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第五話 魔石無双とカタコトの警告、そして迫る危機

 魔石の力を手に入れたカイトは、俄然張り切っていた。

 道中現れる魔物を見つけるたびに、「ここは俺の出番だ!」とばかりに前に飛び出し、魔石から溢れる魔力で魔法を連発する。


「くらえ! 魔石エンハンス・ファイアーボール!」


 以前は豆粒ほどだった炎の玉が、今やスイカほどの大きさに成長し、魔物をド派手に吹き飛ばす。

 その様子は、さながら一人無双ゲームのようだった。


「すごい! カイト、つよい!」


 リリアも目をキラキラさせながら、カイトの活躍を応援している。


 しかしリーナはそんなカイトの戦いぶりに眉をひそめていた。


「カイト、少しは魔力の制御を意識しろ。無駄に魔力を使いすぎだ」


「大丈夫ですよ、リーナさん! この魔石があれば、いくらでも魔力が出てくる気がしますし! それに、早く魔物を倒した方が、早く目的地に着きますから!」


 カイトはそう言ってリーナの忠告をどこ吹く風とばかりに、さらに勢いよく魔法を放つ。


「ほら、リーナさんも見ててください! 魔石の力、まだまだこんなもんじゃないですよ! 魔石ボンバー!」


 今度は複数の小さな火の玉を雨のように降らせる魔法を繰り出した。

 威力はそこそこだが、見た目は派手だ。


「(全く……調子に乗りすぎだ)」


 リーナは内心でため息をついたが、カイトの魔法が魔物を確実に倒しているのも事実だったため、強くは咎めなかった。


 そんな調子で遺跡探索を進めていくうちに、カイトたちはいつの間にか、これまで誰にも踏み荒らされたことのないような、ひっそりとした場所に辿り着いていた。

 壁には見たことのない複雑な模様が描かれ、床には奇妙な機械の残骸が散らばっている。


「うわー、ここまですごい遺跡が残ってるなんて! まるで、ラノベに出てくる隠しダンジョンみたいだ!」


 カイトは興奮を隠せない様子で辺りを見回した。

 リーナも警戒しながらも、周囲の様子を注意深く観察している。


「見たところ、魔物の気配はないな。だが、油断はするなよ」


 さらに奥へと進んでいくと、巨大な空間に出た。

 そこには複雑な配管が張り巡らされ、中央には見たこともない巨大な機械が鎮座している。

 鈍い光を放つその機械からは、微かに「ジィー……」という低い音が聞こえてくる。


「なんだこれ……? まるで、SF映画に出てくる装置みたいだ!」


 カイトは目を丸くして機械を見つめた。

 リーナもその異様な光景に、言葉を失っているようだった。


「これが……アステト文明の遺物なのか?」


「……ちかい。あぶない、きがする」


 リリアは不安そうに周囲を見回し、リーナの服の裾を引っ張りながらそう言った。


 リーナはリリアの言葉に一瞬顔を曇らせたが、すぐに周囲への警戒を強めた。


 その直後だった。


 突然けたたましい警報音が空間に響き渡ったのだ!


「ピピピピピ……!」


「な、なんだ!?」


 カイトが慌てて周囲を見回すと、巨大な機械の奥からゆっくりと人影のようなものが現れた。

 それは人の大きさほどもある、全身が硬質な石でできた像だった。

 無機質な目がカイトたちを捉える。


「あれは……石像兵器か!?」


 リーナはすぐに剣を構え、警戒態勢に入った。


 石像兵器はまるで意思を持っているかのように、ゆっくりとこちらに向かってくる。

 その動きは鈍重に見えたが、一歩踏み出すごとに、床が僅かに震動した。


「こいつ、動くぞ! どうする、リーナさん!」


 カイトが焦って尋ねると、リーナは冷静に指示を出した。


「リリアを連れて、一旦後ろに下がれ! 私がこいつの動きを止める!」


 リーナは一歩前に踏み出し、石像兵器に斬りかかった。

 鋭い剣閃が石の体に当たるが、まるで手応えがない。


「硬い! 並の攻撃では通用しないか!」


 リーナが苦戦している間に、別の石像兵器も起動し、ゆっくりとこちらに近づいてくる。


「やばい、二体もいる!」


 カイトはリリアの手を強く握り、後退しようとした。


「リリア、こっち!」


 しかし石像兵器の動きは意外に速い。

 あっという間に一体がカイトたちの目の前に迫ってきた。


「くそっ、こうなったら!」


 カイトは手に持った魔石にありったけの魔力を込めた。


「魔石究極奥義! メガ・ファイアーボール!!!」


 先ほどの比ではない、巨大な炎の塊がカイトの手のひらに出現した。

 しかしあまりにも強大な魔力に、カイト自身も制御しきれず体が大きく揺らぐ。


 渾身の力を込めて放たれた炎の塊は、石像兵器に直撃した。

 爆発的な炎が空間を包み込み、石像兵器の動きを一時的に止めた。


「今だ! 逃げるぞ!」


 リーナはカイトとリリアの手を取り、来た道を戻ろうとした。


「はやく!」


 しかし背後では、先ほどの炎を浴びた石像兵器がまるで何事もなかったかのように、再び動き出していたのだ。

 表面の石がわずかに焼け焦げているだけで、完全に破壊するには至っていない。


「な……! また、うごく!」


 リリアは恐怖で目を大きく見開いた。


「な……! 再生するのか!?」


 リーナの表情に焦りの色が浮かんだ。

 石像兵器はまるで不死身のように、再びゆっくりと、しかし確実にカイトたちに迫ってくる。


「まずい……このままでは、囲まれてしまう!」


 リーナはそう言うと、カイトとリリアを振り返り厳しい表情で告げた。


「撤退する! ここは危険すぎる!」


 カイトも再生する石像兵器の恐ろしさを目の当たりにし、リーナの言葉に頷くしかなかった。

 せっかく最深部まで辿り着いたというのに、今は逃げることしかできない。

 魔石の力も、この頑丈な敵には通用しないのか……。

 リリアのカタコトの警告は、的中してしまった。


 古代遺跡の奥深くで、カイトたちの魔石無双は終わりを告げ、カタコトの警告通り、命の危機が迫っていた。

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