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夕焼けと、水切りの少女

作者: 遅筆屋Con-Kon
掲載日:2026/04/27

 ───河原は、燃えるような夕焼けに包まれていた。


 周囲が濃いオレンジ色に染まり、家々の向こうからは、子供たちに帰宅を促す町内放送のチャイムが聞こえてくる。


 男の子は平らな小石を選び取ると、低く構えた。鋭く空を切るようなスイング。放たれた石は水面を三度、軽快に跳ねてから、ぽちゃんと静かに水底へ沈んだ。


 「おぉー。すごいね!」

「……だれ?」


 気がつくと、一人の女の子がすぐそばに立っていた。好奇心を隠そうともしない瞳が、男の子を真っ直ぐに射抜く。


 男の子は一瞬だけ女の子を盗み見たが、すぐに興味がなさそうなふりをして次の石を探し始めた。


 「わたしはみう。きみの名前は?」

「……教えない」

「えぇー?」

「男は、少しくらいミステリアスな方がかっこいいんだぞ」


 背伸びをしたセリフを吐き捨て、二投目を投じる。石は今度は四回跳ね、先ほどよりも遠くで沈んだ。


 「ねぇ、やり方教えてよ」

「やだ」

「えぇー?」

「こういうのは、見て覚えるもんだ」

「わかった!」


 少女は素直に頷くと、少し離れた場所にしゃがみ込み、じぃっと観察を始めた。


 「……」

「……♪」

「……ねぇ」

「なぁに?」

「そんなに見られると、やりにくいんだけど」

「見て覚えろ、って言ったのは君でしょ?」

「そうだけど……」


 男子のプライドが、かすかな動揺に揺れる。彼は気まずさを紛らわすように足元の石を蹴ると、近くに放り出していたランドセルを乱暴に担ぎ上げた。


 「もう帰るの?」

「……良い子は帰る時間なんだよ」

「またここに来る?」

「気が向いたらな」

「ふぅん」


 女の子はすっくと立ち上がった。足元から適当な石を拾い上げると、無造作に、しかし流れるような動作で腕を振る。


 少女が放った小石は、水面を八回、九回と高速で刻み、あろうことか対岸の砂利までたどり着いた。


 「じゃあ、また明日ね!」


 唖然とする男の子を置き去りにして、女の子は大きく手を振り、軽やかな足取りで走り去っていった。


 「……なんなんだよ、あいつ」


 男の子は、自分がさっきまで「師匠面」をしていた恥ずかしさに顔を赤くし、逃げるように家路を急いだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

少しでもお楽しみいただけたなら、幸いです。

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