第一話:入学式其の1
カーテンの隙間から差し込む光が俺の顔に当たり朝だと言うことを伝える、未だに重い瞼をこすりながら身体を起こす、部屋は暗く六畳ほどのスペースがあるはずだが引っ越したばかりで片付いていない段ボール箱の山のせいでただでさえ狭い部屋がさらに狭く感じる、俺はさっさと朝食を食べて制服に着替え、家を後にすることにした……
「……いってきます」
これから俺の面倒ながらも面白い、新しい学校生活が始まる……
拝啓、お父様お母様、麗らかな春暖かい季節となって来ました、そちらはどうお過ごしですか?私は元気ですが非常に面倒なことに登校初日、入学式から厄介事を抱えてしまいました、なんでも今目の前に居るこの少女は本校の存在すら知らない世界からはじめて入学してきた生徒だそうで、この学校の事を何一つ知らないらしいです、何故かは解りませんが非常に興奮した様子で何か呪文のようにペラペラとしゃべっています、私はどうすればいいでしょうか……
「……はぁ、解ったから落ち着け、な?」
そう言って俺は興奮冷めやらぬ様子の彼女をなんとか落ち着けようと言葉を発した
「え、あ、すいませんつい興奮してしまって」
うん、知ってる
「先ずは自己紹介からだな、俺の名前は天草 葉、よろしくな」
そう俺が自己紹介をすると目の前の彼女、ゆるくカールのかかった長い黒髪に黒い瞳、パッと見た感じクールな印象を受けるがそんな第一印象とは裏腹にものすごく熱く何かを語っていたところをみると中々のヲタクなのではないかと思える
「天草さんですね、あ、私の名前は広瀬 凜です、よろしくお願いします!」
俺の自己紹介に答えるように自己紹介をした彼女の印象は見た目や興奮気味に話していた先ほどの姿に反して明るいものだった、思ったよりもコミュ力が高いのかもしれない……
「ところでこの門はどうやったら開くんですか?」
……この娘は、おそらく“普通の人間“なのだろう、この大きさの門を自力で開けることはできないのかもしれない……因みに今俺たちは校門前におり、校門には分りやすく説明すると橋になるタイプのデカイ城門みたいな印象を受ける両開きのデカイ門だ、そんな門を人間の筋力で開けるのは無茶であるため手本を見せてみた
「こうやって開けるんだよ」
そう言いながら俺は学校から支給された指輪を嵌めてある方の手を門にかざした
「そんなんで開くんですか?」
訝しむ彼女だったが門が開き始めたことで態度が一転、とても輝いた瞳で開いていく門を見ていた
「すごいです!」
この程度で一喜一憂してるとは、彼女の世界ではそこまで魔術やそれに類する技術が普及していないのだろうか……
「とりあえず入るぞ、早くしないと遅刻になる」
そう言って俺が急かすと
「あ、ホントだ急がないと」
と言って彼女もやっと現在時刻が遅刻ギリギリだと言うことに気づいた様子だった
「それじゃ走るk」
言い終わる前にかなりの爆音が校舎から聞こえた
「うぇええ!?」
「……!!」
広瀬と俺はその爆音にかなり驚いていたがその直後校内放送が流れた
『たった今校内にテロリスト集団が入り込みました、非常に危険ですので在校生は直ちにテロリストの殲滅に取りかかってください』
……ん?気のせいか?今校内放送で変なこと言ってなかったか?
『繰り返します、在校生は直ちにテロリストの殲滅に取りかかってください』
……どうやら気のせいではなかったようだ
「いやおかしくない!?、普通生徒は避難させません!?」
かなり常識を逸脱した校内放送に思わずツッコんでしまった、
「おぉ?これはいわゆる学校襲撃イベントと言う奴では!?」
などと隣に居た広瀬は変な事を言いながら校舎の方に走っていった、思ってたりもずっと早くて驚いた
「おい!ちょっとまてよ!」
そう言いながら俺も広瀬の後を追いかけた