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(2時限目は保健室につき)3時限目、化学

 ルリマツリは、奪われた自身の角を見つけたいと言った。故郷に帰るため、そして強奪した犯人から不死を取り返すため。

 角がないために故郷を出され、その上、犯人への復讐防止のために、記憶が消されたルリマツリが犯人の正体に近づけたのは、2つのお陰だった。

 1つ、ルリマツリに薄っすらながらも、記憶の名残りがあったこと。それでこの町に犯人がいると感じたそうだ。私にはただの勘にしか思えないが、ルリマツリは確かだと言う。

 2つ、ルリマツリの同郷の者の証言。曰く、犯人は7、8歳の少年であった、と。だからこそ、ルリマツリはこの高校に転入したのだ。8年経った今、きっと少年は高校生になっているから。

 ルリマツリはこの町中の高校に、虱潰し的に転入して犯人を探した。この学校が最後の高校らしい、私の通うここが。

 ここに探し人が居なければ、犯人は町を出たことになる。そうしたら、追うのは格段に厳しい。

 だが、

「こうね。分かった?」

「はいっ!かたじけないですが、真ん中の式変形が分からぬので、説明をお頼み申します。」

「…うん、オッケイ。そんな敬語使わなくていいからね?」

 だが、ルリマツリはどうにも呑気である。今も、時代劇映画風敬語を使って、鉄壁とさえ呼ばれる理科教師・那島(なしま)を戸惑わせている。

 とは言え、那島が混乱を見せたのは一瞬で、すぐにいつもの冷静な顔で、眼鏡のブリッチを上げた。

「ここで合ってる?そうだね、確かに分かりづらいかも。説明しよう。」

 説明を聞き流し、私は頬杖をつく。考えるのはルリマツリの角のことだった。果たして7歳か8歳で、ユニコーンの角が盗れるものなのか?どうやって盗る?どこで会った?分からないことばかりだ。母か師匠に助言が求められるといいのだが、今日家に居るかな。

「こうゆうこと。どう?」

「なるほど!相分かった!…のです!」

 にぱっと笑顔を振りまくルリマツリ。那島は軽く頷く。基本、授業中の"分かった?"に"分からない!"を返せる生徒はいないので、彼がどう思ったのかは計り知れない。

「しかし不思議じゃのぅ。かように説明できるのなら、最初から説明して頂きとうござる。ケチじゃなの。」

「んふ。」

 ルリマツリにその意は無いのかもしれないが、変な言葉遣いのせいか馬鹿にしているようにしか聞こえない。那島については、私の所属部活を見下す発言をして以来嫌いだったので、心中爽やかであった。

 那島は動じずに、ニヤニヤし出すクラスメイトを仏頂面であしらった。

           ★

「トリカブトよ、飲み物が欲しいから、自販機の場所に案内してくれ。」

 本から渋々顔を上げ、人差し指を下へ向けた。

「そこの階段下りて、右。」

「分からぬ分からぬ。そこまで一緒に行ってくれ。」

「えー、……。」

 不平を垂れかけたが、ルリマツリの目が一瞬鋭くなり、事情を理解した。

「いいよ、行こうか。」

 角関連の話だ。

「かたじけない〜!」

 ルリマツリと階段を下り、自販機から少し移動した校舎裏で止まる。放課後にもならないと、ここは人がいない。私はルリマツリに頷きかけた。頷きを返してから、ルリマツリが口火を切った。  

 鋭利なみ空色。

 風が吹き、気温が下がった気がした。

「那島という教師について、教えとくれ。」

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