の笑い声に俺はさらに大きく笑い、そして七重も大きく笑い出した。

 人気の無い早朝の山奥にふたりの笑い声がこだました。


 ああ、俺達は夫婦なのだ。と思った。


 そして旅は続き、兄弟子の多兵衛さんの道場を訪ねた折、茶屋で一休みする事にした俺達はふたりでお茶と団子を頼んだ。


 考えてみたら、女の子とこんな風に茶店でデートっぽいことをしたのはあのときが初めてだった。

 故郷の村で付き合っていたおふみとは、強引に押し切られる形でなんとなく付き合っていたが、稽古の合間にちょっとしゃべったり、差し入れてくれた握り飯を食べたり、祭のときに一緒に歩いたりしたぐらいだったしな。


 そう思うとなんだかくすぐったいような妙な気分だ。


 ここでも七重は無邪気さを発揮し、豪快に団子にかぶりつく。

 黙っていればどこぞの高貴な姫のようにも見えるのに、そのギャップが面白い。

 故郷の村でもおてんばな娘は居たが、七重ほど豪快な女の子は居なかったな……。七重が住んでいた国では当たり前なんだろうか?


 そんな七重を見て俺は微笑んだ。


 ずっとこう言う日が続くものだと思っていた……。



 目が覚めると道場の一室だった。


 やれやれ夢か……。昨日七重によく似た八重さんという人と会った所為だな。


 しかし本当に似てたな……。

 やや浅黒い肌の色といい、ぱっちりした大きな黒い目といい、同じ系統の顔立ちなのかもな……。


 しまった! もしかしたら八重さんも琉球から来た人だったかも知れないぞ。

 もっと色々と話を聞いていたら七重の事は直接知らなくても何か手がかりが掴めたかも知れないのに!


 くそ! だいちょんぼだ!


 七重が姿を消してから、なすすべもなくどんどん時間だけが流れていく。

 こうしていると七重と出会ったのも、夫婦になって一緒に旅をしたのも、もしかしたら夢の中の出来事なんじゃないかと弱気になってくる。


 七重と過ごしたのはほんの一週間ほどだ。

 消えた母上のかんざしと頭に焼きついた七重の面影以外何も残っていないのだ。

 そう……確かなものは何も。


 こうなったらやっぱり師匠が言っていた、失せ物や探し人の場所を言い当てる事が出来る人の居場所を聞き出すしかないか。


 しかし、師匠も最近ぼけてきているからな……。このままだと、探し人の居場所を言い当てる人を見つけられる人を探さないといけなくなりそうだぜ。


 まったく笑い話にもならない。


 俺はやれやれと布団から起き上がった。


 まず早朝から弟弟子達の稽古をつけてその後、伍助が準備した朝飯を食べる。そして飯の後はまた稽古。

 昼飯を食べてその後も稽古だ。


 弟弟子達は、

「兄弟子厳しすぎます!」

「一日中稽古じゃないですか!」

「もっと強くぶって下さい!」

 と口々に弱音? を吐いてるが構わずしごく。


 3人がかりでも伍助に遅れを取るなんて、もし俺が居ない時にまた道場破りが来たらひとたまりも無いからな。

 俺が居る内に出来るだけ鍛えておかないと。


 とはいえ、俺も長居する訳には行かない。七重を探さなくては。


 一日の稽古も終わり夕食の後、俺は師匠の部屋へと向かった。


 道場破りの新九郎と戦う前に師匠から聞いていた探し人の場所を言い当てるという者達の居場所を聞く為だ。


「六三郎です。失礼いたします」


 俺はそう師匠に声をかけ、師匠からの「うむ」と言う返事に、ふすまを開け敷居を跨ぎ、早速本題に入った。


「師匠。以前に師匠からお聞きした、探し人の場所を探し当てる事ができるという者達の居る場所なのですが、思い出しましたでしょうか」


「おお。その事かそれは間が良いことよ。今ちょうど思い出していたところじゃ」


「本当ですか! ありがとう御座います!」


 これで七重の居場所が分かるぞ!


「うむ。では早速話そう。覚えているうちに喋らなくては、また直ぐに忘れてしまうからの」


 おいおい。大丈夫か? マジでボケはじめてるな……。だが今は師匠の事よりも七重の事だ。


「それでその者達はどこに居るのでしょうか?」


「確か…………。どこだったかの?」


「師匠!」


「ほっほっほ。なに冗談じゃよ」


 まったく師匠はこう見えても結構お茶目だからな。心臓に悪いぜ。


「確か……。山城の国……京の都だった……気がするの」


 どうも頼りないな。だが今は師匠の言葉を信じるしかない。この常陸国から京まではかなりの道のりだが、それで七重の居場所が分かるなら易いものだ。


「師匠、ありがとう御座います。早速京に向かいます」


 俺は師匠に深々と頭を下げた。



「兄弟子! 行ってしまわれるんですか!」

「いつかきっと兄弟子に相応しい武士に成って見せますから待っていてください!」

「ずっと待っています!」


 出発の日の早朝、何か言っている弟弟子達に、俺は一瞥もくれず師匠へと向き直った。


「それでは師匠、行ってまいります」


「うむ。その逃げた嫁とやらが早く見つかると良いの」


「ち・が・い・ま・す! 居なくなったのです。逃げたのではありません!」


 だが俺の抗議もむなしく、やはり師匠は俺に哀れむような視線を投げかけた。まるで、いい加減に現実を認めろよ……。とでも言う様に。


 くそ。だが断じて俺は嫁に逃げられたのではない。何故か居なくなったのだ!


