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少しでも力になれますように

サークル企画 三本目 天ぷら

作者: 武内将校

天ぷら


 これだ。見た瞬間確信があった。探し求めていた天ぷらが、海老天がなんとなく歩いていた街の死角から飛び込んできた。確信を持てばやることはただ一つ。

「ごめんくださ~い……」

「いらっしゃいませぇぃ!」

暖簾をくぐってがらがらと引き戸を開けると威勢のいい店主が出迎える。

(店主の対応もいいな……)

店に入った瞬間からじゅわぁあという勢いよく天ぷらが揚がるいい音が聞こえてくる。それなのに店内は変に油

臭くない。これは存分に味を堪能できそうだ。

カウンターに着くと、

「いらっしゃいませ!ご注文お決まりですか?」

とこれまた元気よく店主が訊ねてくる。

「あー、海老天……3本!お願いします!」

「おぉ!お客さん3本も行きますか!ありがとうございます、海老天三本ね!」

 そう言って海老天を作り始める店主。カウンターからは店主の手元が見れないので想像で待つしかない。しばらくすると、店に入った時にも聞いたじゅわぁあという音が聞こえてきた。それと同時に小さくぱちっぱちっとはじける音も聞こえてくる。

 しばらく待っていると、

「あいよ!海老天三本お待ちどうさま!抹茶塩と普通の塩あるからお好みでどうぞ!」

「ありがとうございます!それじゃ、いただきます……」

 言うが早いか、さっそくその大ぶりなエビの尻尾を箸でつまみ、塩につける。

 カリッ、ザクッ、さくっ、ぷりっ、じゅわっ

 一口で塩の旨味と海老の旨味と共に様々な食感が口の中を駆け巡る。

「うんま……」

 気づけば自然と口から賞賛の言葉が漏れていた。もっと、「美味い‼」という反応になるかと身構えていたのだが。わざとではなく、自然と、自分の内から漏れ出てきた賞賛の言葉。あとはもう夢中だった。一本目を尻尾まで食べ終える。尻尾までもうまかったのだが、それが更に箸を加速させた。

 抹茶塩につけて食べる。抹茶のほのかな苦みが塩の旨味と海老の旨味に更に勢いをつける。気づけば勢いそのまま二本目も平らげてしまっていた。だが、ここで一つ、問題が発生した。

「三本目、どうやって食べるか……」

 普通の塩も抹茶塩も両方美味かった。だが、中途半端に余った一本。この一本が冷めて味を損なう前に最高の味わい方を決めなければいけなかった。


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