少女がみた光
初めての小説執筆であり、小説投下の処女作です。
誤字脱字や文章のおかしい箇所は大目にお願いします。
本作を公開する前に推敲してくれた友人に感謝します
オバマの街は大きく沢山の人が住み、栄華を極めた市街地は人々で賑わいを見せ、いつどきも話題が絶えず、人々が楽しく暮らしていた。そんな街に憧れ、また多くの者が訪れる国内最大の大都市であった。
しかし、それはもう過去の話だ。あちこちで火が上がり、それは昼間のように明るく街を照らしその光を次々と広げている。
ある場所では人が焼け、煙を吸って倒れるものや逃げる際に怪我をし動けなくなったものを次々と呑み込んでいく。
だが奇妙なことに人々は街の外へ逃げようとせず、中へ中へ我先にと押し寄せていく。
人々が逃げる先には城壁があり、門があった。そう、まるで火より恐ろしいものがあり、それらから逃げ城壁の内側へ逃げるしか生き残るすべがないと感じさせられるほどだ。
突如、火が激しい方から獣のうめき声が聞こえてきたかと思うと、ヒグマより一回りほど大きな狼のような獣が火から飛び出し、周囲のものを破壊しながら逃げ遅れた人を鋭い牙でかみ砕き、頬張っていく。
一匹が現れたのを皮切りに、硬い甲羅に覆われたようなものや蜘蛛の形をしたもの、二足で歩き手に鈍器となるものを持ち、人間を家畜化する人の形に近いもの様々な魔獣が現れ、街を破壊し人を次々と襲っていく。
みな火よりも魔獣に殺されることから逃れ、対抗できる武力がある城壁の内側へ逃れるため、門の方へと逃げていたのだ。
だが、開いている門の周囲に武装したものは数人しかおらず、到底門へと向かってきている魔獣から守り切れないことは誰の目にも明らかだ。しかし、その考えは杞憂に終わる。
門から武装した集団が出現し、魔獣に立ち向かい獣を切り捨ててゆく。だが誰に言われるまでもなく魔獣が優勢なのはあきらかだ。
人より強大で凶暴な魔獣が数え切れないほど襲いかかって来る中、1人また1人と力尽き、魔獣により引き裂かれ捕食され戦うものが減っていく。
―支援はまだなのか!―
リーダー格の男がそう叫んだ時、壁の上より次々と神秘エネルギーの力により引き起こされる超常現象、魔法を使った攻撃が飛んでくる。
魔法攻撃により一気に数を減らした魔獣達は劣勢となり、徐々に減っていく。
あらかた魔獣を掃討し終えたのか、戦っていた者たちは負傷者を運ぶ。
コニー・ヘルシアはそんな戦っている彼らを見ながら助かったと思いつつ、火の手と魔獣から逃れるため周囲の人々と同じように門の中へと向かって走る。
彼女はつい先日、オバマの街にようやくたどり着いたばかりだ。コニーはオバマの街から少し離れた小さな町の役人の娘として生まれ、多くを望まず平穏に暮らしていた。しかしその平穏は崩れ去り、生まれ育った町を捨て一番近いオバマの街へ家族や友人達とともに向かってきた。だが彼女の家族や友人は今周囲におらず、一人で周囲の者達と同じように生き残るための一筋の望みである門にひたすら逃げていた。
しかしその希望はコニーが門に辿り着く直前で打ち壊される。突如、門とその周辺が吹き飛んだのだ。
誰も城壁ごと門が破壊されると思っておらず、希望が恐怖と絶望に変わるのにそう時間はかからなかった。足が吹き飛び這うことしか出来なくなったものや、動かなくなった親を揺する子供、さらに奥へ逃げる者など多くの者の姿がコニーの目に映った。
その者達ですら誰が門を破壊したのを認識した時、今ここで自分は死ぬ。生きることはできないと本能で悟った。
――悪魔だ!悪魔がいるぞ!――どこからかそんな声が上がる。
ああ、私死ぬんだ。―――コニーはそう考えた時から体が動かなくなり、その場にへたりこんだ。