「では、これで」


 俺は不機嫌な表情で一礼すると師匠達に背を向けた。


 ここから京都までは20日ほどか。だが急げば17、8日で着くだろう。


 旅費は俺と新九郎が戦った時、伍助がかけの元締めをしていた時の儲けを拝借してきたのでたっぷりある。


 俺が戦って儲けたのだから当然の権利だ。もっとも急ぐ俺は街道沿いにある宿場に泊まらず、夜が更けても突き進み夜は野宿する心算なので旅費はかなり節約できるが、金は有るに越したことは無い。


 それに探し人の場所を占うという人の報酬だって必要だろう。俺がそう考えながら道を急いでいると、突然声がかかる。


「置いて行くなんてひどいっすね」


 ちっ! せっかく朝早くから出発したのに、やっぱり忍者をまくのは無理だったか。


 しかも伍助は先回りし、俺の進む先にある木の幹にもたれ掛っていた。追い付いたんなら後ろから声をかけろよ。わざわざ先回りするなんて嫌味な奴だな。


「なんでわざわざお前に声をかけにゃならんのだ。どこの世界に自分の身体を狙う相手を自分で呼寄せる奴がいるんだよ」


 俺は顔をしかめて冷たく言い放ったが、伍助はいつも通り何処吹く風だ。


「なに言ってんすか。俺が六さんを押し倒す事に成功したら俺のものになるって約束でしょ? だったらちゃんと俺にも声をかけて貰わないと約束が違うじゃないっすか」


 おいおい。どこまで拡大解釈する心算だ。まったくここまで自分勝手な奴も珍しい。だが俺が伍助に言い返そうと思ったその時、後ろからまた声が掛かった。


「その話、俺も乗った!」


 俺と伍助が気配に気付かないとは……。俺と伍助が声のする方を見ると、やっぱりと言うべきか新九郎が立っていた。


「俺も乗ったってなんのこと?」


 伍助が新九郎に問いかけると、新九郎は近づき俺を見つめながら答える。

 おいおい、かなり気持ち悪いぞ。


「お前を押し倒すのに成功すれば、お前を手に入れられるなんて良い話、どうして俺に黙ってたんだ」


 いやいや、どうしてお前に言わなきゃならんのだ。そう思って口を開こうとすると先に伍助が口を開いた。


「何言ってんだよ。俺と六さんはちゃんと理由があってそういう話になってんの。お前を混ぜてやる言われはねえよ」


 そして五助はそう言うと新九郎に、シッシと手を振った。



挿絵(By みてみん)


 あー、もういいや、とりあえず伍助に任そう。俺はそう思って後ろに下がった。


「どんな理由だ言ってみろ」


「一回薬を使った時に六さんを押し倒すのに成功しそうだったんだがな、薬を使わずに押し倒せたら諦めて俺のものになるって約束してくれたんだ。なにせ薬を使って押し倒してもその一回限りだからな」


「ちっ、薬は使っちゃダメなのか」


 新九郎はそう言って舌打ちをする。


 おいおい薬を使う気まんまんだったのかよ。危ない奴とは思っていたが、こんなのと伍助と両方から狙われたらたまったものじゃないな。


「六さんとの決闘に負けたお前が、薬を使わずに六さんを押し倒せるわけ無いだろ? 諦めてとっと帰れよ」


「ふっ。夜這いすれば問題ねぇだろ」


「六さんの傍には俺が居るんだぞ? 夜這いなんてさせるかよ」


 伍助はいつも通りの余裕を持った態度で返答していたが、次の新九郎の言葉に顔色を変えた。


「だったら俺は、お前の夜這いを邪魔してやるろう」


「あ。てめえ! 何言ってやがる。人の恋路の邪魔をして楽しいのかよ」


「ああ。楽しいな」


 うむ。結構話が長引きそうだな。よしこのままふたりとも置いていこう。

 俺は気配を消して気付かれない様にふたりから離れると、先を急いだ。


 今日中に常陸国を出れれば良いんだが、と、俺は足を速める。だがしばらくすると後ろから声がする。


「六さーん。なに俺をおいてってんすか!」


「お前なに考えてやがんだ!」


 くそっ。やっぱり追いかけてきたか。


「俺は先を急ぐんだよ。のんびりとお前らの相手なんてしていられるか!」


 俺はふたりを無視して先を急いだが、ふたりはめげずに俺の後についてきやがる。


「だからついてくんなって!」


 俺は駆け足になる一歩手前の様な足取りで先を急ぐが、ふたりも負けじと、

「そりゃないっすよ!」

「俺はあきらめんぞ!」

 と着いてくる。


 こうして、何故か俺の身体を狙う男が二人となり、俺の嫁を探す旅は続くのだった。


更新が遅くなり申し訳ありません。

六三郎の七重への気持ちを書くのに苦労しました。

感想・アドバイス等ありましたら、是非お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一言感想など
お気軽にコメント頂ければ嬉しいです。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