召喚者-2
私がお母さん!と喜びの思いを伝えようとしたけど、恐ろしい程の怒りの思いが先に伝わってきた。
あ、私に対してじゃなくて私の上に乗っかってる奴に向けてね。
というか、お母さんを取り巻く様に黒いオーラの様なものが見えている。
怒りのオーラって見えるんだ・・・お母さんの言う事には逆らわないでおこう。
「ちっ、こいつの仲間か」ボソッとルークが呟いた。
ルークがお母さんに気を取られた一瞬の隙に、お兄ちゃんがルークを手で捕まえる事に成功した。
私を上から押さえつけていた力が無くなったと、喜んだのも束の間、今度は急に胸が圧迫されたのだ。
「ふっ、俺を殺すとこいつも死ぬぞ」
なんと、ルークがとんでもない事を言ったのだ。
しかし、お兄ちゃんは言葉がわからないのか無視してるのか、更に手に力を入れて雷をバチバチし始めた。
私は胸の圧迫に苦しみながらも訴えた。
『お兄ちゃん待って、この人を殺すと私も死ぬって言ってるの』
私の苦しみに気付いたお兄ちゃんは手の力を緩めた。
私も胸の圧迫が無くなった。
『どうやら本当の様だね、おいでクレイ』
お母さんの伸ばした手につかまり、お母さんに抱きしめられた。
お母さんから安堵と私への愛情が伝わってきた。
私のお母さんに抱きしめられると急に安心してお母さんへの愛情が溢れてきた。
爬虫類が嫌いって思っててごめんなさい。
私は正真正銘お母さんの子供なんだ。
『さあ、もう大丈夫よ、帰りましょう』
『あのルークって人間は?』
『大丈夫よ、任せておきなさい』
そう言うとお母さんは、空に飛び立ちドラゴンの巣である家に私を連れ帰ってくれた。
ルークは見つけた赤い小さなドラゴンが巨大なドラゴンに連れていかれるのを見送った。
俺の言葉がわかる、あいつがいないと結構まずい状況かもしれない。
力はかけられて無いが逃げ出せないようにガッチリ掴まれていた。ふと、黄色と黄金色の混ざったドラゴンと目が合うと意識を失った。
遡る事、1か月前、クレイが生まれる直前のことである。
とある国の王城の一室で、ルークとルークの兄ジークは召喚魔法を行った。
その召喚魔法はジークが古い文献から見つけたものを自分なりに手を加えた非常に高度なものだった。
成功する確率は高くないので、手伝うよう兄から頼まれたのだった。
ルークとジークは双子の兄弟だった。が、顔も性格も似ておらず、ルークは剣士にジークは魔法使いになった。
しかし、ルークもジークと同じ波長の魔力を持っているため、剣士でありながら召喚魔法を手伝うことになったのだ。
ジークが召喚しようとしていたものは国の救世主たる者だった。
ルーク達の国は大国に挟まれた小さな国であった。常々大国の戦いに巻き込まれて、国力は低下する一方であった。
現在は隣国の属国という位置付けにされており、直接国土を狙われることはないが、隣国に対して高い納税と徴兵の義務があり国の働き手である若者の数は減り続けていた。
このまま隣国の属国を続ければ数年のうちに我が国はたちゆかなくなるというのが、大臣達の意見だった。
そして、国の王子も同じ考えだった。
そもそも、隣国の属国になっても、国が倒れる程の税や徴兵は行われないが、国の王がどうしようもない人物で隣国の王から酷く怒りをかった事がそもそもの原因であった。
その王がやっと病気になり、表舞台から退く事になったので王子と大臣達が国を立て直す策を考える事になったのだ。
しかし、若者の数も少なく、高い税を払うために自分たちの食料もままならない状態の国を立ち直らせるすべは見つからなかった。
そこで、ジークが王城に呼び出され、何か良い案はないか尋ねられたのだった。
ジークは古代の文献から特別な召喚術を知り、国を救うべくリスクは覚悟の上で召喚を行った。
ルークが気付いた時にはジークはすでに無くなっており、召喚された国の救世主もどこにもいなかったのだ。
絶望に打ちひしがれていると王子がジークの遺言を伝えた。
召喚は成功した事
救世主は魂で召喚されたため、どこかで赤ん坊として生まれた事
召喚者であるルークと召喚対象の救世主は国を救うという願いが叶えられるまで魂が繋がっている事
そのため、召喚者であるルークならどこにいても救世主の存在を感じれる事
召喚者に主導権が握れるように、召喚者であるルークが傷つくと召喚対象の救世主も同じように傷つく事
そして、ルークは王子の命によりどこかで誕生した救世主を探しに旅に出た。
国の端、世界で一番高く険しい山脈の奥の深く、国の救世主となるべく召喚されたドラゴンとルークは出会ったのだ。
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