そしてそんな彼女の瞳には悪魔が映っていた。
こいつら悪魔こそコニーの故郷を滅ぼし、家族や友人を次々と殺し、人々に恐怖と絶望をあたえ続ける存在だ。悪魔は一体でもとても強力で、その姿を目の当たりにするだけで絶望を感じ圧倒的なパワーと凶暴性を兼ね備えていることが本能で感じられる。人類の上位種であり、下位の人間は蹂躙される生き物なのだと。
果敢にも勇敢な者達が立ち向かい、悪魔に斬りかかっていった。だが、悪魔の一振で彼らは紙切れのように飛び、斬られ吹き飛ばされた。次に目をつけられたものは頭を掴まれ、まるでトマトのように握り潰された。別の悪魔は恐怖で立てなくなった若い女を掴み口を開け、ボリボリと骨を砕く音をたてながら口の中へ放り込む。立ち向かった男はひと太刀浴びせることも出来ず、人だったのかも分からなくなるほどの勢いで叩きつけられた。
コニーはその光景をひたすら眺めていた。いや、目に映っていたと言うのが正しいかも知れない。自分の番が来るのが分かっていながら動けず、その場に留まり続けていたのだから。彼女は生きることを諦めていた。―――
そんな彼女に一体の悪魔が目をつけるのにさほど時間はかからなかった。悪魔が腕を振り上げ、コニーへ振り下ろそうとするのを彼女はひどく冷静に眺め自らの死を察し、達観していた。
―あきらめないで生きて!―
突如、この世の地獄としか言いようがない惨状の中に、凛とした力強い意志があり透きとおって可憐な、天使だと錯覚する声が彼女に聞こえた……
コニーが声を認識した時、彼女に迫っていた悪魔は体の半分を失い、倒れようとしていた。
目の前には虹色に輝き、強い神秘エネルギーにあふれ天使の翼と錯覚するほどまばゆい光を放つ、翼をつけた小さな天使がコニーを守るように立っていた。
――ここにいる人達をこれ以上死なせない!だからみんな、安心して――
周囲の人達に聞かせるように言い放つと、その天使は残りの悪魔に向かっていった。
コニーより小さい者が恐ろしい悪魔に向かっていくなんて自殺行為だ。多数の者がそう考えたが、不思議と制止させる者はおらず、みな彼女をみつめ小さな体で悪魔を次々と打ち倒していく姿を眺めているだけだった。
天使が悪魔を数体倒した時、「助かった……た、助かったんだあああ」と一人の男が叫んだ。その叫びにより周囲の人間は、悪魔が倒された現実を徐々に理解したのか、歓声を上げ安堵の声を漏らし始めた。
それと同時に、壊れた門の内側から飛翔する集団が現れ、残りの悪魔や魔獣を駆逐し始めた。
その中のリーダー格であろう大柄でスキンヘッドの男が天使に向かって「相変わらず、早すぎます。追いつく身にも―」
「追いついてくれるって信じてるから。それにきてくれた」
男の声を遮り、天使は明るい笑顔でそう言った。天使の行動に不満げだった男は天使から信頼していることをハッキリ伝えられると、平静を装いながらもその顔からは喜びが漏れていた。
そして、天使はコニーを見て
「あなた立てる?危ないところだったね」と明るく、コニーに手を差し伸べた。コニーがその手をつかみ立ち上がった時
「まだ他にも行かなくちゃ、あなたが無事でよかった」
天使がコニーに言葉をかけると、「ちょっとまて!まだいくのか」と声を出すスキンヘッドの男を無視し、天使は地面から離れ新たな希望となるべく飛び立っていった。
天使が飛び立った後、天使の方から光が差し込み夜の終わりを告げるとともに、天使の勝利を祝福し生きる希望として天使を送りだしているかのようだった。コニーはその光景に目を奪われ、飛び立った後をひたすら眺めていた……
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