猫
三題噺もどき―きゅうひゃくよんじゅう。
しんとした部屋の中に。
扇風機の音が聞こえている。
外からはたまに車の音。
「……」
薄いカーテンは外の光を通して、その光で部屋を満たす。
水色の光になった陽光は、まるで暑さなどないように涼やかな色で入り込んでくる。
ぼうっとしていれば、水中にでもいるような気分になれるこの部屋は、割と好きだ。
「……」
単に好きな色が青とか水色とかなだけかもしれないけれど。
自分の部屋が落ち着く場所になるのは、誰も居ない時くらいだ。
今日だって、この家には私以外誰も居ない。
「……」
妹2人は部活。
母は当然のように仕事。
私も学生の身ではあるけれど、今日は土曜授業もない。
だから、こうして、ベッドに寝転がっている。
「……」
こうしていると、なぜかくるくると腹が鳴る。
朝食は一応、食べた。
母が勘違いをして、いつも通りの朝食を作ってくれたので。
今日は目玉焼きにご飯にお味噌汁という組み合わせだった。
悪くはないし、作ってもらっている立場なので文句は言わないが……。
「……」
食べてしまえば何でも同じだからいいか。
と思いつつ、なんとか腹に収めた。
今日はこのまま昼食も食べずにいてもいいくらいには満たされている。
空腹ではなくても鳴るのだから、不思議だ。消化中という事だろうか。
「……」
外から、猫の鳴く声が聞こえた。
最近は見なくなったと思ったが、まだこの辺りに居たらしい。
―と思ったが、その音源は私の手元から鳴っていた。
「……」
手を伸ばした先にあるスマホ。
そこから猫の鳴く声が聞こえていた。
まぁ、変な姿勢で寝転がっているので、そういう事もある。
「……」
特にすることもなく、ゴロゴロとしながら、ショート動画を眺めていた。
それに飽きたわけでもないけれど、たまにぼうっとしてしまって、動画の事を忘れてしまう。
けれど指は動いているし、視界には入っているから、忘れているわけではないのかもしれない。分からない。
「……」
動画の中の猫は、床の色と同化して思わず踏むところだったと、飼い主の一言が躍っている。
まぁ、確かにその色なら完全に同化してしまうかもしれない。
そこはでも、飼い主の仕事というか……変えるべきでは?踏んでしまって何かがあってからでは遅いだろうに。
「……」
猫なんて隠れることは上手いに決まっているだろうに。
野生の猫とか、どこに居るのかも分からないのに普通に歩き回っている。どこかから沸いているんだろうかとたまに思う。そんな訳はないが。
寝床とか、見たことない。
「……」
家猫でも、いなくなって探し回ったらこんな所に居た、というのをよく目にする。
猫本人は、何を慌てて、みたいな顔をしているのがまた可愛らしいのだけど。
人間からしたら、死活問題並に必死なんだろう。生憎、ペットというモノを飼ったことがないので、心境を完全にはかり知ることは出来ないが。
「……」
どんな所でも顔が通れば入れてしまうらしいし、暗闇でも夜目が効くし。
液体と勘違いしてしまう程に、どんな形にもなれてしまう。
猫ってホントに不思議な生き物だよなぁ。
「……」
気まぐれで、警戒心は強くて。
それでも甘えるときは全力かと思うくらいに甘えてきて。
かと思えば、突き放すような仕草をしてくる。
それもすべて可愛いんだから、猫とは不思議で罪な生き物だ。
「……」
まぁ。
私が一番可愛いと思っているのは、あの子だけなので。
あの子がいる限り、猫は飼えそうにもない。
お題:猫・同化・目玉焼き




