奴隷 転生したら知り合いは転移していた件のchatgpt版
――奴隷。
我が国において、一度その身分に落ちた者は、国王もしくは大臣の許可なくして復権は叶わない。
それが、この国の法であり、現実だ。
そんな奴隷市で、私は見覚えのある顔を見つけてしまった。
商人や貴族が奴隷を購入し、使役することは許されている。
だが、知人を――かつて同じ目線で言葉を交わした相手を、鎖につないで扱うとなれば話は別だ。
私の心が、先に折れる。
だから私は、ひとつの妥協を選んだ。
知己の貴族の中でも、比較的“まとも”な扱いをすると評判のヨクラン伯へと、彼女を送り込むことに成功したのだ。
女癖は悪いが、暴力や飢えとは無縁な男だ。
この国では、それだけで「善良」と呼ばれる。
数か月後、ヨクラン伯に会った際、彼女は無事――奴隷でありながら、愛妾という立場を得ていた。
本人の意思はさておき、私は胸を撫で下ろした。
紹介の礼として、複数行為への招待を受けたが、丁重に辞退した。
さすがに、それは越えられない一線だ。
無論、我が子爵家も多数の奴隷を抱えている。
大半は家政、残りは土木だ。
奴隷なくして、貴族も商人も仕事は回らない。
結果、軽犯罪で奴隷に落ちる者は後を絶たない。
貴族の前で裸を見せた農民。
水浴びだと言い張っていたが、川だろうが何だろうが、法は情を汲まない。
都市労働力の多くが、そうした軽犯罪者で賄われている現状は、果たして嘆くべきなのだろうか。
――まあ、下っ端貴族の私が考えても無意味だが。
私や彼女のように、現代日本からの転生者もこの国には少なからずいる。
彼女たちにとって、この制度は理不尽そのものだろう。
彼女の罪は「人前で靴を脱いだこと」だった。
この国では、ベッド以外で衣服を脱ぐ女は痴女と見なされる。
結果、外で下着姿になった女として扱われ、奴隷に落とされた。
公表したくない話だ。
パンイチの女を奴隷に買った、などと。
保身は大切である。
ちなみに、国王が路上で裸踊りをしても軽犯罪にはならない。
貴族以上は、軽犯罪で捕まらないのだ。
実に安心な制度である。
実際、やった馬鹿がいる。
貴族子弟の集まる学校で聞いた話だ。
当時は叱責を受けたが、今やその男――オリヒニウ公爵は政務大臣である。
お茶目で済む立場というのは、強い。
我が国では卒業後、騎士、主計部、編纂部などに配属される。
能力本位で指揮官や管理職が選ばれるため、男爵令息が公爵令息に命令を飛ばすことも珍しくない。
家格とは何なのか。
もっとも、大臣級になると家格が物を言う。
だが凡人の上に立つのは、往々にして実務派の副官だ。
そのおかげで、国は辛うじて回っていた。
――あいつが現れるまでは。
雷光とともに現れた男は、高位貴族を皆殺しにし、奴隷解放を掲げ、我が国を崩壊させた。
最期は、低位貴族出身の指揮官に討ち取られたが、遅すぎた。
その後は、地獄だった。
奴隷を虐げてきた家が襲撃され、火災が相次ぎ、暴動は連鎖した。
他国が侵攻を躊躇するほどに、国は荒れ果てた。
軍事政権が暫定的に樹立され、治安出動と国境警備でようやく沈静化したが、
首都再建、奴隷制度の見直しなど、議案は山積みだった。
我が子爵家からも、奴隷でありながら高等教育を受けた者を多数出すことになった。
彼女もヨクラン家解体により我が家の所属となり、人手不足の家政に回された。
愛妾などと言っていられる状況ではない。
軍事政権とはいえ、担い手は貴族学校出身者だ。
実力主義のおかげで副官経験者も多く、政務は概ね滞りなく進んだ。
そして、軽犯罪奴隷に対する恩赦――五年以上の刑期を持つ者の解放が告知された。
多くはそのまま主家に雇われ、帰郷を望む者は田舎へ戻った。
彼女は、残念ながら刑期が残っている。
ゆえに、今も当家の家政奴隷だ。
私の目に触れぬ場所に配属してはいるが――
恨まれているだろうな。




