カップ・イン・ドリーム ~夕暮れのクリスマスに~
季節外れで申し訳ないですm(_ _)m
今日はクリスマス。
僕は六歳の娘といっしょにケーキを買いに近くの商店街まで来ていた。幸いなことに今年はホワイトクリスマスになって、娘も大はしゃぎだ。
ここはあまり雪の降らない土地なので、こうしてホワイトクリスマスを迎えられたことは僥倖といえる。
「おとーさん、どんなケーキがあるかな?」
一人娘の由紀が僕の手を握り、期待に満ち溢れた顔で聞いてきた。
「ん? 由紀の好きなケーキを買ってあげるよ」
「ホント? おとーさん、ありがとー」
僕は本当に娘には甘い。よく妻にも言われるがこの笑顔を曇らせたくはないからね。
商店街はクリスマスと言うだけあって活気があった。クリスマスももう終盤というだけあって、セールをはじめている店もある。
「ねえ、おとーさん、あれ何ー? 同じ色のコップが並んでるよ?」
由紀が指差しているのは、店先に並んでいるセール中の品だった。
「ああ、これはね。ペアカップだよ」
「ぺあかっぷ?」
「うん。仲のいい男の人と女の人が、仲良くなった記念に買うんだよ」
「でもおとーさんとおかーさんは持ってないよね? 仲良くないの……?」
由紀が一瞬泣きそうな顔になったけど、僕は笑顔を向けて、
「お母さんは恥ずかしがり屋さんだからね。こういうのはあんまり買わないんだ」
と、優しく説いた。実際僕の妻は結構な恥ずかしがり屋で、あまり『恋人』な物を買った記憶がない。
「そっかあ。よかった……。……それじゃあ私に買って」
「……え。どうして?」
「だって、仲のいい男の人と女の人が買うんでしょ? じゃあお父さんと私でもいいよね?」
「う〜ん……。こういうのはね、お父さんじゃなくて、もっと仲のいい男の子のお友達が出来たら買いなさい」
「お父さんより仲のいいお友達なんていないよ」
それはお父さんとしては嬉しいんだけどね……。
「由紀は優しいからきっと出来るよ」
「私は、お父さんがいいのー」
お父さん嬉しくて涙が出そうだよ。
「ありがとう。でもお父さんは由紀と一緒にケーキを食べるほうが嬉しいな〜」
「う〜ん……。じゃあケーキで我慢してあげる。でもペアカップもいつか買ってね」
「はいはい。それじゃあ行こうか」
「うん!」
そうして由紀は嬉しそうに僕のコートに飛びついてきた。
今年も良いクリスマスになりそうだ。
あれから二十年後。娘夫婦の食器棚には一組のペアカップが置いてあります。
批評どんどん下さい! なるべく具体的にお願いです><