1日目 青春の始まりと終わり
「オ…ボ、ボクと!つつつつ、つ、付き合って!くださぃい!」
「ごめんなさい。ムリです。」
_____なぜ、俺がこんな冷たく振られているのか。それはとてもとてーも、深い過去があるのだ…
♦︎
入学初日
「いやーっ!今日からは晴れて俺も高校生!って訳か!なんか複雑な心境だなー」
「なに独り言呟いてるの…キモいからさっさと朝飯食べなさい。」
朝からキモいの一言を頂きました。丁重に俺の脳内ゴミ箱に捨てさせていただく所存です。…いや、このゴミ結構デカくね?捨てれないんですが。
「何ていう顔してるのお兄…キモいからやめて。てかやめろ。」
これまたキツイ一言を…お兄ちゃんは心が痛くて泣きそうよ?てか、この種類のゴミデカイな。やっぱ入らないよ。お兄ちゃんの脳内ゴミ箱には収まりきらないよ。もうダメだって悲鳴を上げてるよ?可哀想にならないの?てか本来なるべきだよ?
「はあ。二人ともキモいキモいって…なんか辛いわ。てか、これが普通の顔だから!変な顔はしてねーから!ディスイズノーマルフェイス!!」
「朝から耳痛いわ。はあ…こんな兄を持つとこんなにも疲労を感じることになるとは…。なんか…もう…行ってきます。」
「おまっ!?鍵は俺に残しとけ!」
家の家の鍵は二つ。一つは母さん用。いつもは家を開けないで家で家事をおこなっている母だが、買い物に行く時なんかも勿論ある。その為、この鍵は母さんが自分でもっている。
もう一つは今妹が持って行った鍵。本来は俺用であったが、妹が中学になると同時にいきなり反抗期になってしまった為、仕方なく譲っている。とは言え、今日は俺に返してほしい。
「ったく、入学式だから早くに帰って来るのに…あいつ。」
「まあ良いじゃない。今日は家にいるから、ピンポンしたら開けるわよ。」
「そっか。ならまあ…とはならんなあ。」
最近の妹の所業には目に余るものがある。態度は無愛想だし、靴下は散らかしっぱなし。挙句の果てに、兄に対してのあの口の利き方だ。流石に許せん。てか、兄としてのプライドが許せん。
「…今日はビシッと言ってやるか。」
革靴を履くと心なしか大人になった気がする。制服もネクタイもしっかりと着こなし、ドアノブを握る。冷たくて手を離しそうになったが、喜びの方が強かったのか、逆により握ってしまった。
そして、さらに強くドアノブを握りしめた。それは、俺自身の意気込みをしたからだ。
俺はこの高校生活の三年間で、青春を謳歌するっ!!
…と。
「ほんじゃ、まあ行ってくる。」
「行ってらっしゃい。気をつけなよ。」
俺の足は喜びと期待を隠せないまま廊下へ着地した。
♦︎
俺は妹の後を急いで追いかけていた。今日こそはガツンと言ってやりたい。という意志もあるが、本命は別の理由だ。それは…
「八時五分…ギリギリか…!?」
初日にて遅刻になりそうという事だ。
「…ん?」
妹が不思議そうにコチラを見つめた。すると同時に
「ーっうわ!!」
と低い声で驚き声を上げた。
「ビックリしたーっ。鼻息荒いから怖くて後ろみたらお兄とか…これはホラー映画の現場かなんかなの?」
「お前ホント失礼よな!?」
コイツ…!!いや、そんなこと思ってる場合じゃない!
「そんな事よりお前、最近俺に対しての態度が…」
突然、フラッと甘い香りがした。肺にズシッとくるような匂いではなく、喉をサーッと通るような感じ。香水が大嫌いな俺でも、良い匂いと思ってしまう程。
目の前には短めの髪が空中を踊っており、一本一本がまるで踊り子のように綺麗で、艶かしい。
チラッとうなじが見えた。肌は白く、まるで病人のような色である。まさに"綺麗な女性"の代表である。
顔が見えた。俺は心が締め付けられた。しかしそれは痛くなく、むしろ快感に思えた。この気持ちを体験するのは二度目である。忘れたりはしない。これは…
「_____綺麗だ。」
恋だ。